濁ったアンバー
5人は琥珀村へと足を進めていた。
「久しぶりだね。ここに来るのも。」
「懐かしいわ。オーウェンたち、ちゃんとやってるかしら?」
「オーウェンさんのことだからきっと大丈夫だよ。」
「だといいけど。」
そんなこんなで話をしていると、あっという間に村についた。
しかし、村について思ったことは、
「ひどい、な…」
あまりにも荒れ果てた村に、そう言うしかなかった。
「…この村は、貧しい人が多いのよ。前嵐が来たときも復旧に1年以上かかったもの。オブリビオンに襲われれば、これだけひどい被害にもなるでしょうね。」
グレースは目を細めそう呟いた。声を潜めたまま、周囲を見回す。ここで何かを察するのに、ヒュラドの説明は必要なかった。誰が見ても明らかに、被害の規模は尋常ではなかった。
「とにかく、シャドウジョーカーのアジトに向かいましょう。」
「うん…」
「ここには1度だけ来たことがあるが…前とは違うな。」
ヒュラドがそう話す。あまりにも荒れ果てており、同じ場所かと疑うほどだ。
それを横目にしばらく歩いていると、シャドウジョーカーのアジトについた。
「ここよ。」
「久しぶりだね。ここに来るの。」
近寄っていくと、そこにはシャドウジョーカーの面々がいた。
「リーダー…?もしかしてリーダー…!」
「久しぶりね。」
「お久しぶりです!今オーウェンさんを呼んできます!」
「ありがとう。中に入ってもいいかしら?」
「はい!もちろん!あっ…でも…」
そう言い、彼は口ごもってしまった。
「何かあったの?」
グレースがそう聞くが、なかなか答えてくれない。
「…いいわ。言わなくてもわかるもの。オブリビオン…でしょ。」
「はい。今この中にいるのは全員無事なんですけど…中にいないやつは全員…」
「…入るわね。」
覚悟を決め、中に入ると、そこには以前とは比べ物にならないほど人がいなかった。
「…オーウェン。帰ったわ。」
「グレース?お前無事だったのか?」
「無事に決まってるでしょ?私、これでもここのリーダーしてたのよ。」
「仲間がいろいろやられてしまってさぁ、ちょっとこっちも落ち込んでるわけよ。」
「ずいぶんと減ったわね。」
「あぁ。生き残ってるのは5人だ。」
「半分以上やられてるじゃない。全く…」
そう言うグレースだが、明らかに落ち込んだ顔をしている。
「村の状況は?」
「村はほぼ壊滅状態だ。オブリビオンの襲撃で家屋は崩れ、残った人々も精神的に疲弊している。」
「やっぱりそうよね…わかったわ。ありがとう。」
「で、気になってたんだが…後ろの3人は誰だ?フレディはわかるが、それ以外の3人は初めて見るやつだぞ?」
「あれからいろいろあって、仲間になった人たち。」
「こんにちは〜俺はヒュラドって言います。オーウェンさんって言ったっけ?よろしくな。」
1人ずつ自己紹介をしていく。その間、フレディは気になって仕方ないことがあった。
「カイルくんは…?」
そう。ここにカイルがいないのだ。
「…仲間の半数近くが記憶を奪われた。その中にカイルもいる。あいつは、子どもをかばって、記憶を奪われたんだ。」
「カイルまで…」
グレースは声を震わせた。
「あの、オーウェンさん。お客さんですか?」
入り口の方を向くと、そこに立ってたのはカイルだった。
「カイルくん!」
フレディが声をかけるとカイルはびっくりした顔で、彼の方を見つめた。まるで初対面かのように。
「俺、フレディ!覚えて…」
「…すみません。記憶が曖昧で…」
「カイルはシャドウジョーカーにいた時の記憶丸々抜け落ちてるんだ。だからお前のことも覚えてねぇよ。」
「もう少し早く来ていれば、救えたかもしれないのに…」「今は責める時じゃない。俺たちは次の行動を考えなきゃならない。」
オーウェンの声は冷静だったが、その奥には怒りと焦燥が滲んでいた。
「この被害でも動かない国はさすがだな。俺たちのような、こんな辺鄙な見捨てられた村なんて、どうでもいいんだろ。」
グレースもまた拳を握りしめた。
「あの子たちのためにも…私たちは動かないと。」
「うん。絶対に倒そうオブリビオンを。」
「ここも被害が出てるってことはオブリビオンが出た後なのかな。」
ソフィアがそう呟く。
「多分そうだな。じゃあ俺たちは前に進まなきゃだな。」
「相変わらずすげー目標掲げてんなぁ。なら、俺たちは、この村を守る。グレース、お前の帰れる場所、ちゃんと守ってやるよ。」
「…ありがと。」
「お前らも急がなきゃだろ。さっさと行け。」
グレースたちはアジトを出て歩いた。
すると、懐かし風景が目に入る。
「あ、ここ。俺が試験した場所じゃない?シャドウジョーカーに入るための!」
「ほんとね。ここは何も変わってないわ。」
これだけ大きな被害が出ても、この場所は何も変わってなかった。多少瓦礫が飛ばされてきてるが、大部分は変わっていない。
「なにも変わらずに過ごせることが当たり前だと思ってたけど、人は失ってから気づくものなのね。今も昔も変わらない。」
「…絶対オブリビオンを倒そう!それでみんなの記憶を取り戻そう!」
「言われなくてもわかってるわよ。さぁいきましょう。次、目指すのは、ターフェアイト王国。」




