エピソード05:不幸の手紙
ある日、郵便受けに手紙が入っていた。
ただの手紙ではない。これは『不幸の手紙』だ。
切手の貼られていない手紙には『このQRコードを読み取らなければ不幸になります』と書かれている。
現代ではこう言うのはメールやSMSに移行したと思っていたが、まだこういうのもあるんだなとちょっと感心した。
しかもこれは単なるイタズラではない。
この手紙には、微弱だがしっかりと『呪い』が込められている。
手紙を持った瞬間から俺にまとわりついて来た呪いは、しかしうちの子達によってすぐに剥がされて捨てられた。
念のため手紙を焼却し、それでこの話は終わりだと思っていた。……のだが。
「蛍さん。最近、変な手紙がこなかった?」
佐伯さんが電話でこんな事を聞いてきた。
変な手紙と言えばあの不幸の手紙しか思い当たらない。
「来ましたよ。不幸の手紙が」
「やっぱり……。最近、私が仕事を回してるオカルトの関係者の所に不幸の手紙が送られてきてるらしいのよ」
偶然じゃなかったんだな……。切手を貼ってなかった時点で疑うべきだったか。
「私に恨みがある人が郵便受けに入れて回ってるみたいで……心当たりが多すぎて困ってるのよね……」
インチキ霊能力者の佐伯さんはたくさんの依頼を受けて、それを色んな人に回している。インチキな時点で何かしら恨みは買っていそうなもんだけど……。
「ねえ蛍さん。犯人捜し手伝ってくれない?報酬出すから。お願いっ」
うーん……。
自業自得な気もするけど佐伯さんには世話になってるし、どうするか……。
「ちょっと待ってくださいね」
一旦スマホを離す。
「この前の不幸の手紙なんだけど、どこから来たかわかる?」
うちの子達は頷いた。俺を呪おうとした相手の事を根に持っていたんだろう。
「受けろ受けろ」と言わんばかりに俺の周りを蠢きながら俺の体を撫で回している。
「佐伯さん。うちの子達が出所わかるみたいなんで、ちょっと見てきます」
「ほんと!?頼りになるぅ!わかったらまた連絡してね。よろしく!」
電話を切り、俺は地図を持ってきて広げた。
「どこかわかる?指さしてみて」
聞いてみたが、うちの子達は周りをうろうろしているだけだ。もしかして……。
「もしかしてだけど……地図、読めない?」
皆が頷く。どうやらうちの子達は地図が読めないらしい。困ったぞ……。
「うーん……どうするか……」
悩んでいると、俺に憑いている子の内の一人である涼ちゃんが、ある方向を指をさした。
涼ちゃんは最初悪霊だったのだが、鎮めた後俺に憑いてきたので悪霊の霊を『りょう』と読んで『りょうちゃん』と名付けた。さすがに霊ちゃんではかわいそうだったので、涼しいと書いてりょうちゃんとしたのだ。
まともな名前を付けられて、当時涼ちゃんは大層喜んでいた。
閑話休題。
涼ちゃんが指さした方向に犯人がいるという事だろう。
「結構遠い?」
曖昧に首を回している「そこまででもない」か「割と近い」くらいの意味だろうか。
俺はタクシーを呼んで、涼ちゃんが指さしている方向に走ってもらった。
しばらくタクシーで移動していると、涼ちゃんが指している向きが変わった。
この先って事か。
「ここから近い?」
タクシーの運転手が聞き取れないくらいの小さい声で呟くと、涼ちゃんは頷いた。
タクシーを停めてもらってそこで降り、そこからは歩いて行くことにした。
涼ちゃんが指差す方向に歩いていくと、住宅街に入って行った。
しばらく住宅街を歩いていると、一軒の住宅が目に入った。
もう指をさされなくてもわかる。この家だ。
涼ちゃんにお礼を言って、佐伯さんに電話をかける。
「佐伯さん。犯人の家がわかりました、場所は――」
俺は佐伯さんに電柱に書かれていた住所を教えて、すぐに来てもらう事にした。
「お待たせ!」
佐伯さんは急いで来たらしく、化粧もほとんどしていない。服装は相変わらずだが。
「この家です。ここからでも呪いを感じるんで、間違いないかと」
「ここは……」
佐伯さんは心当たりがあるらしい。
佐伯さんは躊躇なくインターホンを鳴らす。
少し待っていると、中から中年の男性が出て来た。
……この男性も呪いにかかっていて顔色が悪い。なんでだ?
男性は俺達を中に招き入れてくれた。
「すみませんでした!」
と、いきなり土下座し始めた。
「三枝さん。どういう事か、説明してくれる?」
「はい……」
この男性は三枝さんと言うらしく、俺と同じく佐伯さんから依頼を受けて仕事をしている呪い師らしい。
そして、佐伯さんと報酬の事でトラブルになり、軽い呪いで嫌がらせをしてやろうと思い、不幸の手紙を関係者の家の郵便受けに投函して回ったんだそうだ。
だが、俺を含め何人かが呪いを破ってしまった。
呪いは破られると術者に返っていく。呪詛返しと言うやつだ。
結果、三枝さんが呪われてしまったと言う事らしい。
「自分では解呪できなくて……お願いします!なんとか解呪してもらえませんか?」
土下座しながら頼み込んでくる三枝さん。佐伯さん次第かな。
「二度とこう言う事を起こさないって約束して。それと、何か言いたいことがあるならちゃんと話して。報酬だって、相談してくれればちゃんと聞くんだから」
「はい……すいません」
「蛍さん。お願い」
「皆。頼むね」
うちの子達が三枝さんを取り囲み、呪いを引き剥がす。
もちろん痛みを与えながら。俺にも不幸の手紙出してたからな……。
三枝さんは激しい痛みにのたうち回っていたが、うちの子達はきちんと解呪してあげていた。
俺達が帰る時も、三枝さんは何度も頭を下げながら見送っていた。
人を呪わば穴二つ。呪いなんてかけるもんじゃないね。本当に。
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