『約束』
入団して1ヵ月が経った。相変わらずリアムは周りに引っ張りだこ。
(モヤモヤする…親友が期待されることはいいことなのに…)
2人は毎朝、訓練場で稽古をする。
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朝の訓練場。まだ空気はひんやりとしていた。
「リアム、今日は負けないから!」「楽しみだな。でも、昨日の稽古で負けたこと、まだ根に持ってるだろ?」
「今日勝つからそんなことどうでもいいの!」
「じゃあ始めようか。」
リアムは軽やかに攻撃をかわし、さりげなく反撃。2人の剣がぶつかる音が響く。
「はぁ…!…なっ!」
「隙あり。」
フレディの剣が吹き飛ばされる。
「俺の勝ちだね。フレディ。」
「はぁ、はぁ…また負けた…」
「でも前より強くなってるよ。隙が少なくなってきてるし。」
「ほんと!」
成長できてることと、リアムと一緒にいられること、それだけで彼の心は弾んだ。
「それに強さは武力だけじゃない。相手も思う気持ちも大切な強さだ。フレディにはそれがあるじゃないか。」
「またそれ〜?何回も聞いたよ。そんなのこの場所じゃ、何の役にも立たないよ。」
「そんなことない。少なからず、俺はフレディの明るくて前向きなところが好きだぞ。」
リアムはストレートにそんなことを言う。そのおかげで、騎士団だけでなく、街の人たちからも大人気だ。
ゴーンゴーン
時間を告げる鐘が鳴った。
「そろそろ仕事の時間だな。」
「うん!行こう!」
いつも通り持ち場に戻った。
仕事の合間の休憩時間。騎士団の食堂で2人は向かい合って座る。
「今日の任務、思ったよりできたよ!」「状況を見るのが上手くなってきたな。どこに敵や仲間がいるのかの把握素早くなってきてる。」「でもリアムはいつもそれができてるじゃん。俺なんてまだまだだよ。」「そんなことないよ。フレディが頑張ってるの俺が1番よく知ってるよ。」
「リアムがいるから俺も頑張れるんだよ!」
そんなたわいもない会話をする。
午後からの訓練も控えている。時間も来たので、再度訓練場に向かった。午前と同じような模擬戦闘をする。模擬戦は一週間に一回必ず行われる訓練だ。
特に、強い者同士の対決は訓練場が大いに盛り上がる。リアムは期待の新星として、注目されていた。
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夕方、屋上にて。
任務報告を終え、街を見下ろしながら彼らは静かに語り合う。
「今日も無事に終わった〜。疲れたけど、楽しかったな!」「うん。フレディ、今日もよく頑張った。」
そういい、リアムはフレディの頭をポンポン撫でた。
「リアム、くすぐったいよ。」
「ごめんごめん。つい癖で。」「やっぱり俺リアムと一緒に居ると安心する。」「…俺もだよ。なぁフレディ。もし俺が死んだら悲しんでくれるか?」
「なに縁起でもないこと言ってるの。当たり前でしょ!俺はお前の親友なんだから。」
「じゃあ、もし俺が死ぬ時はお前が殺してくれ。」
「…何言ってるんだよ。」
困惑するフレディ。
「敵に殺されるぐらいなら、お前に殺して欲しいんだよ。」
リアムの目はあまりにも真剣だった。
「敵なんかに殺させないよ!俺が守るから。」
「…そうか。約束な。」
「そういうリアムは?もし俺が敵に殺されて死んだら、その時はどうする?」
「…もちろん。復讐しに行くよ。殺した相手にね。」
「平然とした顔でそんなこと言わないでよ…怖いなぁ。」
「大切な人が殺されたら、そりゃ復讐せずにはいられないと思う。」
「なら、絶対死なないようにするよ。俺はおじいちゃんになるまで生きて、幸せに暮らすんだ〜もちろんリアムも一緒に!約束!!」
「全く…フレディらしい。」
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時は流れ、2人は16になった。
15歳。運命が変わったとき。
リアムが騎士団長へと就任し、そして国で1番名誉がある騎士に送られるソキウスという称号を獲得した。15歳で騎士団長になるなんて、歴史を塗り替える快挙だ。周りは、こぞってリアムを褒めたたえた。
