下校
三人と別れ俺と直也で長い廊下を歩く。他の生徒達も下校し始めている。他のギルドのやつら一体どんな活動をやっているのだろう。クエストとかやってたりするのだろうか?
「つかさはこれからどうする?」
「俺か?雛井と一緒に帰るつもりだけど――それがどうかしたのか?」
「気になってたんだけど二人って付き合ってるの?」
「は!?な、何言ってるんだよ。そんなことあるわけないだろ!」
いきなり変なことを言われて少し動揺してしまう。俺と雛井が付き合うって……確かに可愛いと思うけど。
「そうなのかー、仲が良かったからってきり付き合ってるのかと思ってたよ」
「別にあいつはそんなんじゃないぞ。それに今は記憶もないしな」
「そ、そのごめん。ちょっと無神経だった……」
「気にしなくていいぞ。記憶がないって言っても人との記憶だけだからな」
「全然気にするよ!人と人との繋がりは大切だよ!好きな人のことを忘れるなんて耐えられない!」
人と人との繋がりか……。俺は元の世界にいた時、親友とはどんな関係だったのだろうか?親友は俺のことをどう思っていたのだろうか?
「そうか?忘れてみたら案外そうでもないぞ?忘れてるから言えることだけどな」
「つかさは友達とかたくさんいそうだし……。何にもできることないけどもしなんかできることがあったら言ってよ!!俺のつかさのためならなんでするから」
本当にいいやつだなこいつ。でも、そのセリフは俺じゃなくて生徒会長にでもいってやればいいのに……。
夕日で赤く染まりきった長い廊下を歩きようやく下駄箱までたどり着く。やっぱり他人の目が気になる。転校生初日からクラスで騒ぎを起こしてるし、一体俺は学校中ではどのような噂になってるのだろうか?気になる。下手したら雛井よりも有名になってるんじゃないのか?
すると、直也はなぜか自分の下駄箱を見て固まっていた。一体どうしたのだ?
「どうしたんだ?なんかあったか?」
「い、いやなんでもないよ。ごめん、ちょっと用事を思い出したから俺急いで帰るね。誘ったのにごめん」
一体どうしたんだろう?あきらかに動揺してるように見える。ここは聞いてみたほうがいいのか?ここで聞くのは無神経だろうか?
うーん、俺も雛井までとはいかないがやっぱり人間関係は苦手だ。
「ああ、気にしなくていいぞ。俺はここで雛井を待ってから帰るわ」
「うん、それじゃあまた明日!」
「おう、また明日な」
そういいながら直也は慌てるように走って行った。ま、機会があったら聞いてみるか。人には聞かれたくないこともあるだろうし。
「うわぁ!」
下駄箱付近で雛井を待っていると、いきなり後ろから声をかけられのけぞってしまう。
「あははははは、やばい。今のめっちゃ面白かった。あっはっはっは!」
「なんだよ……お前らか」
ケルベロスと出会って以来、後ろからいきなり話しかけられるとつい反応してしまう。そんな俺に対して美穂は腹を抱えながら爆笑している。
「美穂さん!だから言ったじゃないですか。そんなことしたら驚いてしまうって」
「いいのいいの。気にしないで。これは私のスタイルだから」
こいつを見ていると直也と双子だなんてとても思えない。
「はあ~お前は直也と違ってやることが子供だな」
「いやあ~それほどでもあるかな」
「いや!褒めてないからな!」
「ナイスツッコミ!」
親指を上げながらそう言ってくる。ほんとにあの直也と双子の兄弟とは思えない。
「そういえば、時葉君と一緒に帰るって言ってませんでしたか?」
「そうなんだけど、あいついきなり用事思い出したって言って急いで帰ってったんだよ」
「……?なんか用事あったっけな?」
美穂は腕を組みながらうーんと考え込んでいる。こいつも心当たりないのか。やっぱりさっき下駄箱で何かあったのだろうか?
「ってことで俺も一緒に帰ってもいいか?」
言ってから気が付く。女子三人と一緒に帰るのか。なんか恥ずかしいな。雛井と二人っきりの時はなんとも思わないんだけどな。
「悪いけど私はこの後、さよのことがあるから早く家に帰るわ」
「うーん、私も森里お姉さまと久々に一緒に帰りたいんだけどな……。直也の様子が気になるから先に帰るわ。はぁ~どんだけ姉に心配かける弟なんだか…………」
なんだかんだ言ってもこいつも直也のこと心配してるんだな。これが姉弟ってやつか。
「ってかあんた二人っきりだからって森里お姉さまに変なことしたらただじゃおかないからね!」
俺に指をさしながら言ってくる。こいつは俺のことなんだと思ってるんだ?
「お前じゃないんだからそんなことしないぞ」
「へえー、それならいいけどね。ベッーだ!!」
「それじゃ時葉さん。行きましょ。二人ともさよなら」
「じゃあな」
「お二人ともさようならです」
「くっそー!なんで私の家は森里お姉さまと反対方向なんだろ……引っ越そうかな……」
そんなことを言いながら俺らとは反対の方向に歩いていく。
あいつらは俺達とは反対方向なのか。学校には二つの校門があるらしく二人はそっちから帰るので俺達とはここで別れることになった。時葉妹さっき一緒に帰るとか言ってなかったか?どうやって帰るつもりだったんだろう?
――そして二人が見えなくなり俺達は二人きりになる。
「じゃあ私達も帰りましょうか」
「そうだな、帰るか」
そう言って俺たちも歩き出す。気が付けばあたりは暗くなり始めている。
「生徒会長さんもギルドに入ってくれると嬉しいですね」
「そうだな、生徒会長ってくらいだから強そうだしな」
「それに頭もいいですし……、それに比べて私は…………」
「ん?なんか言ったか?」
最後のほうは声が小さくてうまく聞き取れなかった。
「いえ、何でもないです。それじゃ早く帰ってご飯にしましょ。神山君の作るご飯はとってもおいしいので毎日ご飯の時間がとっても楽しみです」
そのセリフはどう見ても同居してるやつのセリフにしか聞こえない……。実際同居してるんだが……。
「頼むからそのセリフは時葉姉の前では言わないでくれよ……」
どうせそのうち二人で暮らしてるのもばれるしいいか……。そうなったらいろいろ大変そうだな。
「どうしてですか?」
「いや、気にするな」
「とりあえず、またあのスーパーみたいなコンビニに行くか。悪いけど、また金使ってもいいか?」
「はい、作ってもらってるんですからそれくらい大丈夫ですよ」
そういえば、さっきはこいつらが来てあやふやになったが、結局直也のやつはどうなったんだろ……。俺はやっぱりあの時に聞いとけばよかったと少し後悔する。




