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よろず屋K  作者: やしき丸
メインストーリー

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3/16

第三話

怪異系の依頼は報酬が良い。

幽霊はそのほとんどがただ怖いだけだが、怪異は違う。


放っておけば被害が出てしまう。

そのため早急に退治するか封印しなければならない。


緊急性もあって危険。そのため報酬は最低でも10万円を超える。


俺に戦闘力はない。皆無だ。なので俺が怪異に対応する場合、俺に憑いてる子に頼るしかない。

封印はできない。うちの子に頼んでボコボコにしてもらうしかないのだ。


俺に憑いてる霊達のテンションが上がってすりすりと俺の体を撫でまわしている。

久しぶりに力を解放できるのが楽しみなようだ。


「報酬もらったらいいもん食おうな」


霊達はうんうんと頷いている。普段はもやしだからな……。



送られて来たメールをチェックする。


場所はうちから結構近い。電車で15分に歩いて10分と言ったところか。

学校なので日中は人が多い。


佐伯さんに怪異退治は今夜行う事を返信し、メールに書いてあった桜園高校に電話をかけた。先に話を通しておかないと、警備の関係で問題になる可能性が高い。ついでに少し情報をもらおう。


「はい。校長の田岡です」


「佐伯さんからの紹介で今夜怪異を退治しに行くことになっている『よろず屋K』の逆木葉と申します」


「あ、ああ。佐伯さんの……。それで、どうされましたか?」


「退治は今夜行う予定なんですが、先に校長先生にお話しを伺いたいと思いまして。それと入校証もいただかないと」


「警備にはもう話を通してあります。入校証については、後ほど用意しておきます」


前回他の人が失敗した時の経験で、先に動いてくれていたらしい。話が早くて助かる。


「怪異の特徴を教えてもらえますか?」


「ええ。……夜になると、音楽室からピアノの音が聞こえてくると言う噂が広まっていまして。よくある学校の怪談だと放っておいたんですが、ある日夜間警備の方が負傷してしまいまして……。その方が言うには、女性のような化け物に襲われた、と……」


「女性の、ような?」


「ええ。なんでも、女性に見えたが人間とは思えない様子だったらしいのですが……」


「なるほど……わかりました。念のため、生徒が下校した後は音楽室に誰も近付かないようにしてください」


「生徒は大丈夫なんでしょうか?」


「お話しを聞いた限り、夜間に活動的になるタイプのようです。生徒が下校するような時間までなら大丈夫でしょう」


「……わかりました。警備にはそのように伝えておきます」


「それでは後ほど伺います。オカルト関連だと思われるのはまずいでしょうから、空調業者として伺います」


「配慮していただきありがとうございます。よろしくお願いします」


電話を切ると、俺に憑いてる霊達がざわついている。


「どう?聞いた感じ、やれそう?」


霊達はうんうんと頷いている。任せろと言いたいらしい。頼もしい限りだ。



夕方になり、俺は桜園高校を訪れた。

まだ部活で残っている生徒もいるが、もう少ししたら皆下校するだろう。


受付で入校証を受け取り、現場である音楽室を下見する。


五階にある音楽室を見てみたが、ぱっと見はどこにでもありそうな普通の音楽室だ。

幽霊と違って、怪異はいればいつでも見える物でもない。とりあえず今は下見だけにする。


準備室で夜まで待機することにして、普段は音楽担当の先生が使っているであろう椅子に座って待つ。


「ここからしばらく暇だから、少しハグしてあげよう」


途端に霊達が動き出す。順番にハグしてあげたりしながら、夜を待つ。



やがて夜になり、校内もすっかり静かになった。

いつ怪異が動き出してもいいように、俺は立ち上がって待機する。


そうして更に少しの時間が経った、その時。



――ポーン。



ピアノの音が鳴った。……来た。


一旦様子を見ようとそのまま待機していると、続けてピアノの音が鳴る。


「さて、それじゃ行くか。皆、頼むぞ?」


意を決して音楽室に続くドアを開けて音楽室に入る。


そこには、ピアノを弾く長い髪の女性の姿があった。あれが今回の怪異だ。

近寄りすぎない程度にピアノに近付くと、女性の動きが止まった。



そして、()()()()()()()()()()()



「防いで!」



次の瞬間、音楽室の空気が震えた。

一瞬で間合いを詰めて来た怪異は、俺に向かって腕を伸ばしたまま止まっていた。


長く伸びた爪。

防いでもらっていなければ、俺は二つに引き裂かれていたかも知れない。


「サンキュー、ヴィヴィ」


ヴィヴィと言うのは、俺に憑いてる霊の一人だ。

俺を引き裂こうとした腕をヴィヴィに掴まれた怪異は、振りほどこうと暴れている。


「――ッ!――ッ!」


声にならない叫びをあげながら、怪異はもう片方の手で俺を攻撃してきた。


「アイズ!」


残念ながら、そっちにはアイズがいる。

両腕を掴まれ、怪異の攻撃は止まった。


更に俺にまとわりついていた霊達が怪異にまとわりついて、身動きを完全に封じる。

怪異の目は血走り、強い怒りに顔を歪めている。


俺に憑いてる霊達は、俺に執着している。俺に害を加える存在を、決して許さない。


「エルー、最後任せていいか?」


エルーが頷き、俺から離れて怪異に掴みかかる。


「――ッ!――ッ!」


怪異は苦しそうにもがくが、拘束されて身動きが取れない。


エルーは怪異を抱きしめるようにして力を込めていく。



やがて、ぐしゃっと言う音と共に、怪異は潰れて消えた。

特殊な能力を持ってるタイプじゃなかったから、簡単に終わったな。


「お疲れ。皆、ありがとね」


俺の元に戻って来た霊達が、自分を褒めろと絡みついてくる。


「帰ったらいっぱいハグしてやるからな」


そう言って皆を一旦落ち着かせる。



佐伯さんに完了した事をチャットアプリで伝えて学校を出る。


「相変わらず君ら強いねえ」


少し育てすぎてしまったかも知れない。成仏するまで俺の元から離したらだめだな。


この子達を野に放ったら、大変な事になってしまう。

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