異世界
「二人ともどうしたんですか?」
私達はみんなより少し遅れて部屋に戻る。
「森里お姉さま気にしないでください。ちょっとあっちで話してただけですよ」
美穂は元気にそう言いながら雛井さんに抱きつく。相変わらずのスキンシップ。見てるこっちが恥ずかしくなってくる。私もいつか人前で直也に抱きついてみたい。恥ずかしがる直也を想像するとついにやけてしまう。
「うーやめてくださいー」
雛井さんは抱きつかれながもどこか嬉しそうにそう言った。
「時間もないし早速始めましょうか」
そろそろギルド貢献度を稼がないといけない。私と優香がいるといってもさすがに時間やクエストに限りがある。出来れば来週中にはもうクエストをやっていかないといけない。
「次は――」
「ちょっといいか?時間がないってどういう意味だ?なんか予定でもあるのか?適当にクエストやってくのがギルドじゃないのか?」
神山君は何を言ってるのだろう。せっかくギルドを作ったのにギルド対抗戦に出る気はないのか?神山君は初心者っぽいし、もしかしたらそういうつもりなのかもしれない。一人でも出たくない人がいたら無理にはでるつもりなかったけど……。
「楽しみながらギルド対抗戦とかどうかなって思ってたんだけど……この中で誰かギルド対抗戦出たくない人ってる?それなら無理にとは言わないけど……。私としてはいい思い出になったらいいな程度なんだけど……」
もしかしてギルド対抗戦に出たいのって私だけ?確かにこのギルドは自己主張の弱い人が多い。特に雛井さんだ。彼女にもし反対されたらどうしよう。また上手く言いくるめるか?でも、やりたくないことを無理にやらせるのは……。
「こ、このメンバーでギルド対抗戦にでるんですか?」
雛井さんは少し驚きながらそう言う。やっぱり嫌だったのだろうか?
「私はそのつもりだったけど、雛井さんは嫌?」
「――――わ、私も出れるなら出たいです」
雛井さんは少し迷いながらもそう言った。意外な反応だ。引っ込み思案の雛井さんが自分から出たいって言うなんて思ってもなかった。
「あれってそんな簡単にでれるものなんですか?俺達六人しかいないけど……クラスのやつが対抗戦に出たいなら大きいギルドに入らないと出れないって言ってたんですけど……」
ギルド対抗戦に出るにはギルド貢献度がトップ十六に入らないといけない。去年はそうだったがギルド対抗戦に出れるギルドはほとんど大人数のギルドだ。一部を除いてだけど――。
この人数では無理だと思うのが普通だろう。でも――
「私達ならいけるわ。二人もそう思うでしょ?」
私は自信ありげにそう言った。勿論、このメンバーで出れる自信はある。優勝だって狙える。いや、優勝しかありえない。
「そうね、いけると思うわ」
「私はお姉さまが参加したいって言うなら全力でサポートします。私が居れば余裕ですよ。なんでも私に言ってください!」
五人がおっけーしてくれる。後は――全員の視線が最後の一人神山君に視線を向ける。
「あー……ギルド対抗戦って何だ?そういや、クラスの奴もそんなこと言ってた気がするな。適当に相槌打って話聞いてたからよくわからないんだけど」
バツが悪そうに神山君が言った。
予想外すぎる答えだ。ふざけて言ってるようには見えない。一番常識のある人だと思ってたけど神山君も雛井さんや直也と同じで一般常識がないってこと?どうもそうは見えない。何なんだろう、この違和感。
「ギルド対抗戦を知らないの?ギルド対抗戦って言うのはこの学校で行われる恒例行事の一つよ。一回くらい見たことあるでしょ?貢献度システムがあって、トップ十六までのギルドが参加できるやつよ。それで――」
全員がポカーンとした顔で私の見ている。あれ?え?何?私何かおかしいこと言ってた?
「なに?私変なこと言ってた?急に黙ってどうしたのよ」
「待って、さよ。前に私が話した時、話聞いてた?」
「は?前?何の話よ?この流れ的にその話は多分聞いてないと思うけど、そんなに大事な話なの?」
優香はそんな大切なことを私に話していたのか?全く覚えていない。
「まあ仕方ないか。あの時は疲れてたし――」
「あの時?あの時っていつよ?」
「――その、俺は魔法のない別の世界から来たんだ」
神山君が突拍子もないことを言い出す。一瞬で頭が真っ白になる。落ち着け私……。
「ふぅー」
私はゆっくり深呼吸して落ち着く。
――――魔法のない世界??こことは別の世界??
「はあ?ねえ、みんなその話を知ってたわけ?そもそもみんなそんな話信じたの?そんなことあるわけ――」
あれ?なんだろうこの感じは。これって前にどこかで…………ああそうだ。あれはまだ私が小さいころのことだ。
まだ私が小学生になる前、私はいろんなことに挑戦していた。誰でも小さい頃は何でも知りたがる。私は私は他人よりも人一倍それが強かった。疑問に思ったら何でも近くの大人に聞きまくっていた。そして、その時唯一分からなかったことが一つだけある。
動物と幻獣の違いが私にはわからなかった。そして、私は小さい頃に大人に聞いたことがある。
「ねぇ、なんで幻獣はなんで幻獣なの?普通の動物と何が違うの?」
だが大人からは同じような曖昧な答えしか返ってこない。
「幻獣は数が少ないからじゃないの?」
「珍しいからだと思ってた」
私はその時思った。
――――そんなわけない。
私以外にも絶対に気が付いてる人はいる。
数が多い?数が多い幻獣だって普通にいる。
珍しい?珍しい普通の動物だって普通にいる。
幻獣、つまり幻と言うこと――実際は存在しないもの。だがこの世界には幻がいくつも存在している。
それはなぜか?ここで仮定が生まれた。私は別の世界が存在すると考えた。別の世界では存在しない幻。普通ならありえないこと、それが起きるのが私達の住んでいる世界。私の世界は幻だ――そして幻だからこそ幻獣と言われる幻の動物が存在する。それが私のたどり着いた答えだ。バカげてる答えだ。
そのころからだろうか、私が世界がおかしいことに気が付いたのは、そして、人生観が変わったのは。




