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もう会えない人

「フレディ。最近ぼーっとしてること多いけど…大丈夫か?」

「あ、うん。なんと言うか…全部見たことあるなって。正夢になってるだけかな…?…きっと、気のせいだよね。」

「……うん。そうだな。」

「よし!リアム!もう一回やろ!」

「…うん。」


----------


昼休み。訓練場の片隅で、同期たちが手作りの軽食を広げていた。


「お前、すごい勢いで食べるな〜」

「だって腹減ってるんだもん!」

「今日食堂臨時休業ってなんでだよって話だよな〜」


フレディが顔を上げると、リアムはいつものように剣の手入れをしていた。そして、ちらり彼の方に視線を送る。


「リアムも食えよ。腹すいてねーのか?」

「うーん…俺まで貰ったらお前たちの分が随分減るだろ。だからいいよ。」

「やっぱり優しいなー」


なんでもない日常。でも、どこか心の奥に、昨日の模擬戦の感覚がチクチクと残っている。肩に残る痛み、木剣の衝撃。現実じゃない感覚。


----------


午後は軽い訓練。同期と組んで剣のフォームを確認したり、互いに掛け声を出したり。


「フレディ、その動き、ちょっと硬い。」

「え、そうかな…」


リアムはいつも通り横で指摘する。だが、フレディにはわかる。リアムの声や仕草、いつもと同じなのにどこか違う。ほんのわずかに、何かが違う。


「…ねぇリアム。君は誰?」

「誰って…リアムだよ。お前の幼なじみで、永遠のライバルのリアム・シンクレア。」

「そっか…そうだよね。」

(やっぱり、リアムだ。)

「ごめん、止めちゃって再開しよう。」

「………フレディ。そろそろ起きないか?」

「…何言ってるの?起きてるよ。」

「いや、起きてない。だって、お前はまだここに居る。」


リアムがそう言葉にした瞬間、

2人は真っ白の周りには何も無い場所に移動した。


----------


足は動かしてない。その場にいた。なのに瞬きをしたら知らないところに来ていた。

目の前に、さっきまで隣にいたはずのリアムが立っている。でも訓練場にいたリアムとは、明らかに違った。


「ここは…どこ?」

「境界だよ。生と死の、夢と現実の。」

「夢…?」

「そう。お前はずっと、夢の中にいる。」


フレディは首を横に振った。


「そんなわけないよ。だって確かにみんなそこにいた。いつも通り、そこに。」

「あれはお前が作り出した幻想。ただの夢の中の幻に過ぎない。過去を繰り返してる。」


心臓の音がうるさいほど響く。


「違うよ…これは現実でそれで…」

「フレディ。」

「俺はあそこでみんなと一緒に…」

「フレディ。」

「夢なんかじゃない……夢じゃ…」

「フレディ。」


リアムは彼の手をぎゅっと握った。


「大丈夫だ。」

「嘘だ…あんなの認めたくない……俺はお前を殺して…アレが夢で…」

「あれが現実なんだ。」

「そんなの…信じたくない……親友のことを手にかけた最低な人間なんて…」

「俺が頼んだことだ。お前が重荷に思うことない。なぁ、フレディ。俺との最後の約束忘れたか?」

「約、束…?」

「あいつらを倒して欲しいって。最後にお願いしただろ?その約束果たされてないぞ。」


握られた手が、微かに震えた。


「嫌だ…!リアムのいない世界なんていらない!!こんな世界捨ててもいい!リアムの方が何倍も大切だ!!」


リアムは悲しそうに俯き、黙り込んだ。


「…俺だって…お前と一緒にいたいよ。本当はこの夢の中にずっといて欲しいし、2人だけでこの先を描きたい!けど…できない…わかってるだろ。……果たしてくれ。お前ならできるだろう。」


歯を食いしばる。幸せな夢に浸り忘れるところだった。リアムとの最後の約束。あいつらを倒して仇をとる。それが亡くなってしまった仲間、国の人々、リアムが望んでることだ。


「お前と離れたくない。でも、敵を倒さなきゃいけない。仲間もピンチだから…ここに留まれば楽だ。騎士団もある。何度でも同じ日を繰り返せる。でも、それは偽り…わかってる。わかってるんだ…!けど、嫌なんだ…お前と離れることが何より怖い。独りじゃないこともわかってるのに…俺…」


リアムは、優しく笑った。


「俺との約束を果たすか。それとも、この夢に一緒に沈むか。」


フレディの視界が歪む。訓練場の音、剣の重さ、血の匂い。全部が、一気に流れ込んでくる。

そしてリアムの輪郭が、少しずつ薄れていく。


「起きろ、フレディ。生きろ。戦え。」


最後に、聞き慣れた声で。


「俺たち、永遠のライバルだろ?」


白が砕ける。


----------


音も光も全部が反転して、気がつくと先程の場所に戻っていた。

そして、リアムのいた場所に鍵のようなものが落ちている。それを拾いあげると目の前に扉が現れた。

タイムリミット。


(わかってた。けど…受け入れたくない思い出だってあるんだよ。)


それでもこの場所にはいられない。ここで過ごした思い出はもう全てない。タイガーアイ王国はもう滅んでしまった。

彼の両親も、同期も、友達も、リアムも。もう何も残ってない。けれど、確かにフレディの胸には留まり続けている。


「みんなの仇をとる。」


仇をとることが彼にできる最大の償いだ。


(さよなら。もう会えない人たちへ。)


フレディは扉の中へと足を進めた。



----------



「うーん…少しつまらないな〜夢の中の内容は君しか見れないんだろう?僕だって見たいな〜」

「あなたが見たら、干渉して夢を壊しかねないでしょう。だからダメです。」

「やっぱりシェーラはケチだな~ねぇ、チュラメリダもそう思うよね?」

「私は魔法とかそういうのはわかりませんから。」

「なんかみんな冷たい~悲しいな〜」

「…!待って。これ…」


シェーラが口にした瞬間、夢の中にいた全員が動き始めた。


「ちょっと〜シェーラ、魔法解かれてるよ~なんとかしてー」

「…もう一度魔法をかければ…!」

「…遅いよ。」


フレディは剣をとり、シェーラに向かい攻撃する。


「さっきの魔法、痛みも衝撃も何もなかった。きっと催眠。原理は分からないけどとにかく魔法の詠唱を中断させればいい。」

「君…さっきとはまるで別人だね~頭いいタイプには見えないしーどうやって破ったのー?」

「……相手がどんな体勢でいるかを把握していて、次何をしようとしているか、相手はどんな行動をするかを把握、予測する。夢で何度もやったよ。親友と。…全部思い出した。なくなっていた記憶を全部。」


その時だった。


「長い夢見ちゃったな…」

「よくもまぁ私たちのことを寝かせてくれたわね。」

「はぁ〜寝たから疲れだいぶ取れたわ~ありがなー敵さん~」

「反撃のときだね。」


眠っていた仲間が起き、武器を持ち立ち上がる。


「みんな…」

「やられっぱなしじゃいい気しないもんね。わたしたちが力を合わせればきっと大丈夫。」

「いっちょ暴れようぜ~!ここからはこっちのターンだ!」

「あんな胸糞悪い夢見せられて黙ってられないわ。」

「フレディ。やろう。僕たちで。」


ここからは彼らが世界の未来を守る番だ。

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