第47話:システムの更生! 閻魔、皿洗いの刑! 身体一つで囲む人情たこ焼き!
まいど! Q46の正解は「② アツアツの餡を待つ、パリパリに固まった『かた焼きそばの麺』」だったねぇ!
世界を消去しようとした「灰色の壁」も、アツアツの海鮮餡をぶっかけてやれば香ばしいご馳走に早変わり! 万物の不条理が見事に調和して、世界の基本法は『いただきますの理』へと上書きされたのさね。
さて、今回はついに全宇宙システムの下で、地球と魔界の管轄を任されてきた現場の支店長――胃痛の社畜神「閻魔」との直接対決だよ!
冷たい数字とノルマで人々を縛り付けてきた閻魔の野郎に、割烹着とお玉で突撃して、手作りのアツアツ「たこ焼き」で魂から更生させてやるかねぇ!
【♪ 人情屋台のラプソディ(祭りの太鼓と軽快な出汁の香りが漂う、下町人情コメディのテーマ) ♪】
「陰気な顔して、お腹を押さえてないで、ほら、手とピックを動かしな! 焦げ付かないうちに、クルッとこうやって、ひっくり返すんだよッ!」
「ひ、ひぃぃぃっ……! な、何故だ……何故システムの中枢にまで、出前の匂いが充満しているのだぁぁっ!?」
全宇宙のシステムとデータを統括・管理する絶対不可侵の最重要聖域――『天極核心神殿』。
まるで首里城を思わせる鮮やかな朱塗りの大柱と金箔の装飾が果てなく聳え立ち、先ほど上司である『天極統括神』の凄まじい怒声によってピキピキと派手にヒビの入ったクリスタル製コンソールが妖光を放っている。
その豪華絢爛たる神殿の最奥、激痛の走る胃袋を両手で抱え、冷や汗を滝のように流して床にへたり込んでいた白銀スーツの神――閻魔は、己の眼前に突如として現れた「あり得ざる光景」に目を剥いた。
ドスンッ! と重厚な音を立てて鎮座したのは、ミノとペンジが突貫で組み上げた持ち運び用の特大鉄板焼きコンロ。
そこに仁王立ちしていたのは、背中に太陽のような黄金の後光を燦々と輝かせ、ピシッと結ばれた純白の割烹着を身に纏う第4形態【慈愛の始祖】だった。
「はい、お待たせ! 地球と魔界の兼任ワンオペ支店長さんかい? 胃に穴が開くほどカリカリ焦ってないで、まずはこれに着替えなさいな!」
「な、なに……ッ!?」
バサッ! とマリアンが投げつけたのは、白地に大きな赤い花柄が躍る『下町食堂の特製エプロン』だった。
戸惑う閻魔の首へ強引に紐をひっかけ、背中で固く結びつけると、マリアンはその両手に二本の金属製ピック(千枚通し)を無理やり握らせた。
「これより、保身のための自暴自棄と、ろくに飯も食わずにウジウジ胃を痛めてた罪により――『マリアン食堂特製・皿洗いの刑』を執行するよッ! まずは自分で食う分のたこ焼きの手伝いからさね!」
「な、なんだとぉっ、神である私に……花柄エプロンを着せて屋台の手伝いだとぉぉっ!?」
天極核心神殿の空間に、サトルやシュン、アレン、セリアたちが転移魔法陣を通じて姿を現す。
ひび割れたAn-Padを手に、サトルが呆れ顔で呟いた。
「……相変わらず、上がうるさいみたいっすね、閻魔さん。僕も前世で港区のベンチャー社長をやってた頃、クォーター決算のたびに株主から詰められて胃に穴が開きそうになって、胃薬を山ほど飲んでいたから……その気持ち、ちょっとだけ分かっちゃうっすよ」
「国税局員としての私の目から見ても、あの上司の命令は完全に労働基準法違反、および責任転嫁のパワハラですね」
修道服姿の戦略参謀セリアが、冷たい瞳でクリスタル板を操作しながら閻魔を見下ろす。
「閻魔様。あなたがゼニス・コアの監査から逃れるために自暴自棄で押したフォーマットのボタン……私が裏帳簿を逆ハックして、上司へのレポートごと差し押さえておきましたから」
「……お前たち、元・システム側の人間が……何故私を庇うような真似を……」
白銀のスーツの上から花柄エプロンを着せられた閻魔が、呆然とつぶやく。
元・エリート勇者であり特級内部監査官となったアレンが、自嘲気味に笑って肩をすくめた。
「『社畜の連帯感』ってやつですよ。数字と評価だけに縛られて心を殺していた頃の自分を、あんたに見ているみたいでね。……まあ、大人しく大女将のまかないを頬張って、それから引退届の書き方でも教わるといいですよ」
ジュワァァァァァァッ……!
