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ひとつの記憶

彼の頭の中に記憶が流れこんでくる。


「……う、ぁ……っ!」


----------


「リアム!」

「フレディ、どうした?」

「一緒に稽古しよ!」

「いいぞ。負けないからな。」

「今日は俺が勝つよ!」

(そうだ俺は…タイガーアイ王国、騎士団副隊長。フレディ・ハワード。)



----------



フレディの家はよくも悪くも、普通の家。裕福ではないが、幸せに暮らしていた。

近所に住むリアムとは幼い頃からの親友。


----------


ある日、2人が遊んでいたときのことだった。近くに騎士が通りかかった。その時その人たちを見てフレディは無性にかっこいいと感じたのだ。


「フレディ、あれ騎士団長だよ。」

「あの馬に乗ってる人?かっこいいねー!」

「うん。僕も乗ってみたいよ。」

「リアム!大きくなったら一緒に騎士団に入ろう!それでそれで!騎士団長になるの!!」

「なれるかな?」

「なれるよ!一緒になろう!」

「…うん。」


2人は騎士団に入ることを誓った。騎士団長に一緒になるという約束。


----------


「はぁ…!」

「は!」

「うわぁ…!」

「今日も俺の勝ちだな。」

「また負けたよ…リアム、強すぎる!」

「本気で騎士団目指してるなら、これぐらいやらないとダメだろ?」


得意げな顔で勝ち誇るリアム。フレディとリアムは毎日稽古をしていた。リアムは強くて、フレディが勝てたことは1度だってない。


「次は勝つ。もう一回!」

「じゃあこれが最後な。日もだいぶ沈んできたし。」

「絶対勝つから!!」


毎日毎日、こんな生活を続けていた。

毎日毎日剣を振る日々。


「……もうちょっとで勝てたのに…!!」

「はは。惜しかったな。」

「その顔なんか腹立つ!」

「今何言ったってイライラするだろ?フレディのことは俺が1番知ってるんだから。」

「…そうだけどさぁ…」

「さぁ、もう1戦やろ。手加減はしないよ。」

「望むところだ!」


----------


そんな生活が続き、5年。騎士団の試験が開催されることになった。


「絶対受かろうね!」

「あぁ。もちろん。」


受験科目は基礎体力の測定。戦闘能力の測定。それから基礎学力の測定。この3つだ。

リアムはこれを簡単にクリアしてしまうだろう。

戦闘能力や基礎体力はもちろん、頭もかなり良い。それに比べて、フレディは頭がさほどよくない。そこが鬼門だ。


----------


「それでは基礎体力の測定を始めます。」


走り込み、腕立て、跳躍。息が切れて、脚が重くなる。それでも、なんとか食らいつく。


「残り半分だ。合格したいなら最後でやり切れ。」


試験官の声で現実に引き戻される。合格の為に必死にやりきった。

フレディの結果はなんとか合格ライン。ギリギリだが落ちてはない。その横ではリアムは呼吸一つ乱さず、もう次の種目を待っていた。


----------


「戦闘能力の測定を始めます。」


模擬剣を持ち、試験官と打ち合う。剣を振る腕がしびれる。


「…なかなかやりますね。しかし、全てが荒削り。こんなものでやっていけるとでもお思いで?」

「…はぁぁ!!」

「おっと…さてどこまで見せてくれますかね。」


試験官の言葉に出来るだけ耳を貸さないように意識してひたすら剣を振るった。そして何とか勝ちをもぎ取ることができた。

息を整えるために深呼吸をする。すると、別のところでは周りが歓声を上げていた。そこにいたのはリアムだった。


「…私の負けだ。」

「あの大将様を一振りでやるなんて…」

「あれは将来大物になるぞ。」

リアムは一太刀で試験官の剣を弾き飛ばしていた。会場がざわめくほどの実力差。ひそひそと聞こえるものは、全てリアムを称える声だった。試験監督さえ拍手をするほどだ。それを彼はただ唖然と見ることしかできなかった。


----------


「最後に基礎学力の測定です。」


これが、フレディにとっての一番の試練だった。


「試験開始。」


紙をめくり問題を読む。


(えっと…これはこうして…あれ?どうやって計算するんだって…?)

フレディは計算の問題に頭を抱え、文字の書き取りでつまづく。横で素早く手を動かし、さらさらと答えを書いていく。焦りだけが募っていった。


「残り3分。」


その言葉がさらに彼を焦らせた。一通り解くことができたが、自信を持って正解と言える答えはほとんどない。

どうか合格であってくれ。そう胸の中で願うことしかできなかった。


----------


すべての試験が終了した。試験官たちが合否を決めているところだ。


(どうしよう…どうしよう…不合格かな…)


合否がわかるまで気が気でない。

しばらくすると、ぞろぞろと試験官たちが建物から出てきた。

そして、紙が渡される。


(合格…!合格…!合格…!おねがい!)


フレディは紙を開く。無慈悲にも、その紙には不合格と言う文字が書いてあった。学力の測定が合格ラインに届かず、不合格となってしまったのだ。

リアムはと言うともちろん全部合格。しかもほぼ満点だ。騎士団の人から直々に声をかけてもらっていた。


「君、素晴らしい結果だよ。その若さで。すぐにでも現場に出てほしいぐらいだ。」

「ありがとうございます。」

「では1週間後の入団式で待っているよ。」


リアムは騎士団の人にお褒めの言葉までもらっていた。一方フレディは不合格。


「フレディ。」

「リアム…合格、おめでとう!すごいな!ほぼ満点合格なんて…」

「ありがとう。フレディは…」

「俺は落ちちゃった。仕方ないよね。頭悪いし。来年もう一回受け直すよ。それで、それで…お前と、一緒に…」


目の中が潤んで涙でいっぱいだ。視界が滲んで見えなくなる。


「フレディ、ちょっとそこで待っていてくれ。」


そう言うとリアムは先程の騎士団の人のところへ行ってしまった。

何をしに行っているのだろう、とフレディは思っていた。


そして、しばらくすると、リアムが戻ってきた。


「フレディ!これ。」

「これ…」


渡されたのは騎士団入団許可証。


「これって入団の…!どうして…俺、合格してないよ!」

「お前が不合格なのは学力測定だけだろ?騎士団の人に話したら、合格でいいって。」

「…ほんと…?俺、入れるの?リアムと一緒に…」

「うん。一緒に頑張ろう。」

「…リアム!!ありがとう!大好き!」


フレディはリアムに抱きついた。


「2人で入るって約束だっただろ。」


こうして、2人の入団が決まった。

ちなみに、フレディが合格できたのは、リアムが彼のことをすごく推薦したからである。

試験でほぼ満点を取り切ったリアム。その彼が推薦する人物ということで、特別に入団が認められた。きっと推薦がなければ、そのまま不合格だっただろう。

彼らは10歳。騎士団に10歳で入る人は少ない。12歳から15歳の間の人が多い。

それにフレディはほぼ不合格のようなもの。これからもっと頑張って差を縮めなくてはいけない。


「せっかくリアムが掛け合ってくれたんだ。肩を並べられるように頑張るぞ…!」

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