クエスト3
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私と神奈月さんは神山君達と別行動することになり見慣れた道を歩いています。まさか私がこんなふうに楽しくクエストを受けれる日が来るなんて思ってもいませんでした。すでにワクワクが止まりません。
「今日はこっち」
そう言いながら神奈月さんがいつもとは逆の方を指さします。いつも魔法の練習する時はこっちへ曲がっていたのでつい曲がってしまいそうになってしまいました。
「あ、そうだったんですか?あの、今日はどこに行けばいいんですか?」
二人で行ってきて。そう言われましたが、今思えばどこに何をしに行くのかすら私は知りません。
クエストはすべて生徒会長さんと神奈月さんがやっているので私は詳しいことはよくわかりません。これはギルドマスターとしてダメなんじゃないでしょうか?
「大丈夫、その辺は任せて。こう言った仕事は雛井さんよりさよの方が向いてるから」
そう言いながら本を取り出して、読みながら歩き始めました。
「ど、読書しながら歩くのって危なくないですか?」
「大丈夫」
神奈月さんは本から目を逸らさずにそう答えます。
「そ、そうですよね……ご、ごめんなさい。いつも読んでいますもんね」
「…………」
うぅ……どうして私ってこんなに空気が読めないんでしょうか?もっと他に言い方があったんじゃなかったのかと思います。
どうしましょう……ああ、いけません!頑張って神奈月さんと仲良くなろうって決めたじゃないですか!
神山君の言葉を思い出します。雛井ならできるぞ。神山君は私にそう言ってくれました。
「あの……私にできることって何かありませんか?クエストは生徒会長さんと神奈月さんがやってるじゃないですか?私にも何か……」
「雛井さんは気にしなくていいよ」
またもそっけなく返されてしまいます。
「そ、そうですよね……」
あきらめてはいけません。そうですよ、せっかく二人っきりのチャンスなんですから……。
あれ以来会話のないまま時間だけが経ってしまいました。私達はずっと見たことない道を歩きます。
何度も話しかけようと思いましたが、やはり読書中に喋りかけてるのがいけないと思ったので、私は神奈月さんが本を読み終わるのを待っています。
神奈月さんは私のことどう思ってるんでしょうか?もしかして本当は嫌われてる?いいえ、ダメです。もっと前向きに考えましょう!それに神奈月さんはそんな人じゃありません。
神山君が言っていました。行動に起こさないと何も変わらないと――
「あ、あの!」
「何?」
特に考えもなく話しかけてしまいました。どうしましょう……でも、迷ってはいけません!いつも迷ってしまうから私はダメなんです。
「そ、その二人きりですね」
「そうね……私と二人きりは嫌?」
神奈月さんは本を閉じて、いきなりそんな質問してきます。
「そんなことないですよ!わ、私は二人でも楽しいですよ」
私は本当のことを答えます。私にとっては誰かと一緒にお出かけできる。それはほんとに嬉しいことです。
「無理しなくていいよ。私はあんまり楽しくないわ」
一瞬、神奈月さんが何を言っているか理解できなくなりました。
そして、いきなりそんなことを言われて私は足を動かすのを忘れてしまいます。
もしかしたら私は神奈月さんに嫌われている。そう思わないようにしてきました。ですが、目の前で言われるととてもショックです。
そ、その前に……謝らないと……。
「え、えっと…………ごめんなさい。私のせいで不快な思いをさせてしまって」
謝って許される問題ではないかもしれません。これは謝って許される問題ではないと思います。私のせいで――
「ごめんなさい。そういうつもりで言ったつもりじゃないの。みんなで来た方が楽しかったでってことを言いたかったの。別に雛井さんのこと嫌いってわけじゃないわ」
良かった……そうですよね、神奈月さんはそんな人ではないですよね。神奈月さんを一瞬でもそんな人だと思ってしまった自分が、とっても恥ずかしいです。
「そ、そうですよね。良かったです。そ、その、安心しました。私もみんなと一緒に来たかったです」
「…………そうね」
