魔法学校の生徒8
「これはここだけの話にしておいて。さよは昔家族といろいろあって人間不信なの。命をかけて守ってくれた人が目の前で殺されたの…………。皮肉にも大切の人を殺したのはさよ自身の親だったわ。それ以来人を信用するのはやめたの……」
そうだったのか……。それであんな態度をとったのか。生徒会長にそんな理由があったなんて――――人の死。今の俺ならわかる。人の死がどれほど辛いか。少しの俺には人の死なんて無関係だと思っていたかもしれなかったが今は違う。出会ったばっかりの雛井が死にそうな時に俺は必死になっていた。まだ出会ってそう時間が経っていない雛井ですらそう感じたんだ。身近な人の死……。それは今の俺にはどれくらい辛いのかよくわからない。だが、それがとてつもなく辛いものだというのはよくわかる。
「そ、そんな大事な話を私達にしてしまっても大丈夫なんですか?」
雛井が震える声で言った。
「俺、なんてこと言っちゃったんだろ……先輩の気持ちも全然しらないで…………」
直也からしたら相当ショックだろう。好きな相手のトラウマを思い出させるってのは……。
「同情なんてしなくていいよ。そんなことされてもさよは喜ばないから。あの子は学校だとずっと愛想笑いで人と親しくなるのを避けてるの。人と親しくなってそれを失った時に悲しみたくない。本人はそれを強がって認めないけどね。だからさよにはあなた達みたいな人が必要だと思ったのだけど――」
神奈月は気まずそうに直也を見ながら話を続ける。
「はっきり言って今のは少しまずかった。さよはツンデレだからああいいながらも私が入りたいって言い続けてれば多分ギルドには入っていたと思うの。なんだかんだいっても私のこと心配してくれてるし」
あれでギルドに入ってくれていたのか!?どうもそうは思えないけど……。でもこいつが言うならそうなんだろう。
「さっきのあの怒り方は相当怒ってた。さっきのさよの魔法みたわよね?あの子の固有魔法――自分の髪型を一瞬で変える魔法よ」
やっぱりあれ魔法だったのか。冷静に考えてみると人が魔法を使ってるのを見るのって初めてじゃないか?髪型を変える魔法って……凄いのかいまいちわからん。てか見た感じだとあれくらい普通に手とかで出来そうな気がする。
「学校では愛想よくするためにメガネをかけて髪の毛とおろしてるの。本人が言うにはそのほうが愛想よくできるって言ってた。メガネもつけてると頭良さそうにみえるからってだけで普段はつけていないわ。まあ、さよはちょっと痛い子なのよ」
なんで外見まで変える必要があるんだ?別に性格を隠すだけなら別に必要ないと思うけど。男の俺には理解できないことなのだろうか?
「つまり、生徒会長は見た目も変えるぶりっ子ってこと?」
「ふふ、そうね。わざわざあの魔法を学校の中で使ったってことは、きっとあれはさよの本心――」
「あの……生徒会長さんは大丈夫なんでしょうか?」
「さよのことは少しそっとしておいてあげて。わたしがいろいろ説得してみる。それとさよのことを嫌いにはならないであげて。あの子もこのままじゃだめだって自分でわかってるはずなの。不器用な子だけどこれからも仲良くしてあげてほしいの。おねがい……」
神奈月が頭を下げて頼む。
「もちろん!俺は今の話を聞いていっそ先輩のこと好きになったよ。さっきは振られたけど俺まだ先輩のことあきらめてないから」
さっきまでもの凄く落ち込んでいたはずの直也が元気よく言う。さすがが直也。あんな振られ方をしたのにまだ生徒会長ことが好きだなんて……。なんだかんだ言っても直也には幸せになってもらいたい。
「ま、私もそんな事情があるなら生徒会長次第だけど仲良くしてあげてもいいかな……」
喧嘩腰だった美穂も少し照れながらそう言う。こいつも生徒会長に負けじと素直な性格じゃない気がする。
「わ、私も全然気にしてないです。生徒会長には教室でもお世話になりましたし仲良くなりたいです」
雛井も特に問題なさそうだ。これで残る問題は生徒会長次第か。
「俺も特に問題ないぞ。それに生徒会長には聞きたいこともあるし……」
雛井やつかさの話を聞く限り生徒会長はこの学校で超がつくほど天才らしい。もしかしたら俺の世界について知ってるかもしれない。校長でも知らないって言ってたし、あんまり期待はできないけど。
「話したいこと?」
「ああ、えっと、この学校のことをいろいろとな……」
危なかった。できればこの話しはここで話したくはない。もっと親しくなってから……。
校長の言葉を思い出す。信用できる人になら教えても問題ないって言っていた。別にこの三人が信用できないわけじゃない。でも……まだ話していいかって言われると少し不安になってしまう。
「そう。なら私も一つ気になったことがあるので聞いてもいい?」
「ああ、何でも聞いてくれ」
「その不思議に思っていたのだけど、神山君は魔法初心者?普通は中学の時に魔法ができる人はクラスが分けられて少しくらいは魔法に触れる機会があると思うの。でも、私から見たら魔法を使ったことあるようにすら見えないの。ごめんなさい、聞きづらい質問をして」
このありえないタイミング――――ここでこの質問か。なんで気づかれたんだ?