この時、フレディは純粋に嬉しかった。親友がみんなに褒められて認められたことが。
しかし、それと同時にすごく遠くに行ってしまうような感じがした。
「フレディ。」
「リアム。団長就任おめでとう。それにソキウスの称号も。やっぱりリアムはすごいよ!俺ももっと頑張って…」
(…少し寂しいな。いつも置いてかれる。リアムは常に一歩先を行く。)
団長になれば、仕事場が変わってしまう。これまでと同じように一緒にいることができない。それは彼もわかっていた。
「フレディ、提案があるんだ。」
「なに?」
「お前を俺の側近として置かせてくれないか?」
「え?どういうこと?」
「団長になったら、副団長を指名して選ぶことができるんだ。それにお前を指名したい。」
「俺なんかでいいの?俺、全然強くないし、頭も悪いし、きっと足手まといになっちゃうよ。」
「お前がいいんだよ。俺が1番信頼できるのはフレディなんだ。」
そう言い、リアムは笑ってみせた。
「ダメか?」
「すごく嬉しい。リアムと一緒に入れるのが嬉しいんだ。」
「頼んだぞ。」
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それからと言うもの、任務が増えた。上の役職についたのだから当然だが、とにかくやることが多い。
部下たちの統制、安全の確認、作戦の話し合いなど。
(多分俺は役立ってないけど。作戦会議とか話難しすぎてわかんないし。)
リアムはこの仕事を1人でやってのける。
リアムはほとんど人を頼ろうとしない。自分でできることは何でも自分でやる。
夜遅く、皆が寝静まった後でも仕事を続けていることが多々あった。それを見たフレディは、よく手伝っていた。
「リアム。リアム、ちゃんと寝なきゃだめだよ。」
「ん…大丈夫だよ。そんなに疲れてないから。」
「クマできてますけどねー」
「これは…」
「俺も手伝うから。何かできる事ある?」
「…ありがとう。でも…」
「でもはなし!人には世話焼くくせに自分は適当に扱うんだから!」
リアムは心なしか嬉しそうな顔をした。
「じゃあ、そこの資料まとめてほしいな。」
「うん!任せて!!」
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そんな生活にも慣れてきた頃。2人が16歳になった頃だ。
「フレディ、任せたいことがあるんだ。」
「ん?なに?なんでも言って。」
「ここ最近、正体不明の怪物が暴れ回ってるって各国から報告があるんだ。うちの国の森でも目撃が確認されている。」
「それの調査に行ってくればいいんだね。」
「あぁ。あいにく俺は用事で行けなくてな。」
つまり、フレディが指揮官となり、調査になってはいけないとことだ。だがしかし、彼は方向音痴。本当に救えないほどの方向音痴だ。果たして、部下を連れて目的の場所に行けるかどうか。
「いつ行けばいいの?」
「出発は明日だ。」
「明日?結構急だね。荷物をまとめて準備してくるよ。」
「…あと、この任務はお前だけに任せたいんだ。1人で行って欲しい。」
通常このような情報収集の任務では、8人程度で行くのが普通。少なくとも5人で行くことが多い。
もし1人が誰かに襲われれば、情報を持って帰ってくる人がいない。だからこそ、数名で動くのだ。
「リアム、それだともし俺が帰って来れなかったときに、誰が情報を持って帰るの?」
「この任務はかなり危険なんだ。正体不明の怪物は、下のものには任せられない。何があったとき大変だからな。だから、お前に頼みたいんだ。」
リアムの目は今までにないほど真剣だった。
「…わかった。」
「もし襲われたらすぐに引き返してくれて構わない。今欲しいのは情報だ。」
「うん。それじゃあすぐに準備するね。」
そういう言い、フレディは部屋を出た。
「…これで大丈夫。これでいいんだ。」
そんなリアムの声は空気に溶けていった。
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言われた通り、彼は森の方へと来ていた。今のところ、特に変わった様子はない。
一通り探してみたが、全くと言っていいほど何にも出会わない。
(ほんとになにかいるのかな…?)