神奈月さんは少し間を開けてそう言います。そして、また無言になってしまいます。
せっかく二人きりなのに……私がまた何か余計なことを言ってしまったから……。
さっきの神奈月さんはどこか無理をしていた気がします。無言にしてしまうのはやっぱり私が――
「雛井さん」
「は、はい」
私は突然、名前を呼ばれてびっくりしてしまいます。
「今無言になったのは自分のせいだと思ったでしょ?」
「そ、そんなことないです」
咄嗟に私はそう答えます。
「雛井さんは親友に嘘つくんだ……」
「しん……ゆう?私がですか?」
しんゆう?親友?生徒会長さんと神奈月さんは親友って聞いていましたけど……。
「親友は嫌?」
「そ、そんなことないです。とっても嬉しいです」
「そう言ってもらえて嬉しいわ。私は親友かそれ以外で判断するから、同じギルドのあなた達はみんな親友だと私は思っているわ。入った時からずっとね」
知りませんでした。やっぱり神山君の言っていた通り、神奈月さんはいい人です。
「そうだったんですか……知りませんでした」
それに比べて私は神奈月さんのことを全然知らないくせに……なんてことを考えていたんでしょう。
「そうね、自分からはほとんど喋ろうと思わないからね。私は喋るの苦手だから。雛井さんは無言なのは嫌?」
「そ、そんなことはありませんよ……」
「また嘘ついた……」
「うぅ……ご、ごめんなさい……無言はあんまり好きではありません……」
今の生活を送っているせいでしょうか?それともずっと一人だったからでしょうか?ずっと人の声がしないのは一人ぼっちな気がしてあんまり好きではありません。
「私は無言で本を読むのが好きなの。他人と話すのは好きじゃない、できれば避けて通りたい道だと思ってる。でも、雛井さんはそんな私に朝毎日話しかけてくてるでしょ?普段は言わないけどほんとは嬉しいって思ってるの」
それを聞いて私は自然と笑顔になってしまいます。やっぱりこう言ってもらえると嬉しいです。
「雛井さんは私のこと苦手?今度は嘘つかないで答えて」
神奈月さんは真剣な眼差しで私を見てきます。
「は、はい……でも、嫌いってわけではなくて少しだけ苦手って言うか……その……」
「言わなくてもわかってるわ。あなたは優しい人だから……でも、私はあなたのそう言うのが苦手なの」
「??」
神奈月さんの言っている意味が理解できません。私が優しいから苦手なんでしょうか?
「雛井さんだけじゃない。私はさよも含めてギルドの人はみんな苦手」
神奈月さんは続けてそう言います。その言葉で私はますます理解できなくなります。神奈月さんは生徒会長さんのことも苦手だなんて……私からしたら信じられないことです。私には仲良さそうにしか見えません。
「雛井さんにはちょっと意味が分からないかもしれないわね」
「ご、ごめんなさい」
「謝らなくていいよ、これは私のせいだから雛井さんは一切悪くない。私が全部悪いの……」
そう言いながら神奈月さんは暗い表情をしてしまいます。
「そ、そんなことありません。わ、私が悪いんですよ。そ、その私の嫌なところがあったら何でも言ってください。全部治しますから」
「――ふふ、雛井さんは優しいね」
頑張って慰めたつもりがなぜか笑われてしまいます。
「私何かおかしいこと言いました?」
「ごめんなさい、なんて言うかね。雛井さんに私やさよが惹かれた理由が、分かった気がしただけだから」
「生徒会長さんが私に?」
生徒会長が私に惹かれる?私にそんな惹かれるところなんてないと思うんですけど……。
「雛井さんは自分がギルドマスターになったのってどう思ってる?みんなに乗せられてなったって思ってる?」
そう言えば神山君がそんなこと言っていた気がします。
「神山君もそう言ってたんですけど、違うんですか?」
「さよは絶対に言わないでって言ってたけど、この際だから言うね」
「待ってください、だ、ダメって言われたことを言うんですか?生徒会長さんとまた喧嘩になっちゃいますよ?」
「大丈夫よ、昔なんて喧嘩はよくしてたし……あの頃の喧嘩は本気だったけどね」
神奈月さんは少し微笑みながらそう言います。
「本気ですか?」
本気の喧嘩って言うのはどんな感じなんでしょうか?さっき見た喧嘩は本気ではなかったんでしょうか?
