表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/106

心のコア

「魔法陣展開。殲滅。出力最大…!」


ドォンッ!!!


アヴィニールが放った魔法はキャリーへと直撃した。そして爆煙がゆっくりと晴れていく。舞い上がった砂埃の向こうに、白い影が揺れていた。


そこに立っていたのは大した怪我もしていないキャリーだった。


「ゲボゲボ…煙たいなぁ…あんまりいい気持ちじゃないや〜」


大きく広がった純白の羽が盾になりキャリーの身体を守っていたのだ。何枚もの羽が焼け焦げ、宙を舞いながらはらはらと地面に落ちていく。

静寂の中に、羽が崩れ落ちる音だけが響いた。キャリーはゆっくりと羽を畳み、肩をすくめる。


「さすがに全部は守りきれなかったか〜僕の綺麗な羽が焦げちゃったよ。」


足元には折れた羽が数枚転がっている。けれどその身体に致命傷はない。

かすり傷程度。呼吸も乱れていない。


「僕の羽が攻撃を全部吸収したからよかったけど…他の場所に打ってたら、この場所ごと消し飛んでたね〜」


軽く笑いながら、指で焦げた羽をつまむ。


「全くもう〜ずいぶん手荒なことしてくれるじゃないか〜仲間だったのにひどいねー」


視線が、まっすぐアヴィニールへ向いた。


「あなたを、仲間だなんて…思ったことないわ……」

「ひど〜悲しいよー僕は君たちのこと大切に思ってたのになぁ〜」


背中から新たな羽が、ざわりと広がる。光を帯びて再生していくように、ゆっくりと形を取り戻していった。


「あれ?」


キャリーは首を傾げ、アヴィニールの息の荒さを見た。


「魔力がほとんど残ってないね?さっきの大技で全部使い切っちゃったのか。そういえば言ってたね。力を全て使う代わりに強大な力を持つって。そのせいか!」


アヴィニールは歯を食いしばる。


「はぁ……はぁ……」


キャリーは優しく微笑んだ。


「君は魔力がないと何もできないよねー?力がない正義って、ただの願望なんだよ?」


ズンッ。

次の瞬間、キャリーの腕がアヴィニールの胸を貫いた。


「……っ??…?」


光が砕けるように散り、アヴィニールの胸にヒビが入っていく。そして中から何やら光るものを取り出した。


「希望って、壊れるとこんな音がするんだー」


アヴィニールの身体が力なく崩れ落ちた。


「…アヴィ?」


返事はない。その瞬間。アンフェニの指が震えた。


「……ふざけんなよ。」


痛む傷口を押さえ、アンフェニは無理やり立ち上がった。


「アヴィに何したんだよ…俺の妹に何したかって聞いてんだよ!!」


涙と血が混ざって頬を伝っていた。


「その光のやつ!アヴィのコアだろ!前に言ってた!アヴィニールはそれが心臓なんだって!返せよ!!俺の大切な妹を!返せよ!!」


空気が震えるほどの怒号。けれどキャリーは楽しそうに笑うだけ。


「うわ〜怖い怖い。家族愛って綺麗だね〜」

「はぁぁぁ……!!!」


拳を振りかぶり、一直線に突っ込む。怒りそのまま叩き込もうとしたその瞬間。


ドンッ!!

羽が鞭のようにしなり、アンフェニの身体を横から打ち抜いた。


「がっ……!!」


衝撃で宙に浮き、壁へ叩きつけられる。


ガシャァン!!


床が崩れ、アンフェニは床に転がった。


「ぐ……っ、は……」


息が詰まり、身体が言うことをきかない。そこへキャリーはゆっくり歩み寄った。


「君、もう戦える状態じゃないよ?それなのにここまでして偉いね〜」


足元に影が落ちる。


「妹想いで優しいお兄ちゃん。けどね、」


しゃがみ込んで、耳元で囁く。


「弱い優しさは、誰も守れない。」

「ア……ヴィ……」


指を伸ばすが、力が入らず床を掴むだけ。


「さてと〜あとは君だけだ。フレディ。」


キャリーの視線がゆっくりフレディの方へ向く。

フラフラだが何とか立ち上がることができた。しかし、それと同時に瓦礫の向こうから重たい足音が聞こえてきた。そこに立っていたのはヒュラド。顔や体は返り血でぐっしょりと濡れていた。