特大コンロの丸い穴に、昆布と鰹の極上出汁が効いた生地が流し込まれ、香ばしい湯気が神殿全体へと爆発的に広がった。
神崎が下処理したプリプリのタコ、鮮やかな紅生姜、天かす、刻みネギが豪快に散らされていく。
「ほら、ボサッとしてんじゃないよ、閻魔! 穴のフチから生地が固まってきたろ! ピックでフチを切って、クルッと半回転させるんだよ!」
「く、狂っている……! 私は地球と魔界のポイントを任された管理者の……ひっ、焦げる! 焦げてしまうっ!」
激しい胃痛も忘れ、半狂乱でピックを動かす閻魔。
最初はぎこちなかったものの、元・完璧主義の管理者らしく、クルッ、クルッと生地を丸めていくうちに、鉄板の上には黄金色に輝く綺麗な丸いたこ焼きがズラリと並んでいった。
「ふぅ……ふぅ……。丸くなった……。だが、こんなもので私の気が治まると思うなよ!システムは絶対だ! 成果を出せぬ弱者は捨てられ、効率の良い勝ち組だけが生き残る!価値が高くなれば取り巻きが集まり、下落すれば安く買い叩く!これが地球でもこの世界でも不変の法則なのだ!」
ハッとなって強がる閻魔に対し、マリアンは巨大なお玉をバンッ!と首里城風の朱塗り床に突き立て、雷のような大声を張り上げた。
「黙ってお聞きな、この分からず屋のポンコツ神様がッ!!」
マリアンの威厳に満ちた声が、天極核心神殿の因果律を揺るがす。
「あんたたちが何万年もやってきた冷酷なシステムはねぇ――地球の強欲な金持ちどもがやってる浅ましいマネーゲームと、全ッ然変わらないんだよ!」
「な、なんだと……マネーゲームだと……!?」
「そうさ! 価値が高くなれば群がり、弱みを見せたら手のひらを返して見捨て、安く買い叩く……!自分が傷つかない安全な場所から高みの見物決め込んで、『自分自分』、自分だけが得をすればいいってか!?あんたがやってたポイント回収も、それと同じただの『弱い物いじめ』なんだよッ!」
閻魔が息を呑み、言葉を失う。
マリアンは焼き上がったばかりのアツアツのたこ焼きを舟皿に盛り、特製ソースと青のり、削り節をたっぷりかけて閻魔の目の前に突きつけた。
「いいかい!地球でもどこでもねぇ、溜め込んだ数字や株や金なんてものは、死ぬ時には何一つ持っていけないんだよ!50歳になったら、誰もが『身体一つ』で次の世界へ旅立つんだからね!天国――本当の幸せに辿り着きたいんならねぇ、そんな溜め込んだ数字もプライドも全部脱ぎ捨てて、身体一つになりなさい!」
「からだ……一つ……?」
「そうさ!難しい数字を全部脱ぎ捨てて、素っ裸の身体一つになってさぁ、同じ鉄板を囲んで、アツアツのたこ焼きをハフハフ言いながら『美味いね』って笑い合えない奴がねぇ……世界で一番貧しくて、惨めなんだよッ!!」
その説教は、天極核心神殿の通信回路を通じて、神殿の閻魔モニターから現世(地球)の新宿アルタ前、渋谷スクランブル交差点、そして日本中の街頭ビジョンへと生中継されていた。 画面越しにその言葉を聞いた地球の人々――日々の株価や残業、格差社会で「自分自分」と争っていた者たちが、ハッとして立ち尽くした。
ウォール街や東京の証券会社で、パソコン画面のチャートを血走った目で見つめ、他人の損失を冷酷に買い叩いていた株のトレーダーの手が、ピタリと止まる。
会議室で社員を怒鳴り散らし、利益率とコストカットだけを求めて下請けを叩き潰していた強欲な会社社長が、握りしめた高級万年筆をポロリと床に落とした。