「それは気にしないで、それに私だけじゃない。さよだって美穂と仲良く見えないでしょ?いつも喧嘩ばっかりだけど、あの二人はあれで結構仲がいいのよ」
「生徒会長さんと美穂さんがですか?」
美穂さんも同じことを言ってました。仲が悪そうに見えるけど、実は仲がいい。それでも私はいつも喧嘩をしている二人に止めに入ってしまいます。もしかして私って余計なことをしているんでしょうか?
「ああ、ごめんね。さっきの話がそれちゃって、話を戻すわね」
「は、はい」
「さよは雛井さんに憧れてるの。憧れって言うか嫉妬?みたいな感じね。雛井さんが凄い魔法を使えるって言ってた時にさよが怒ってたの覚えてる?あれも多分嫉妬してたのよ」
生徒会長さんが私に嫉妬?失敗させる魔法しか使えない私に?
自分が少しは凄い魔法が使えることは理解できましたけど、それで生徒会長さんが私に嫉妬する理由がいまだに分かりません。
「私の方が憧れてるくらいですよ。私なんて一つしか魔法使えないんですよ?それに性格もこんなだし……」
「さよに憧れてるの?」
「あ、当たり前じゃないですか!私だけじゃなくて学校の皆さんも生徒会長さんに憧れてますよ!」
「憧れてるのってどっちのさよ?学校の方?それともギルドで一緒に居る時のさよ?」
「どっちもです!」
私は迷わず答えました。私の答えに驚いているのか神奈月さんは少し呆気にとられているようです。
「生徒会長さんは出会ってからずっと私の憧れでした。その……私って学校に入った時は噂のせいで美穂さんしか話かけてくれる人がいませんでした」
「でも、その噂も美穂のせいなんだけどね」
「あははは、言われてみたらそうですね。それでも私はとっても嬉しかったです」
私は微笑しながら答えます。
「怒ってないの?」
「どうしてですか?あの時も言ったじゃないですか?怒る理由がありませんよ」
美穂さんは私のことを思って噂を流してくれたんです。一人だったのは辛かったですが、今では感謝しているくらいです。
「雛井さんはやっぱり優しいんだね」
「あ、ありがとうございます」
うぅ……神奈月さんに面と向かって言われてしまうと顔が赤くなってしまいます。二人きりだからでしょうか?余計に恥ずかしいです。
「そ、それですね。そんな中私に話しかけてくれたのが生徒会長さんでした」
私は照れているのを隠すかのように話を続けます。
「先生に頼まれごとをしていて、私が一人で荷物を運んでいた時に手伝ってくれたんですよ。私は何度も断ってんですけど、生徒会長さんは無理に私から荷物を取り上げて手伝ってくれました。その時に感じたんです。この人はいい人だなって、単純な理由かもしれませんがそれでも私は嬉しかったです」
「そんなことがあったのね」
「はい、その時の私はそんな些細なことでも嬉しいと思ったんです。私のせいで神山君と滝見君が喧嘩しそうになった時も助けてくれました」
「あの時の神山君は凄かったね。私も本当は助けたかったんですけど……人と関わるのが嫌で……」
「そ、そんな、気にしてないですよ。入学試験の時のこともありましたし……あの時は魔法を失敗させてしまってごめんなさい。今更ですが……階級がF級になったのはやっぱり私のせいだったんですね」
「それこそ全然気にしなくていいよ。さよ見てるとA級扱いされるのって結構めんどくさそうだし、そのおかげで雛井さんとこうして話が出来てるしね」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「同じギルドに入って、本当のさよを見てどう思った?」
「最初は驚きました。ですけど、優しい生徒会長さんには違いありません。たまにだらけてしまったり、人のことを嫌になったりするのは仕方ないことだと思います。それは包み隠さずに私達に言ってくれる生徒会長さんはやっぱり凄いです。私には真似できません」
