さよならの合図
「怪我の手当しなくちゃ…!」
「でもでもこれ手当どころの話じゃないって…!」
「一旦落ち着い…」
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彼が目を覚ましたのは真っ白の場所。
「ここって…」
ここはいつもリアムと会っていたあの場所だ。
「フレディ。」
「リアム!リアム、俺!約束ちゃんと守ったよ!ちゃんとオブリビオン倒したよ!」
「うん。」
「だから…!」
「……まだこっちに来ちゃダメ。」
「……どうして…?俺、約束守ったよ…?なんでなの…?」
リアムは少し困ったように笑った。
「守ったよ。ちゃんと見てた。」
そう言葉にするリアムはどこか寂しそうな顔をしている。
「でも…まだこっちに来ちゃダメだよ。生きてほしいんだ。」
「…嫌だ。嫌だ!リアムのいない世界なんて要らない!!俺もそっち側に行きたいよ…リアムのいない世界で、俺はどうやって生きていけばいいの…?1人は嫌だ…」
「わかってる。フレディならそう言うことぐらいわかってた。けど…ダメだよ。フレディには仲間がいるじゃん。その仲間を置いて死ぬの?仲間を失う辛さを誰よりもわかっているのはお前だろ。」
リアムの言葉に、彼はうつむいた。
「それでも…疲れたよ。もう。家族も、友達も故郷も全部なくなった。その上、親友を自分の手で殺めた。もういいだろう…こんな気持ちになるぐらいなら死んだほうがマシだ。俺は完璧な人間じゃないから…今までリアムがいたから、辛いことも全部頑張れた。リアムの頑張る背中を見て、俺も頑張ろうって思えた。けど、もうリアムはこの世界にはいないじゃないか……リアムだってさ、俺がいなくなったら嫌だろ。それと同じ気持ちだよ!」
リアムは少しだけ目を細めた。
「うん。嫌だよ。フレディのいない世界なんて。俺だって要らないよ。全部壊す。俺は優しくないから。けどさ、俺はお前に生きて欲しいと思うよ。フレディがもし俺の立場ならどうする?きっと同じこと言うでしょ。」
「……そうだろうね。俺だってリアムには生きてて欲しかったもん。」
「ほらね。」
静かな声だった。
「だからダメなんだよ。人の気持ち分かるくせに、自分のことになるとめちゃくちゃ。フレディの悪いところだよ。」
「……うるさいな。」
「図星でしょ。」
少しだけ昔みたいな空気が戻る。
(ずっとこの場所にいたい。昔みたいに一緒に笑い合えるだけで、幸せだって思えたあの日々に戻りたい。騎士団も何もかも元通りで、みんながいて、稽古して…)
戻りたいと思ってしまう。もう今はないあの場所に。
「フレディ。」
「なに。」
「俺が死んだ意味、なくしてほしくない。」
胸に刺さる言葉。
「お前がここで来たら俺、めちゃくちゃ怒るから。」
「自分は死んでるのに?」
「うん。死んでても怒る。」
「理不尽じゃないそれ?俺が死んだら怒るくせに、自分は死んでるんでしょ?」
思わず笑いそうになる。でも目は濡れている。
「…ずるいよ。」
「うん。知ってる。俺は優しくないしずる賢いから。」
リアムは軽く肩をすくめた。
「…最後に1つだけいいかな。俺、リアムの隣に立てたかな?俺より実力があるのはリアムだし、ずっと助けられてきたから。」
「何言ってるんだよ。最初からずっと隣にいたじゃないか。俺はお前以上の騎士を知らない。それに救われてたのはこっちの方だ。初めて出会ったその日から、お前は俺を救い続けてくれてたよ。」
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「フレディ!起きて!」
「死なないで…」
「まだ話したいこといっぱいあるよ!」
「こんなところでくたばる気かよ!!」
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仲間の声がする。
「ほら、仲間が呼んでる。早く行ってきな。」
「…!リアム体が…!」
リアムの体を見ると、透けて消えかけていた。
「もう時間みたいだ。この場所には居られない。本当にさよならだな。」
「リアム…待って!」
「大丈夫だよ。そばにいられなくても、ずっと見守ってる。」
「くっ…ひっ…、」
「泣くなよ…こっちまで泣きそうになるから。フレディ、お前と出会えたこと、俺の人生で一番嬉しいことだったよ。」
リアムの輪郭が、少しずつ崩れていく。光みたいに、静かに。
「リアム…待って!まだ…まだ言いたいこと…」
声が震える。リアムは変わらず、優しい笑顔だった。もう二度と会えない。
「俺!リアムと会えてよかった!これからも生きていく!全部抱えて!忘れないから!ずっと覚えてる!ずっと!」
「うん。ありがとう。」
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「君の名前はなんていうの?」
「え?」
「俺はフレディ!フレディ・ハワード!」
「……なんで窓から入ってきてるの…?ここ2階だよ…?」
「だって入り口開けてもらえなかったんだもん!けど君に会ってみたかったんだ。だから頑張ってそこの木登って入ってみた!」
「怒られても知らないよ…」
「うん!大丈夫!ところで君の名前は!」
「………リアム。リアム・シンクレア。」
「リアム!かっこいい名前!よろしくね!」
2人の初めての出会い。この時から、リアムは彼に救われていた。
(お前があまりにも今まで関わってきた人たちと違うから、すごく嬉しかったんだ。俺を見てくれてるって思った。本当に嬉しかったよ。フレディ。)
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リアムは跡形もなく消えてしまった。
(さようなら。リアム。俺の大切な親友。永遠のライバル。安らかに眠ってくれ。)
その瞬間、世界が崩れ落ちた。




