帰還者
「さよなら。」
フレディは反射的に目をつぶった。しかし、カキンという音がなり、彼のほうに矢は飛んでこなかった。
「させねぇよ。」
ヒュラドが防いでくれたのだ。
「…ほんとにうざい奴。」
「チュラメリダ、お前の相手は俺だ。決着をつけよう。すべての。」
「……いいわ。あなたとこうして戦える日をずっと待っていたの。フェニックス。」
2人の武器がぶつかり合う音がする。金属音が響く。衝撃で地面にひびが走り、砂埃や瓦礫が舞い上がった。
その衝撃とともにヒュラドは奥へと吹き飛んだ。
「ヒュラド!!」
「あれーいいのかなぁ~僕がいること忘れられたら困るよ。」
キャリーは軽く手を振るだけで、前方の空間が不気味に揺れた。
ヒュラドたちに構ってられない。できれば、あちらにも応戦したいところだが、キャリーを目の前にして彼たちにも全く余裕がない。とにかく今は目の前の敵をなんとかしなければいけない。
「ほら、早くかかっておいでよ。それとも怖気付いちゃったかな~」
「…あいつうざい!!」
「感情的にならないのアンフェニ。」
「アヴィニールだって行きたいんじゃないのかよ!」
「私だって、今すぐとっちめたいわよ!あんなやつ。けど、協力しないと倒せない。あいつの力は私たちが1番よく知ってるでしょ。」
「…わかったよ。フレディ!」
「うん。」
深呼吸をする。全員で協力してキャリーを倒す。
「行くよ!!!」
合図とともに、一斉に走り出す。
グレースは小刀を左右に振り、フレディの横を駆け抜けながら連続攻撃を仕掛けようとする。
しかし、簡単に攻撃は通らない。
「ぐっ…!」
「グレース!」
「私は大丈夫!…!フレディ屈んで…!」
グレースは後ろを確認すると、彼にそう声をか、その言葉通り、フレディはすぐに身を低くした。
その瞬間、ノアが素早く矢を放つ。矢は空中で光を切るように飛び、キャリーの方へ一直線に飛んでいった。しかしこれもまた防がれてしまう。
「またダメか…!」
「もう終わり~?」
「……まだ終わってない。」
ソフィアは静かにキャリーの背後へ回り込んでいた。その槍はキャリーの頬をかすめた。
「へぇ……これがコンビネーションってやつ?でもまぁ僕にはかなわないよ。」
「ぁ…わっ……!!」
キャリーはソフィアの槍をつかみ、ソフィアごと放り投げた。
「ソフィア!!大丈夫!?ソフィア!」
「ん…な、なんとか…」
ソフィアは何とか無事だ。しかし依然として状況は変わらない。先ほど頬に出来た傷は、全て治っていた。
「…あれれ~君たち、こんなに弱かったっけ~?これじゃ楽しくないよ。僕が弱い者虐めしてるみたいじゃないか。別に僕はさぁー君たちのことをどうこうしたいとか、そういうのあんまり思ってないしー」
「……懐がガラ空きだぜ…!!」
アンフェニがキャリーに拳を入れた。
「…さっきまではいなかったのに、どこから湧いてきたのかな?……あぁ。なるほど君か。」
アヴィニールは魔法でアンフェニを瞬間移動させた。
「いや~いいね。自分ができないことは相手がカバーしてくれる。魔法が使えないアンフェニと、力が弱いアヴィニール。なかなか良いペアじゃないか。」
「ふん!俺たちは兄妹だからな!」
「アンフェニ油断しないでよ。」
「わかってるってよ…!」
アンフェニは拳に力を込め、キャリーの周りを素早く駆け回る。
「くらえっ!」
キャリーは片手でアンフェニの拳を弾き飛ばす。
「ん〜、早いけどそれだけ〜?」
アンフェニは地面に手をつき、なんとか立て直す。
「くっ…!」
再び突進するアンフェニを、キャリーは片手でいとも簡単に止めてしまった。
「いいね〜よっと…」
「わっ!」
キャリーはそのままアンフェニを宙にあげた。
「ぐっ…!」
アンフェニの体勢が崩れ、キャリーの蹴りが飛んでくる瞬間。
「アンフェニ!」
空中からアヴィニールが魔法を放ち、隙を作ろうとした。
アヴィニールが放った光弾の衝撃で、キャリーは一瞬ひるむ。アンフェニはその隙に空中で体勢を立て直し、再び拳を振るう。
「まだ終わってない…!」
「おー、元気だねぇ。」
しかし、キャリーは魔法を跳ね返し、再び地面にアンフェニを叩きつけた。
「結構頑張ったね~すごいよ。さてと…そっちばっかり攻撃するのはあれだね〜ってことで、ここからは僕もやらせてもらうよ。」
キャリー後ろに大きな魔法陣のようなものが出てきた。
「さて、受けられるかな。…行け。」
その一言で小刀のような武器は6人目掛けて雨のように降り注ぐ。
「避けきれないよこんなの…!」
「何諦めてるのノア!私たちは勝つのよ!」
「とにかく避けて…ぐっ…!」
「フレディ!」
足をかすってしまった。
「大丈夫…かすり傷だから…」
避けるのに必死。何も出来ない状況だった。
「……シールド展開…範囲15…」
アヴィニールによる魔法展開。
「早くこの中に!」
アヴィニールの声で全員がそのシールドの中に入った。
「何とか助かったね…」
「でも油断しないで。ソフィア。あいつの顔からするに、まだ本気を出してない。」
「ってことは…」
「まだ攻撃が強くなる可能性があるってこと。」
「大正解♪」
グレースの言う通りさらに攻撃は強くなった。
「君のそんなやわなバリアすぐ無くなるよ。」
「…っ…!」
強さを増した小刀の雨にシールドは破られてしまった。その衝撃でアヴィニールが倒れ込んでしまう。
「…アヴィ!」
「…大丈夫よ……魔法、破られただけだから…」
「歯がゆいねー家族が傷ついているのに何も出来ないその無力さ。君も魔法が使えたらもっと強くなれていただろうね。そうだ!君にいいこと教えてあげる!君が魔法を使えない理由!」
「俺が魔法を使えない理由…」
「気になってたんじゃない?シェーラに生み出されたのに君は魔法を使えない。一方同じくシェーラに生み出されたアヴィニールは魔法が使える。この差はなんなのか。」
キャリーは不敵な笑みを浮かべた。
「それはね……君が人間だからだよ。」