「それって褒めてるの?」
「勿論、褒めてます!それに他人のことを本気で心配してくれたり、人の為に本気で怒ってくれる人なんて、なかなかいませんよ」
「確かにさよのお節介はいいとこの一つだと思うわ。孤独アピールしてても、根は昔と変わらない子なのよね」
「そうなんですか?あの……もし良かったら生徒会長さんと神奈月さんの話をもっと聞かせてほしいです!」
「私達の話?別のいいけど――つまらない話よ?」
「はい!それでもぜひ知りたいです!」
「――分かったわ、少しだけよ」
一瞬だけ、迷ったように見えましたが、神奈月さんは普段は見せない優しい笑顔でそう答えてくれました。
私は神奈月さんから他愛もない昔話を聞いたり、私も自分のことを話したりしながら歩き続け気が付けば目的地へと到着していました。
「目的地に着いたわ。この辺よ。紫色のつぼみの花があると思うからそれを探してほしいの。少し時間がかかるかもしれないけど、のんびりいきましょ」
「は、はい。分かりました!」
初めてのクエストです。神山君や美穂さんの分まで頑張らないと、そう考えていると少し木々の間から何か不思議な気配がします。
私は少し不思議に思いながらその場所へと移動します。そこには綺麗に咲いた紫色の花。とってもきれいです。こんなの初めて見ました。
「どうしたの雛井さん?」
その後を神奈月さんがゆっくりとついてきてくれます。
「わかんないんですけど……もしかしてこれでしょうか?」
私は不思議な雰囲気の紫色の花を指をさしながら答えます。
「さすが雛井さん。それは隠草って言って、普通は探すのに苦労するはずだったんだけど……こんなに早く見つかるなんて、私達は運が良かったわね」
「そうだったんですか?でも、無事に見つかって良かったです」
「この植物は人の体温を感知できるらしくて、人がいる時はつぼみが閉じてるって聞いたんだけど……まあ、いいわ。直接肌で触れるとすぐに枯れてしまうから、ハンカチか何かでその花を摘んでくれる?」
「は、はい。分かりました」
そう言われて私はハンカチを取り出して花を傷つけないように花を摘みます。
「その花をこのビンに入れてくれる?」
私は神奈月さんの言う通り、花を丁寧にビンの中へ入れます。
花をビンへと移すと今まで開花していた花が、つぼみへ変わってしまいます。
「あわわわわ、ど、どうしたんでしょうか?さっきまで綺麗に咲いていたのに……」
「安心して、この花は本来はこの姿なの。さっきまでがおかしかったの」
「そうなんですか?」
「何はともあれ、これでクエスト完了ね。帰りましょ、みんなが待ってるわ」
神奈月さんはそう言うと花の入ったビンにふたを閉め、自分の小さなカバンの中へしまいます。
「もう終わりなんですか?」
「どうしたの?何かやり残したことでもある?」
「いえ、その……」
今、言わないと……話すのが苦手な神奈月さんがこんなにも話してくれてるんです。私も勇気をだして、もっと積極的にならないと――
「あ、あの!最後に一つだけいいですか?」
「何?」
「そ、その……神奈月さんのこと……な、なな……」
ここまで言って言葉を詰まらせてしまいます。
神奈月さんのことを名前で呼びたい。私のことを親友って呼んでくれる彼女のことを。
美穂さんや生徒会長さんは神奈月さんのことを名前で呼んでいる。だから私も――
「な?」
「その……なま……」
うぅ……言葉にしてみると想像以上に恥ずかしいです。美穂さんは自分から頼んできてくれましたけど……。もし言って断られたらと思うと……そんなことはないと思っていても恐いです。
「名前で呼びたいってこと?」