さらには、誰の役にも立たない数字合わせの書類作りに追われ、あるいは言葉巧みに顧客を騙して実績を稼ぐ『ブルシット・ジョブ』に心を削り、他人を蹴落として金を稼ぐことに必死だった無数の人々が、街頭ビジョンのマリアンの姿を仰ぎ見つめたまま、金縛りに遭ったように動きを止めた。
死ぬ時に持っていける金などない。50歳になれば全員が身一つで転生するのだ。地球の人々の心から、冷たい欲望の毒が綺麗に消え去っていく。
一方、天極核心神殿の神殿内。
マリアンの言葉が、何万年も冷たい数値と過酷なノルマに追われ、心を殺してシステムの一部となっていた閻魔の胸へ、激しい衝撃となって突き刺さっていた。
「身……一つ……。私は……数字を守るために……上司に怒られないために胃を痛めて……一体、何をしていたのだ……」
「能書きはいいから、冷めないうちに口に放り込みな!でも熱っつ熱だから火傷には気をつけるんだよ」
閻魔は震える手でつまようじを取り、香ばしい湯気を立てる焼き立てのたこ焼きを、恐る恐る口の中へと運んだ。
ハフッ、ハフハフッ……! ジュワァァァ……ッ!
「あつっ、熱っ……! か、外はカリッと香ばしくて、中はトロトロで……!」
噛み締めた瞬間、濃厚なソースの甘みと、出汁の効いた生地の旨味が爆発する。大きめに切られたプリプリのタコの食感が、疲れ切った閻魔の脳髄にダイレクトに歓喜の信号を送り込んだ。
「昆布と鰹の出汁が……じ、胃に、染み渡る……ッ!?」
「美味い……本当に美味いよ、大女将……! 私は……ずっと、誰かとこうやって、温かいものを『美味い』って言いながら食べたかったんだぁぁぁッ!」
白銀のスーツの上に花柄エプロンを着けた社畜神が、大粒の涙をポロポロとこぼしながら、たこ焼きをハフハフと何個も何個も幸せそうに頬張る。
マリアンは巨大なお玉を肩に担ぎ直し、ニカッと温かい笑顔を向けた。
「ヒヒッ! もうお腹いっぱいかい、胃の痛みも取れただろ?これにて更生完了さね! 閻魔、残ったお皿とコンロをピカピカに洗いな!」
「は、はいっ! 喜んで洗わせていただきます、大女将っ!」
満面の笑顔で泡まみれになって皿洗いに取り掛かる閻魔を見ながら、マリアンは満足げに頷いた。
「さあ! 明日は地球の全人類を巻き込んで、この宇宙の理を全部綺麗にお掃除して、最高のフィナーレを迎えるよッ!」
最後まで読んでくれてありがとねぇ!
数字とノルマでガチガチだった閻魔の野郎も、割烹着を着せられて『身体一つ』のたこ焼きを食ったら、ボロ泣きして改心しちまったさね!
溜め込んだ金や数字なんて、あの世には持っていけないんだよ。全部脱ぎ捨てて、身体一つで美味い飯を囲むことこそが、人間の一番の贅沢であり、本当の幸せ(天国)なんだからね!
さて、次回はいよいよ最終話(第48話)『いただきますの理(終わらない宴回)』!
50歳になったら誰もがワクワクして希望を抱く「幸せな転生」と、地球から戦争や格差が消えていく感動のグランドフィナーレだよ!
システム(更生した閻魔)からの出題【Q47:人情たこ焼きの教え】
今回、マリアンが冷酷なマネーゲームやシステムに縛られていた閻魔に教えた「本当に幸せになる(天国へ行く)ための心得」とは何だったかな?
① もっと株を買って、億万長者を目指すこと
② 数字やプライドを全部捨てて「身体一つ」になり、温かい飯を笑い合って食べること
③ 高級なレストランで一人で静かに食事をすること
「ヒヒッ、ヒントはねぇ、身一つで囲む食卓こそが最高ってことさね! さあ、大将もみんなも、最後の最後まで応援の評価☆☆☆☆☆とブックマークのバフをよろしく頼むよ! 最終話の特盛宴会で待ってるからねぇ!」




