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早田音さよの超絶物語  作者: 中二病少女
私達のクエスト
49/50

クエスト2

 町を出て二時間以上が過ぎ、気がつけばもう昼を過ぎようとしている。そんな中、私達は町の入口近くで魔力のコントロールの練習をしてる。

「なあ、はぁ……はぁ……もう出発しないか?もう昼……だぞ?時間ないんだろ……」

 神山君がとうとう弱音を言い始める。人は弱音を吐き始めたらもうおしまいだ。集中力的にもう限界だろう。こんなに疲れていたら魔力を上手くコントロールするのは難しいかもしれない――

「だめよ。辛いかもしれないけどこれからのことを考えると絶対に必要なことなの」

 それでも私は生徒会長のように厳しく言った。私だって常にこの状態を保つのにどれだけの時間がかかったことか。これだけは絶対にできるようになっておかないといけない。これさえできるようになれば神山君も精神魔法もすぐに出来るようになる。

 でも……これじゃ確かにキリがない。

「最初のクエストだしみんなで行きたかったんだけど……悪いけど、雛井さんと優香で行ってきてくれない?」

 私は苦渋の決断をする。雛井さんは優香を少し苦手だと思ってるし、これをきっかけに仲良くなってくれないかなって思ってたりするんだけど。

 二人きりにして仲良くなれるならもうとっくに仲良くなってるか……。

「は?先輩それって私に死ねって言ってるんですか?ねえ?どうしてですか!?なんで私が一緒じゃないんですか!?別に私はできてるんだし、お姉さまについてってもいいでしょ!お姉さまがいないこのギルドに何の価値があるんですか!!」

 今にも私に飛びかかってきそうな勢いで美穂が自分の欲望のまま意見する。

「ちょっとこっち来なさい!」

「な、何するんですか?い、痛いですよ。み、耳を引っ張らないでください」

 私は美穂の耳を引っ張り、雛井さん達から離れて聞こえないように話す。

「ちょっとは空気読みなさいよ!あんなたら分かるでしょ?」

「考えは分かりますよ。お姉さまと優香を二人きりにしたいんですよね?」

「なら――」

「私だってお姉さまと一緒に居たいんですよ!先輩なら分かるでしょ!好きな人と一緒に居たいだけなんです!」

「そ、それは……」

 美穂は本気の目をしている。こうなった時のこいつは非常にめんどくさい。

 私だってそうだ。直也とずっと一緒にいたいと思う。

「最近、忙しくて一緒にいることは多いけど、二人きりで遊べないし……もう嫌なんですよ!やだやだやだー」

 駄々を捏ねる子供のように美穂は言う。あーマジでうざい。

「仕方ないわね、だったらあんた達三人で――」

「待って、さよ。私、雛井さんと二人で行きたい」

 私が言おうとすると優香が言った。

「「…………」」

 え?今なんて言ったの?聞き間違い?優香が自分からそんなこと言う出すなんて……絶対にありえない。

「なんでそんな顔してるの?本気で言ってるの。最近さよも頑張ってるし、私も頑張ってみようって思っただけ」

 まさか優香からこんな言葉が聞ける日が来るなんて思っても見なかった。

「待って優香。さすがにそれはおかしいでしょ?それって私に対する嫌がらせ?私達はさよ先輩をいじるために結成されたのよ?忘れたの?対象は私じゃない!さよ先輩なの!」

 美穂がわけのわからないことを熱論する。頼むから私の見えないところでやってほしい。ツッコむのもめんどいくさい……。

 私は美穂をスルーして話を進める。

「雛井さんと二人きりになって話せる自信はあるの?」

「ない」

 即答かよ!これだけ言ったんだからなんかあると思ったのに……そんなことはなかった。優香らしいっちゃ優香らしいけど……。

 優香は記憶力は凄いけど、それを全く活かさないタイプだ。いつも黙っていてクールぶってるが、自分では決して頭を使おうとしない。本人が言うには考えるのが嫌いらしい。才能に恵まれているのにくせにその才能を持て余すなんて私には考えられない。

「おい、お前らこそこそ何やってるんだよ?結局どうするんだ?」

 私達がこそこそと話していると神山君が待ちきれなかったのか会話に入ってくる。

「「私が行く!」」

 なんかどうでもよくなってきた……こいつら見てるとまともに考えている自分がバカに見えて、考える気がなくなる。

「こうなったら一つしか方法はないわね」

「そうね」

 美穂と優香がお互いに距離を取る。うん、この流れはまずい。なぜ人は揉め事を争いでしか解決出来ないのか?

「もう一回だけ言う。私は普段やる気がないの。だからこういう時は素直に譲ってくれない?」

「あんたはいつもみたいに本読んでなさいよ!なんで私とお姉さまのイチャラブ時間を邪魔するのよ!」

 これだけ聞いてると一方的に美穂の方が悪く感じるのは気のせいだろうか。

「口で言ってわからないなら黙らせるしかないわね。私はあのボッチかまってちゃんとは違うわよ?」

「……ねぇ、それ私のこと言ってるの?」

「分かってるわ、あんたはあの普段は意地張ってるくせに、肝心なところでビビってるボッチ会長とは違うってことはね」

「………………」

「じゃあそろそろ――痛っ!って、何すんのよ!」

 神山君が美穂の頭を軽く叩く。ナイス!さすが神山君。ギルド一のストッパーだ!