神奈月さんは私の考えを読み取るかのようにそう言います。
「は、はい。そうです……ダ、ダメですか?」
「私はそう言うの気にしないから呼び方は何でもいいよ」
「あ、ありがとうございます」
良かった……これで一安心です――
「なら私も雛井さんのこと名前で呼んでもいい?」
「え?」
私はそう聞き返してしまいます。
「嫌?私だけ名前って理不尽じゃない?」
「そ、そんなことないです。ど、どうぞよろしくお願いします。それとありがとうございます」
私は神奈月さんにどうしたらいいのか分からず、お礼を言ってしまいます。
「じゃあ行きましょう、森里」
「よ、よろしくお願いします。優香さん」
私達は来た道を戻り、神山君達が練習している場所へと戻ってきました。
すると、神山君が地面に横たわっています。私は魔法の練習をしてても全く疲れを感じないんですが、普通は練習すると疲れるものなんでしょうか?神山君はいつも疲れている気がします。
「あ、二人ともお帰りー」
「た、ただいま戻りました。あの、どうしてこんなことになってるんですか?」
「雛井……もう帰ってきたのか?はぁ……もう終わりかでいいか」
「そうね、感覚は掴んできてるみたいだし、最初その状態を維持して――そうね、今の潜在魔力なら二時間は持つでしょうね」
「マジか……二時間しか持たないのか……マジで魔法舐めてた……。こんなに辛いなら魔法とか使えなくていいんだけど……」
地面に寝転がったまま満身創痍の神山君が言いました。
「は?何言ってるのよ。ここまでやったんだからもう後戻りできないわよ?異世界から来た力をしっかり見せなないよ」
「異世界から来たとか言われてもな……そんなのしらねぇよ……」
ぐったりしながら神山君はそう言います。
「雛井さんお帰りなさい。以外に早かったわね。その……クエストの方は大丈夫だった?」
「は、はい。なんとか終わりました」
「あーそれもあるんだけど、二人きりだったでしょ?それで何か問題とかなかったのかなって?何にもなかったならそれでいいんだけど」
「たくさんお話はしましたけど、特に何もなかったですね?優香さん」
「そうね、特に何もなかったわね。森里」
「「!?」」
そう言うとなぜか生徒会長さんと美穂さんが驚きの表情をしています。何か私がおかしなことを言ってしまったんでしょうか?
「おおおおお、お姉さま一体ど、どうしたんですか?なな、なんで優香のこと名前で呼び始めたんですか?」
「そ、そうよ!あ、あんた達どんだけ仲良くなってるのよ!おかしいでしょ!絶対に何かあったでしょ!!何もなかったわけないでしょ!」
どうやら二人は私が優香さんのことを名前で呼んでたことに驚いているみたいです。
「お二人とも、お、落ち着いて下さい。そ、その、実はい、色々なことがあってですね――」
「いや、雛井。自分が一番落ち着けよ」
私が説明しようすると神山君にそう言われてしまいます。
「雛井さんこの話は二人だけの秘密にしましょ?」
「ですが――」
「親友でしょ?森里」
「……殺す」
神奈月さんが笑顔で私にそう言うと同時に美穂さんが物騒なことを言い始めてしまいます。
「どどど、どうしてそうなってしまうんですか?みなさん仲良くしましょうよ」
「お姉さまどいて!そんなやつに慈悲はない」
「わ、分かりました。これが本気じゃない喧嘩ってことですか?」
そうです。そうに違いありません。最近、ようやく冗談が分かるようになってきました。
「私は本気です!森里お姉さまをたぶらかした罪。たとえ優香だろうと償ってもらいます」
冗談はまだ私には早かったようです。
「こ、神山君。助けてください~」
「せめて、あと二時間くらい休ませてくれ……」
こうして私達の初めてのクエストは終わりを告げました。




