過去の真実
「人間…?そんなわけない。俺はシェーラ様に作られた存在だ。魔法が使えないのはシェーラ様が魔法の調合を失敗したからって……!」
「あぁーなるほど。君にはそう伝えてあるのか…でも残念。それはシェーラがついた嘘だ。君はね、人間なんだよ。」
「人間…?」
「俺は…シェーラ様に生み出された存在で…魔法が使えないのは、失敗したからだって……」
アンフェニの声は震えていた。それが真実だと信じてきた。そうでなければきっと心が壊れてしまうから。
「ははっ、必死だねぇ。」
キャリーは愉快そうに肩を揺らした。
「でも現実って残酷なんだよ。君は改造されたただの人間。魂だけを無理やり繋ぎ止められて、生きてるだけの存在。そりゃ多少は体に魔力が流れてるけどさ〜アヴィニールは最初から魔法で創られた完全な存在。血も骨も、全部が魔力でできてる。そりゃ魔法を自由自在に使えるよねぇ。」
アンフェニの視界が歪んだ。
「それでも俺はシェーラ様が作ってくださった…!それは変わらない!」
「うーん…あっ!そうだ。君に教えてあげるよ!君の知らないこと。君の過去…昔はレオンと言ったかな?」
「レオン?誰だよそれ。」
「君の昔の名前だよ。君がまだ魂を入れ替えられる前のね。僕、知ってるんだ〜シェーラが君を解明するために色々試してたの覗いたから。」
その場は静まり返っていた。そんな中、キャリーの声だけが響きわたる。
「あるところに、毎日毎日主人に働かせて酷い仕打ちを受けている少年がいました。その少年はレオン。少年はそんな生活に耐えかねて、親友である少年リネルと共に逃亡しようとしました。しかし途中で見つかり彼は殺されてしまいました。その後、親友は逃げ切ることができました。そして、その哀れな少年の遺体を持ち去ったのが僕。シェーラはそれに魂を込めた。そして君が生まれたんだよ。アンフェニ。」
キャリーは物語を読み聞かせるように、子供に話しかけるような声で喋り続けた。
「レオンの親友のリネルは逃げ切った。君のその記憶を見て気になっちゃってさ〜リネルくんはどこだろうーってね。方向的にトルマリン王国だったし、ちょっと見つけようと思ってね。案外すぐ見つかったよ。あの国、優秀な捜査員?を育てるためにたくさん子供を保護してるんだってー彼もまたその1人だった。」
「…そんなこと僕たちに話してどうなるの。」
ノアが小さく声を漏らした。
「…それにあんなに監視の厳しい場所なかなか通り抜けられないわ。私たちもそうだったけど、なかなか難しいんだから。」
「そこは僕のお得意の魔法だよ♪何かあっても記憶を弄れば問題なし。楽でいいね♪」
キャリーはくすっと笑う。
「ついでにほかの人も見たんだよね〜チュラメリダもその中にいたんだ。チュラメリダは本当に悩んでて、見ていられなくてね…だから救ってあげようと思ってた!記憶操作をできる薬をあげたんだ。」
「そんなの救いとは言わない…!ただ自分の正義を押し付けてるだけじゃないか!」
フレディが大声で叫んだ。
「失礼だな〜チュラメリダはやりたいことができる。僕は情報を得られる。ウィンウィンな関係だよ。それに逃げた彼はずっと自分だけが生きていることを引け目に感じていた。だから罰を与えてあげたんだ。裏切りと言うなのね。」
「裏切り?」
「そう。彼は友を裏切った。そういうことにした。確か名前は……べギレネスだったかな?」
その名前を聞いた瞬間、全員が顔を見合せた。べギレネス。ヒュラドの友達。
「べギレネスって…俺たちがあそこで会った…」
「君たち、知ってるんだ~なら話は早いよ。説明が省ける。話すことはこれぐらいかなぁ~僕も早く世界を救いに行きたいし、君たちにはここで死んでもらわないとね。」
次の瞬間、床に魔法陣が浮かび上がる。
「避けて!」
無数の光弾が降り注ぎ一同は一斉に散った。魔法が飛び交い床が抉れ、視界は光で埋まった。
「っ…!!」
光弾が肩をかすめ、焼けるような痛みが走った。それでも前へ進み続けた。魔法を弾き、受け、殴り飛ばしながら。
「いいね〜けどさ、そんなんじゃだめだよ。」
魔法が身体に直面する。
「ぐあっ!」
その隙を縫ってグレースが滑り込んだ。小刀が閃き、キャリーの影を裂く。
「な…!」
「ふふ。」
「うっ……!」
グレースは遠くへと投げ飛ばされた。
「展開…!」
アヴィニールが咄嗟に緩衝材のようなものを作り、グレースを受け止める。
その時、ソフィアが槍を投げつけ、ノアが矢を放つ。そして、後ろからはアンフェニの攻撃。3人の攻撃が重なり、キャリーの肩をかすめた。そのせいで魔法の発動が一瞬遅れる。
アンフェニはそれを見逃さなかった。キャリーに向かい1発を入れる。
同時に詠唱。アヴィニールの魔法がキャリーに届いた。
「やった…」
煙が晴れた先、キャリーの姿が見える。
「意外とやるな~」
まだだ。倒れていない。でも今の調子で行けば、少しずつだけど確実にダメージは入る。
「このまま行こう!」
交戦を続ける。
(少しでもいい隙を作れ…!その隙は次の攻撃へと繋がる……!!)
何度攻撃を与えようが、倒せない。アヴィニールが回復魔法を与えているがそれでも疲れは溜まる。
だが、キャリーも少し消耗してきている。どこか動きがぎこちなく、肩や腕に微細な裂け目が走っていた。
「ふっ!!」
「おっと…かすっちゃったか…痛いなー」
肩に走る裂け目を押さえながらキャリーは笑った。その笑みの奥には確かな殺気が宿っていた。しかし、キャリーの完璧な動きを狂わせるには十分だった。
「みんなこのまま押しき……」
「はぁ〜僕がここまでされるとはね~君たちなかなかやるね。僕もそろそろ本気を出そうかな。」
その瞬間、空気が変わる。魔力が蠢き、煙の中で淡く光るキャリーの身体が、みるみるうちに形を変えていった。全身から迸る魔力がまるで生き物のようにうねる。背中から大きな翼が広がり、まるで天空を覆う大天使のようだ。
背中から伸びた翼が大きく羽ばたいた瞬間、暴風のような衝撃が走った。
「っ……!」
6人は成す術もなく吹き飛ばされ、床に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
さっきまで確かに押していた。なのに今は触れることすらできない。キャリーは宙に浮かび、見下ろすように微笑った。
「さぁ、ここからが本番だよ。」




