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選んだ道は

「…あれー?こんな真夜中に人…珍しいなー?どうしたのかな?僕は暇だったから実験がてら誰かの記憶を奪いに来たんだけど…君でいいかな。」


キャリーはヘラヘラと笑いながら、チュラメリダに近づいた。


「僕は目の前にすると、みんな怖がっちゃうのに君は違うんだね。これから君の記憶を奪うのに何とも思わないの?」

「…どうせ奪われたところで、私には何もない。」

「…君、面白いなぁ。気に入った!僕の協力者になってよ。」

「…協力者?」

「そうそう!僕ね、この世界を変えたいんだ!記憶を奪って、憎しみも何もないそんな世界を作る。協力してよ。すぐに決める必要はない。もし協力してくれるなら、3日後、この場所に来て。ばいばい♪」


彼女が返事をする間もなく、キャリーは去っていった。去っていったというより消えたという方が正しい。目の前で霧のようにいなくなった。


(憎しみのない世界。馬鹿馬鹿しい。そんなことできるわけないのに。でも、そんなに大きな夢を持てるなんてうらやましい。)


----------


翌日。チュラメリダは仕事に復帰することにした。


「…チュラメリダ。大丈夫?」

「ベギレネス…あと……」

「エゼキエルだよ!いつになったら名前を覚えてくれるの!名乗るのこれで5回目なんだけど!」

「あまり興味がないから覚えてない。」

「それが1番傷つく!」

「それで何の用?」

「大丈夫かなって。倒れたって聞いたから。」

「ほとんど治ったわよ。」

「フェニックスが心配してたからさ。」


この2人は、彼女の同期。ベギレネスはフェニックスの親友だ。フェニックスがよくチュラメリダに話していた。

一方、エゼキエルは捜査員になってから初めて知り合った。そのためあまり知らない。

ベギレネスとエゼキエルはバディ。この2人もかなり優秀で、成績はトップの方だった。


「そういえばフェニックスの話聞いた?」

「なに?」

「フェニックス、上層部から声がかかったらしいんだよ。捜査員長補佐につかないかって。」

(…は?)


捜査員長補佐はいずれ捜査員長になれる役職。アルヴィンでさえも、そんな役職にはつけていない。アルヴィンは課長。この施設では課長になるのも難しいとされている。

新人であるフェニックスが捜査員長補佐になるなど、異例中の異例だ。


(信じられない。信じたくない。私はこんなに努力しているのに…なんで…なんで…なんで…なんで、なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで…!)


目の前がぐるぐると回る。


「あいつ最近は研究の方にも協力しているらしいし。すごい差ついちゃったよ。」

「チュラメリダ?どうかしたの?」

「…なんでもない。私、することがあるから。」


その場にいられなくなった。


(おかしい。なんで。あいつは認められて私は認められないの?)


自然と涙が落ちる。


「なんで…」


誰もいない廊下に、嗚咽だけが響き渡る。


「チュラメリダ!」


後ろの方から彼女を呼ぶ声が聞こえた。声の主はフェニックス。


「チュラメリダ、俺捜査員長補佐にならないかって声かけられたんだよ!」

「…知ってるわよ。エゼキセルから聞いた。」

「あいつ言ったんだ。自分の口から言いたかったんだけどな〜」

「よかったじゃない。評価されて。」

「でも断ってきた。」

「…は?」

「実は、捜査員長になったらチュラメリダとバディを解消しなきゃいけなくなるって聞いたんだ。そんなの嫌だ。だから断ってきた。」


たったそれだけの理由で、チュラメリダ一番欲しかったものを跳ね除けた。彼女にはそれが理解できなかった。


----------


「来てくれたんだ。」

「…あなたに協力する。」

「そっか。嬉しいなぁ。それじゃあ説明するよ。僕はこの世界にオブリビオンって言う怪物を放つんだ。世界は、きっと混乱の渦に巻き込まれる。君は、人間の情報を僕に渡して欲しい。僕は人間のことについてあまりわからないからね。」

「あなたに人間の情報を渡すだけでいいのね。それで私に何か得があるの?」

「君の望むものをあげるよ。財産?地位?なんでもあげるよ。」


彼女の欲しいもの。それはただひとつ。


「…フェニックスを追い出したい。あいつの信頼を地に落としたい。」

「へぇ〜」

「私はフェニックスを告発する。外部に情報を漏らしたとして。でも、もしそれが嘘だとばれたとき、どうしたらいいかわからない。だから、それは何とかできるようにしたいの。」

「そんな簡単なことでいいの?なら、君にはこれをあげる。」


渡されたのは小さな小瓶。


「それは記憶を操作する薬品だよ。人間に効くかどうかは試してないからわからないけど、多分できると思うよ。改良は必要かもしれないけど。」

「これをどう使うの?」

「それは自分で考えな。賢い君ならわかるだろ。近々またここに来るよ。君以外の協力者も連れてね。」

「待って…!名前…」

「言い忘れてたね。僕はキャリー。よろしくね。チュラメリダ。」


キャリーは消えていった。キャリーは彼女が名乗らずとも、チュラメリダという名前を知っていた。

渡された小瓶を見つめる。


(こんな変な薬品ほんとに効果あるのかな?とりあえず誰かで実験しないと…)



----------



「別に…私がどう生きていたのかなんて興味ないと思うので。」

「確かにね〜まぁ、君の過去の事なんて魔法を使えばちょちょいってわかっちゃうから、どうでもいいんだけどね♪」

「言うと思ってましたよ。」


シェーラは一言も話さない。目を伏せ何かを考え込んでいるようだった。


「あなたは本当に……」

「あ、チュラメリダ。僕の記憶を操る薬どうだった?使ったんでしょ?」

「はい。上手く行きました。怖いくらいに。」

「うん!なら良かった!」

「あの、シェーラ様なにか言おうと…」

「なんでもないよね。シェーラ?」

「……」

「ほら!そういえばこの子たちいつ起きるかな?楽しみだね。」


キャリーは不自然に話題を逸らした。シェーラが何かを言おうとしていたのは確かだが、結局黙ってしまった。


(フェニックスがもし目覚めたら、その時は…今度こそ私の掌で踊らせる。)

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