日が暮れて、辺りは暗くなってきた。
「そろそろ引き返すか…」
来た道を戻ろうとした。
その時、街の方からとても強い光が見えた。
夜の街は明るい。街灯が灯され、辺を明るく照らす。しかし、そんな光り方じゃない。街灯の照らす街はもっと違う明るさだ。この明るさは何か不穏なものが隠されているような輝きだ。
急いで街の方へ行った。
しかし、こんなところで道に迷った。流石は方向音痴。
(嫌な予感がする。)
動悸が止まらず、冷や汗もびっしょりだ。
「リアム…無事でいてくれ。」
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しかし、遅かった。
着いたときには、街はもう火の海。騎士団仲間が倒れていた。
家もほとんどなくなっており、まさに地獄絵図。
「はぁ…はぁ…はぁ…リアム…リアムは…」
リアムを探す。もしかしたらまだ生きてるかもしれない。それにかけるしかない。
その願いも虚しく、フレディの目に飛び込んできたのは、急所を貫かれて倒れているリアムの姿だった。
「リアム!!」
「フレ、ディ…」
すぐにリアムの側に駆け寄った。傷口から大量の血が流れている。
「リアム…血が…手当て…」
「しなくていい。俺、多分もうすぐ死ぬ…もう、体、全然痛くない。きっと…」
「そんなこと言わないでくれ!!俺が何とかするから…!俺が何とか…!」
「フレディ。」
リアムはそっと彼の剣に手をかけた。
「俺を殺してくれ。」
「え…」
「約束、したじゃないか…」
「あれは冗談じゃ…」
「本気だよ。俺はお前に殺されたいんだ。頼む。」
時間がない。リアムはもう助からない。焦りながらもそれだけはわかっていた。
(リアムの最後の願いを叶えてやらなくちゃ…)
「お前に頼みたいことがあるんだ…こいつら、倒してくれ。俺に、はできなかった…でもきっと…お前ならできるはずだ…」
「嫌だ…!!そんなこと出来るわけないだろ!!!ふたりで騎士団長になるって…!一緒におじいちゃんになるまで生きるって…!!約束しただろ!!お前を失いたくない…」
「…フレディ…俺の最後の願い…聞いて、くれないか…?」
リアムの言葉にフレディは無言で剣を抜いた。そしてリアムの心臓へとつきたてる。
「ごめん…リアム…」
「はは…お前と、出会えて…よかった…フレディ。俺のこと…忘れないでくれ…」
すっとリアムの体から力が抜ける。
「あ゛ぁぁぁぁ!!!!うあぁぁぁ!!」
(俺が殺した。俺が…大切な親友を、この世で1番大切な人を手にかけた。守ると言う約束も果たせず、自らの手で…)
後ろからコツコツと、靴の音が響いてきた。敵だ。しかし、親友を失ったフレディにとって、今そんなことはどうでもよかった。
「自分の手で殺すなんてね。」
「…」
「ねぇ、話をしない?」
「…」
「私はシェーラと言うものよ。オブリビオンをこの街に連れてきた。…怒らないの?」
「どうでもいい。」
「あなたに1つ提案をしたいの。あなたの記憶、私にちょうだい。」
記憶。
「記憶をなくせば、きっと楽になれるわよ。親友を殺したことも、何もかも忘れることができる。」
「わからない。何をしたいのか。何もわからないんだ。」
「あなたの望みを私が叶えてあげるわ。楽になりたいんじゃない?」
「…俺は、楽になりたい?」
「そうよ。あなたは楽になりたいのよ。」
楽になれる。
「俺は楽になりたい…」
「なら奪ってあげる。君の記憶全部。」
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(なんでこんな大切なことを忘れていたんだ。今まで過ごしたあの日々を、あの思い出を。俺は最低な人間なんだ。親友を手にかけた。もしあの日、道に迷わずもっと早くに戻ることができていたら、助けられたかもしれないのに。いやだ。いやだ。いやだ。認めたくない。嘘だと思いたい。夢だと言ってくれ。)