どう答えればいいか迷ってしまう。どう答えても記憶喪失のことや別の世界のことを話さないといけなくなる。
「えっと、それは――」
全員が俺に注目する。適当に誤魔化すか?いや、こいつらとは仲良くなりたいし嘘はつきたくない。でも――
「そ、その神山君は記憶喪失なんです。それで魔法のことや自分のことをあんまり覚えてないんです。その……今まで黙っててごめんなさい」
考えをまとめられずにいると雛井が先に答えてくれる。確かにその言い方なら嘘もついてないし納得させれそうな理由だ。普段は頼りないがやっぱりこいう時はしっかりしている。
「それに神山君は別の世界から来たんですよ」
「おい!!ちょっと待ってよ!!今の流れ的にまだこの話はする場面じゃないだろ!!」
「ひい、ご、ごめんなさい」
一瞬だけ見直した俺がバカだった――――そうだ。こいつに嘘や隠し事ができるわけなかった。
雛井の言葉を聞き唖然とする三人。まあ当然の反応だろう。いきなり目の前の人が別の世界から来ました!なんていって信じれるわけがない。少なくとも俺は信じない。
「つかさ!ごめん」
直也はいきなり頭を下げだし俺に対して謝ってくる。
「記憶がないのに教室でいろいろ聞いてちゃって――今思ってみれば俺の質問にかなり困ってる感じだったのに……。ってきり緊張してるだけかと思って……」
ただめんどくさくて適当に答えてただけだなんて今更言いだせない。
「い、いや気にするな。そりゃあ、知らなかったわけだし別にお前は全然悪くないぞ」
「なんか困ったことがあったらいつでも相談してね。俺力になるから!」
こいついいやつすぎるだろ……。最初であった時に第一印象で判断した俺が恥ずかしくなってくる。
別の世界の話よりも俺のことを心配してくれるなんて……。生徒会長はなんでこいつの告白を断ったんだ?こいつの性格を知ってたら絶対オッケーしてただろ……。
「へぇ~そうなんだ。で?それを理由に森里お姉さまの近づいたってことね。あんた記憶を戻す方法とか言って森里お姉さまに優しさを利用して変なことしてないでしょうね?」
「そんなことするわけないだろ!!」
こいつもこいつで俺にはまったく興味ないらしいな。別に興味もってくれなくてもいいんだけど。
「美穂さん、変なことって?」
雛井はどういう意味か理解できておらず首を傾げている。
「森里お姉さまが汚すんじゃないわよ!」
「は?お前が最初に言い出したんだろ!」
「ねえ、ちょっといい?今の別の世界から来たって話はほんとなの?」
そう、この反応が普通なのだろう。この中だと神奈月が一番まともな気がする。他のやつがまともじゃないだけか……。
「ああ、校長に聞いたし間違いないと思う。それに記憶喪失も魔法のせいらしい。俺は魔法使いが存在しない世界から来たんだ。さっき生徒会長に聞きたいって言ったのはこのことなんだ」
「そう――魔力があるのに魔法が使えないのも納得ね。私はその辺の話はまったく興味ないからさよがギルドに来たら話してあげて。さよはそう言う話好きそうだから」
「お前も興味ないのかよ!!」
なんだろう、この気持ちは……。心配しすぎていた自分が恥ずかしくなってくる。
「それと今の話は絶対このギルドのメンバー以外の人には話さないで。これは約束よ」
「ああ、校長にも同じようなこと言われたよ。俺の現状ってそんなにやばいのか?」
「さあ、よくわかんないけど多分さよならそう言ってたと思うから」
「そうか」
生徒会長か……今日の感じだとこの話を相談できるのは相当時間かかりそうだな。
まあ、こっちには生徒会長と仲が親しい神奈月がいるし何とかなるだろう。
「さよのことは私に任せといて。頑張ってみる」
「神奈月さん!絶対に先輩のことお願いします」
「ねえ、時葉君?さっきさよが言ってたこと覚えてる?命をかけて守れるって言葉。あなたはさよのこと命を守れる覚悟はある?」
「あります!さっきはいきなりだったから少し戸惑ったけど今ならはっきり言えます!どんなことがあっても先輩を絶対に守ります」
直也は聞いてて恥ずかしいセリフを真剣な表情で言う。さすが直也だ。
「そう、あなたならさよを任せられそうね。これからさよのことよろしくね。って言っても命をかけて守るなんてことなかなかないと思うけど」
「さすが私の弟ね。あの生徒会長はちょろそうだしね。十年経っても無理とか言ってたけど案外一ヶ月もしない間に直也に惚れてそうね」
「ふふふ、そうね。私もさよは時葉君のこと好きになると思うわ。小さい頃から一緒だった私が言うんだから間違いないわ。ってもうこんな時間ね。そろそろ帰りましょ」
外を見ると太陽が沈み始め空が真っ赤に染まっていた。そもそもあれはほんとに太陽なのだろうか?もしそうならここは俺の元いた世界ですぐに帰れたり……ってそんなわけないか。俺はすぐに考えをやめる。
「あ、私先生に呼ばれていたのでちょっと職員室に行ってきます」
思い出したように雛井が言った。
「森里お姉さまが行くなら私も付いていきます!」
「私も二人に話があるから一緒に行っていい?」
「はい、大丈夫ですよ。えっと、神山君達はどうしますか?」
「俺らは――」
「俺達も男同士で話があるから先に帰るね」
唐突に直也が訳が分からないことを言い出した。別に一緒に帰るのが嫌なわけじゃないけど……。どうしたんだろう?




