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最近の若者は苦労を知らないそうで  作者: 木介


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7/8

事前準備

「今夜侵入するわ」


善子はしきにそう告げた。


「今夜だって!? 流石にそれは早すぎる。もう少し準備をして…」


その言葉を遮り善子は続ける。


「それじゃあ遅いわよ、もう既にみんな動き出してる」


「何でそんなことがわかるんだ」


しきは当然の疑問をぶつけてきた。


「何でって…、女の感?」


「はぁ!?」


「それじゃあできるだけ情報を集めてね」


一方的に告げて電話を切った。

乃亜の言葉を鵜呑みにした訳ではないが全てが嘘とも思えない。

少なくとも最後に言っていた「明日では遅い」という言葉は真実であると直感していた。

今夜事態は大きく動き出すのだ。


ーーー

ここの施設は全てカードキーで制御されている。

無くしたと分かればそのカードキーは失効され意味を無くしてしまう。

急遽決めた侵入であるが為、偽物を作る時間は無く、現状選べる手段としては今日非番の研究員から盗むか、帰宅する研究員から盗むかの二択しかない。

そして非番の人から盗むのも時間が足りない。選べる選択は一択である。


それに問題はもう一つ。

よくスパイ映画などで見る本人に成りすまして警備の目を掻い潜るという手段だが、ここの施設では困難だ。

入る際の持ち物検査、ボディチェック、それに血液検査をする徹底ぶりだ。

本人確認とアルコールが検出されないかの確認らしいが、これがあるいじょう本人で無い事はすぐにバレるであろう。


ではどうするのか?

恐らくスパイ達は皆同じ答えに辿りついたと思う警備に紛れればいいと。

決行するのは夜中、それに運良く今夜の天気は荒れるらしい。

だから私は時間になったらSBK本部にメールを送るようしきへ伝えておいた。


『今夜、薬を盗みにいきます』


これだけで場所は検討がつき、警備強化の為、多くの人材を派遣するであろう。

業界を裏切った会社だ、他の力は借りずに自分達で解決する。そんなプライドを刺激するのだ。


19時、研究員達がある程度退勤した時間、メールが送られ現場が慌ただしくなり始めていた頃、善子は一人の男性研究員をつけていた。


青山晴男あおやまはるお】、彼はきっちりした性格で何時に何をしてというタイムスケジュールも決まっており、背負っているリュックのどこに何を入れているのかも決まっている為、盗みを働きやすい。

そんな彼は最近決まってコンビニ弁当を買って帰る。

これは現在やっているアニメのコラボキャンペーンで貰えるキーホルダーをコンプリートする為であった。

そして今日は推しのキャラクターが当たり上機嫌だ。


そして彼をターゲットに選んだ最大の理由は…。

「あれ? 青山晴男さんですよね?」

善子は笑顔で近付いていった。


「えっ? えっ?」


「私ですよ私、峰岸晴香みねぎしはるかです」

「同じ晴がつくから覚えてました…。先輩も私の事覚えてますよね…?」


少し上目遣いで善子は訪ねる。


「えっ、あぁ、覚えてるよ」


後ろめたさがあるのか目を反らして返事する。


「本当ですかぁ~、というか先輩の持ってるそれって…」


自分の持っているキーホルダーを善子に見られるのは恥ずかしいといわんばかりの気持ちで「いや、これは何かおまけで付いてきちゃって」ともごもご言葉を発している。


「このアニメ私も好きなんですよ!」


「えっ! そうなの!」


「面白いですよね! 特に好きなキャラクターは…」とこのアニメに関して話を広げていく。


晴男はこのアニメの話で盛り上がれる友人などおらず、ましては女の子に理解されるとは微塵も思ってなかった。

初めての理解者に自分の知識や想いを語り始めていた時。


「あの、ごめんなさい、私もう帰らないと…」


突然、話を遮られ失敗したと晴男は感じた。

分かりやすく肩を落とす晴男に善子は

「また、今度話しましょうよ…、そうだ!」

とケータイに付けていたある物を差し出す。


「先輩はもう持ってるかも知れないですけど、今回のコラボイベントで当たった私の推しのキーホルダーです!」


晴男はそれがどうしたんだろうという不思議な顔で見つめている。


「先輩が今日当てたキーホルダーと交換しません?」


「えっ、いやこれは…」


「で、お互いの持ち物に付けるんです。先輩はリュックに私は鞄に付けて…、これでまたお互いが会えるような気がしませんか?」


「会えるようなって、そんな面倒な事しなくても」


晴男は続きが言えなかった。

「連絡先を交換しよう」

その言葉が出ないのだ。


「じゃあ私のやつだけ付けて下さい!」


そう言って善子は後ろへ回り込み晴男のリュックにキーホルダーを付ける。


「いいの? 君の推しキャラなんでしょ?」


「いいんです、だってそのキャラクターは先輩に似ているから好きなんですから」


「えっ…」


「私が先輩の名前を覚えていたのも偶然なんかじゃ無いんですよ…」


「えっ…えっ…」


「もう帰らないと、先輩、覚えていたらそれ返して下さいね」


そう言って善子は走って消えた。

晴男はその後ろ姿へ向かって「必ず返すから」と人生で一番大きな声をあげるのだった。


青山晴男28歳、彼女いない歴28年。

彼がターゲットに選ばれた理由それは…。

その性格とは裏腹に頭の中はお花畑であるからであった。

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