「ああ〜なるほど…死んだんだ。所詮、人間なんてそんなもんだよねー最初から期待なんてしてなかったし。」


瓦礫を踏みしめ、ヒュラドは彼の隣に立った。


「人間が2人いたところで変わらないよ。こちらには、もっとたくさん仲間がいるんだから。」

「仲間?」

「そう!君たちがずっと戦い続けてきたオブリビオンだよ。今頃街で暴れてるんじゃないかな〜いっぱい放ったからね♪」



----------



「とにかくオブリビオンのいない場所に!室内に入れ!!こっち側に戻ってくるなよ!!」

「オーウェンさん…リツたちもお手伝いする!声かければいいんでしょ!」

「……状況が状況だ。子供に手伝わせるのもダメだけどよぉ…頼む!ただし危険なことはすんなよ!!」

「はい!」

「カイル!お前はあっち側を頼む!」

「は、はい!!」


----------


「クロエ様!早く逃げましょう!」

「待ってちょうだい!家の中にまだ私の宝物があるのよ!」

「そんなのどうでもいいですわ!」


----------


「旦那様!奥様!早くお逃げに…!」

「どこへ行っても今はあの怪物だらけよ。だからいいの。」

「あぁ。君たちは早く逃げなさい。」

「……アメリアさん…」

「…行きましょう。」


----------


「お母さん!お父さん!急いで!!ホールの中は頑丈だからきっと大丈夫だよ!」

「わかったわ。早く行きましょう。」

「…!後ろ!お母さん!!」

「大丈夫よ…!お父さん!リリィちゃんを!」

「…待って!!お母さん!!」


----------


「…街中でオブリビオンが出た!」

「数は!?」

「わかりません…!!とにかく今までと比べ物にならないほどの数だと!」

「とにかく住民に指示をしろ!駆けつけられるものはすぐに駆けつけろ!」

「…何が起こってるんだ?」

「オブリビオンが大量に出たそうじゃ。」

「アルヴィンさん…」

「ここも危ないかもしれん。」

「……」


----------


「きゃ〜!オブリビオンよ!!早く!」

「ロバートしっかりつかまっとけよ!」

「うん!」

「ミナミ!何してるの!?早く逃げるわよ!」

「フレディ…」



----------



2人とも歯を食いしばった。彼らが戦ってる間に街までもが巻き込まれてしまった。あの場所には関わった人もたくさんいる。


「絶対止める!!」

「威勢がいいね〜さっさとやっちゃおうかな。」


次の瞬間。キャリーの羽が一斉に宙を裂いた。


「ヒュラド、右!!」

「任せろ!」


ヒュラドが鎌を振り抜き羽をまとめて叩き落とす。火花が散り、床に突き刺さる。その隙に踏み込み、キャリーの方へと向かう。


「はぁっっ!!」


キィィン!!


衝撃でキャリーの身体が後ろへ滑る。つかさずヒュラドが回り込む。


「今だ、ヒュラド!」


鎌が大きく弧を描き、キャリーの背を裂く。


「ふーん……」

「一気に行こう!」

「わかってるよ!」


二人同時に駆け出す。剣と鎌。上下からの挟撃。キャリーは防御するが、完全には防ぎきれない。羽に傷が入った。


「……」


キャリーが後退した。このまま押せばいけるかもしれない。


「ヒュラド…!このまま……」

「フレディ!!!」


その時、背後から小さな羽刃の雨が降り注いできた。


「ヒュラド!大丈夫!?」

「な、なんとかな…」


ヒュラドの体には数本の刀が刺さっていた。


「大丈夫、これぐらいすぐ取れる。」

「ご、ごめん…俺のせいで…」

「お前のせいじゃねぇよ。安心しろ。」


しかし。次の瞬間。


ドシュ。


ヒュラドの顔へ刃が飛んできた。


「…!!」


刃が、右目を貫いた。


「はぁ…はぁ…ぐっ…。」


視界が一気に赤に染まった。血が頬を伝ってポタポタと落ちてくる。


「ヒュラド!!」


フレディが駆け出そうとした、その瞬間。


ザアアアッ!!という音と共に羽が嵐のように降り注いだ。


「邪魔だ…!!」


剣で弾こうとするが、数が多すぎる。ヒュラドの方へ寄れない。

その隙をキャリーは見逃さなかった。


「意外と楽しかったよ。ヒュラドくん。」


ズブッ!!


鈍い音が響いた。刃がヒュラドの胸を深く貫き、背中から突き出る。


「がはっ......!!」

「ヒュラド……!!」


彼の叫びが虚しく響く。ヒュラドを守りきれなかった。血を吐き床へ崩れ落ちるヒュラド。ピクリとも動かない。それを見てキャリーは楽しそうに微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