「お前らはおとなしく決めれないのかよ!」

「じゃあ神山君は何かこの状態を穏便に解決できるの?」

「ジャンケンって分かるか?そう言うので決めたりしろよ!なんでわざわざ魔法使いたがるんだよ!喧嘩するために魔法を練習してるんじゃないだろ?」

 じゃんけん??神山君の世界の争いを収める方法なのだろうか?

「いいわよ」

「それでいきましょ」

 美穂と優香は当たり前のように片手を前に出す。

 え?こいつら何言ってんの?全くついていけないんだけど?なんなのこの状況!?

「は!?待って待って待って!ねぇ!あんた達!じゃん、けん?って何よ。私全然わかんないんだけど!?雛井さんとなお――じゃなかった、えっと、時葉君は分かるの?」

 つい知ってなさそうな二人に話を振ってしまう。なんかこの二人が知ってるのに私だけ知らないって言うのは気に入らない。

「わ、私は知ってます。中学の頃に美穂さんが教えてくれた遊びですよね?」

「そうです、さすがお姉さまです。神記憶力です!」

 なぜ、無駄なところでちゃんと記憶しているのか?他にももっと覚えないといけないことあったでしょ?

「俺も先輩と同じで知らないんだけど……じゃんけんって何?」

 それを聞いて安堵する。どうやら直也も知らないようだ。そうだよね?普通そんなの知るわけないよね?逆に知ってるこいつらの方がおかしいのよ。大体そんな異世界の遊びをなんでこいつら知ってんのよ!!それがおかしいでしょ!!

「ジャンケン知らないのか?そうだったのか……俺の世界だと常識なんだけどな」

「百年前以上に流行った遊戯よ。昔本で読んだ記憶があるわ」

「私もくだらない事なら結構覚えているつもりよ!」

 この偏った知識もここまでくると羨ましいレベルだ。

「じゃあ行くわよ!」

「いいわよ」

「じゃーんけーん」

「「ぽん!」」

 優香と美穂はお互いに手を開いたまま止まってしまっている。これだけ見ているとシュールとしか言いようがない。え?何よ、これ。全く意味が分からないんだけど……何してんのこいつら?

「あいこね」

「そうね」

「あーいこーで」

「「しょ!」」

 今度は美穂は指をピースするような形を出している。そして、優香は最初から形を変えずに手を握っている感じだ。

「私の勝ち」

「っく……こうなったら力ずくで――」

「美穂さん、ダメですよ。負けは潔く認めないといけませんよ。あの時そう言ってたじゃないですか」

「はーい……仕方ないですね。お姉さまにそう言われたら負けを認めざるしかないですね」

 どうやら勝負が終わったらしい。見た感じルールは何となく分かった、気がしないでもない。

「ならお姉さま今度一緒にデートしましょう!」

「デ、デートですか?別にいいですよ」

 雛井さんは不思議そうに答える。これ絶対デートの意味分かってないでしょ!二人で遊ぶことをデートだと思ってるんじゃないの?まあ、間違ってはないとは思うけど……。

「よっしゃーお姉さま大好きです!」

 そう言いながら雛井さんに飛びつく。

「そ、そんなに喜んでもらえて嬉しいです。で、でも人前では恥ずかしいのでやめてもらえると助かります」

「はーい」

 美穂は二人で遊ぶ約束をしたのがよっぽど嬉しかったのかありえないくらい満足気な表情をしている。私も直也をそんな風にデートに誘ってみたい。

「仕方ないわね。今日はお姉さまを貸してあげるわ。優香!二人きりでも変なことするんじゃないわよ?」

 美穂はまるで雛井さんが自分のもののように言った。二人きりになって一番変なことしそうなのはあんただと私は思う。てか、このギルドでそんなことしそうなのは美穂くらいだろう。

「さよじゃないから大丈夫」

 優香がこっちに視線を合わせながらそう言ってくる。はい、そうですね。寝ている直也にキスしたことのある私の方が一番やらかしそうですね。あああああああ!!黒歴史すぎる……。

「じゃあ行ってくる。行こ、雛井さん」

「は、はい。では、みなさん行ってきます」

 そう言いながら二人が歩き出す。

「気を付けろよ。神奈月の話はしっかり聞けよー」

「お姉さま気を付けてくださいね!初クエ頑張ってきてくださーい。優香の話はくれぐれも聞くようにお願いしますねー」

 あんたら母親かよ!過保護にもほどがあるでしょ!雛井さんはどこか抜けている部分があるし、心配になる気持ちは分からなくもないけどさ。

 それにしても……神山君の私と優香の扱いの差。いや、別にいいんだよ?私よりも優香の方がしっかりしてるってイメージがついてるんだろう。

 雛井さんは歩きながら私達に向かって笑顔で手を振ってくれる。優香は一度も振り向きはしないまま、雛井さんと一緒に歩いていく。 

「ねえねえ、つかさ。じゃんけんって一体どういうゲームなの?俺にも教えて!」

 あーいつも思う。なんでこういう時に私は知らないんだろう。知ってたら手取り足取り教えてあげれるのに。こっちの世界のことならたくさん知ってるのに……。

「私にも教えてくれる?優香と美穂が知ってるのに私が知らないなんて気に入らないわ」

「じゃんけんって言うのは――」

 神山君の話を聞きながら私は遠ざかっていく二人の影を見つめた。

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