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よろず屋K(旧版)  作者: やしき丸
オムニバスエピソード

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エピソード03:当然の結果

(けい)さん。依頼よ」


「今回はどんな依頼ですか?」


「依頼主は都内在住の夫婦。呪われたから解呪してほしいって」


「呪いですか」


「一つ一つの不幸は大した事じゃないらしいんだけど、いつか大きな災いになるかも知れないから、今の内にって」


「なるほど……」


「気のせいじゃないかって何度も聞いたんだけど、「絶対に呪いだ」って言って聞かないの。あんまりにも必死な感じだったから、一度蛍さんに見てもらおうと思って。気のせいだったら私に戻してくれていいから。ね?お願いっ」


「……わかりました。一度会って見てみます」


電話を切ってうちの子達の様子を見る。


「今回は呪いだってさ。気のせいかも知れないけど、呪いだったら皆に頼る事になるから、よろしくね」


うちの子達は任せろとばかりに頷いてくれた。



翌日、依頼主の夫婦と会うために待ち合わせ場所として指定された都内の喫茶店に向かう。その喫茶店は隠れ家的な店のようで、表通りから外れた立地のせいか、おしゃれな雰囲気の割りにお客さんはほとんどいない。


依頼主はもう来ているようで、店員に名前を告げると奥の席に案内された。


戸塚(とづか) 悠馬(ゆうま)です。こっちは妻の由井佳(ゆいか)です」


「由井佳です」


依頼主の戸塚夫妻は暗い表情で頭を下げた。


「よろず屋Kの逆木葉(さかきば) (けい)です。よろしくお願いします」


こちらも挨拶する。戸塚夫妻は神妙な顔で俺の挨拶を聞いていた。


「佐伯さんから伺いましたが、呪いにかかったとか」


俺は早速本題に入る。


「そうなんです。小さな不運が続いて……しばらくはついてないだけだと思って放っておいたんですけど、最近は寝ている時に首を絞められたり、妻が車にはねられそうになって……このままではいつか死ぬんじゃないかって……」


「なるほど……」


「佐伯さんは気のせいじゃないかって言ってましたけど、絶対に気のせいなんかじゃないです!お願いします!何とかしてください!」


旦那さんは思い詰めたように必死に頼み込んでくる。


「依頼をお受けします。原因ももうわかりました」


「え!?もうわかったんですか!?」


そう。俺の目にはもう今回の原因が()()()()()


「ですが……奥さん。ちょっと席を外していただいてもいいですか?」


「え?」


俺が席を外すよう頼むと、奥さんは驚いた。

だが、まずは旦那さんと話さないといけないし、俺が立ち入っていいものか微妙なラインの話になるので、今は奥さんに席を外してもらう。


釈然としない表情で奥さんが店を出て行ったのを確認して、話を再開する。


「戸塚さん。今回の呪いの元凶は、()()です。生霊は生きている人間の強い思念によって発生します。何か心当たりは?」


「え?生霊?!」


戸塚さんは動揺している。


生霊は幽霊とは違う。

幽霊とは言ってしまえば人間の延長の存在だが、生霊は生きている人間の強い思念によって生まれる『呪い』だ。


「奥さんに席を外してもらったのはこのためです。奥さんがいては話しづらい事もあるでしょう。ただ、私には話してもらわないと解決できません。どんな事でも、正直に明かしてください」


「……」


それから戸塚さんは自分が不倫をしていた事、先日その相手と別れた事を話してくれた。別れる時はほとんど捨てるような形になったらしい。

……なるほど。そりゃ恨まれるわけだ。


「お話はわかりました。解呪については任せていただいて大丈夫です。ですが、一度きちんとお相手と話し合った方がいいですね。もちろん奥さんとも」


「……はい」


「今回解呪しても、強い恨みが残っていればまた生霊が生まれて呪われる事になるでしょう。誠意を持って話して、許しを乞う事をお勧めします」


「……わかりました」


戸塚さんはがっくりと肩を落としている。

この先どういう話し合いになるかはわからないが、これ以上は夫婦と不倫相手の問題だ。


喫茶店で解呪を行うわけにはいかないので、近くのカラオケボックスに入った。


戸塚さんには席に座ってもらい、俺はその前に立つ。


「皆。この人に憑いてるもの、取り払ってあげて」


だが、うちの子達は動かない。


「……どうした?」


問いかけるが、うちの子達は戸塚さんを睨みつけている。……あー。そう言う事か。


うちの子達は、不倫をしたあげくに捨てたこの人を助けるのが嫌なんだろう。

気持ちはわかる。

だが、これは仕事だ。嫌でも解呪してあげないと。


「嫌なのはわかる。もっと苦しめって思うよな?でも、これは仕事だ。《《皆のやり方》》で解呪してあげてくれ」


うちの子達は仕方ないと言った風に俺から離れ、戸塚さんを取り囲む。


「戸塚さん。ちょっと痛いかも知れませんけど、我慢してくださいね」


「え?」


うちの子達は()()()痛くなるように生霊を剥がしていく。

うちの子達は痛みを与えるのが得意だ。いつも俺にやっているので慣れている。


「ッ!!痛ッ!!痛いツ!!いだだだだだ!!!」


戸塚さんは痛みに悶えている。俺の目には、うちの子達が集団で戸塚さんを小突きまくっているのが見える。

ちなみに生霊はとっくに剥がされて捨てられているので、解呪は終わっている。


しばらく戸塚さんを痛めつけてからうちの子達は俺の元に戻って来た。

……まだちょっと怒ってるな。


「戸塚さん。解呪は終わりました。さっきも言いましたけど、ちゃんと話し合ってくださいね」


「は、はい!誠意を持って謝罪します!」


すっかりびびってしまって半泣きになった戸塚さんは、何度も頭を下げながら帰って行った。



後日佐伯さんから、戸塚夫妻が離婚する事になったらしいと聞かされた。

うちの子達は当たり前だと頷いていた。

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