表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最近の若者は苦労を知らないそうで  作者: 木介


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/7

研究所に集まるのは

機密事項のデータは浅川所長が持っている。

この事実が判明し事態は大きく動き出す予感が善子にはあった。


では次の問題【その薬は何処にあるのか?】という事である。


現物とデータ両方盗んで依頼は完了する。

今回の会議でスパイ達はそのように考えたであろう、善子も例外ではない。

そしてその物の場所は初めから分かっていた。

この会社が所持している研究所、そこに保管されている。


ここで厄介なのが配置している警備会社【スパイ防止警備保障】通称【SBK】である。

GSグローバルスパイの人が立ち上げた会社で多くの元スパイが所属をしている。

スパイ産業が盛んになった現在特有の会社だ。


こちらの手口を知り尽くして阻んでくるこの会社は業界における裏切り者の集まりである。


だがその警備は厳重で知らない人物は勿論の事。

例え所長のお客様でも事前に連絡がない人物や事前の連絡があっても身元がはっきりしない人物は入れないという徹底ぶりである。


となれば例えプロジェクトに参加している社員でも潜入は難しい。

スパイ達は全員侵入するという手段しかないのだ。

そんな事を考えていると不意に声をかけられた。


善子・・さん、相談があるんだけどお昼ごはんでも一緒にどう?」


そうわざとらしい笑顔で近付いてきたのは総務部の朝日乃亜であった。


「そんな恐い顔しないで、明日で良いとか思ってるかも知れないけど、それじゃあ遅いわよ」


他人が聞いたら突然訳分からない事を言っていると思うだろう。

だがこの乃亜という女は人が理解できない範囲にある超能力を持っている。

会議が終わって私が今考えていた、今日調査して現物は明日盗もうという私しか知り得ない事を言い当ててきたのだ。


「…分かったわ、お店は決まってるの?」


「もちろん!」と言って乃亜が先導するように歩き始める。

そして着いたのは会社近くのランチが美味しくて安いというお洒落なカフェだ。


「色々と調査した結果、やっぱりここが美味しくて値段もリーズナブルなのよ! おすすめはね…」


何やら楽しそうに語る彼女を見て、この子は一体何しに会社へ潜入したんだろうと同業者である事を忘れてしまう程、のんびりとした雰囲気であった。


善子は乃亜に勧められるまま注文をして、料理の到着を待つ。


「じゃあ、早速本題に入りましょうか」

そう言って手を叩き「私と手を組まない?」とまたしても突拍子の無い事を言ってきた。


「あんたと? なんで?」


「そうじゃないとお互いに損する事になっちゃうから」


まるで何を言っているのか理解出来ないという風に善子は黙った。


「あなたが知ってるとおり、私には未来が見えるのよ」


こちらだけに聞こえるような小さな声で言ってきた。

何かしらの超能力をもっている奇妙な組織のスパイである事は知っていたが、未来が見えるとは驚きだ。

驚きのあまり善子は「へぇー、すごいじゃない」と棒読みのリアクションをした。


「信じてないでしょ」


乃亜は不満そうな顔で応える。

当然、善子は信じていない。手紙から自分の所に辿り着いた点を見ると何かしらの能力、若しくは技術があるのかも知れないとは思うが、わざわざこちらにそれを教える理由が無い。真実は別にあると考えるのが普通である。


「じゃあ、信じる信じないの話は一旦置いておいて話を進めるわ」

「明日、あなたが仕事に取り掛かった時には既に他の人の手柄になってるわよ」


仕事というのは盗みに入る事を差しているのだろう。

では既に他の人の手柄になっているという事は…。


「今夜、残業する人がいるって事かしら?」


「そうゆうこと」


「なんでそんな事…」と言いかけたが、やめる事にする。それに対してどう返事がくるのか分かりきっているからだ。


「それが何で手を組むことになるのよ?」


「見てのとおり、私は残業出来ないの」

「で、やってくれそうなひかりちゃんにお願いしようと思って」


他人が聞いたらただ面倒くさい仕事を押し付けているようにしか聞こえない。

何故なら善子自身もこの子は何を言ってるんだろうと理解に苦しんでいた。


「お願いするって、手柄は私のものになるけどいいの?」


「えっ? いやいや、手柄は二人で分けあいましょ」


「私が残業するのに手柄は二人で分けあう? 意味が分からないわ」


「どこが分からないの?」


自分で言っていてこの子は何処が変なのか理解出来ていないのか、それともわざと馬鹿なふりをしているのか、直感ではあるが恐らく前者である。


善子が黙っていると彼女の口から何処が理解出来ないのかと自らの考えを説明しだした。


「仕事の手段に関しては私が教えてあげるから残業してくれるって事よ?」


「手段って?」


「手段って失敗しない方法よ! だって私には未来が見えるんだから」


この言葉に善子は合点がいった。

超能力ありきで話している彼女と信じていない私、それでは話が噛み合う訳がないのだ。


まとめると彼女が言っているのは恐らく、超能力で侵入方法を教えるから物を盗んできて欲しい。

分けあうと言っているいじょうその場に複数あるのか、コピーする方法でもあるのか、どちらにしろ常人には理解しがたいやり方ありきの交渉である。


ここで善子はふと思い付いた。


「未来が見えるなら私と組む必要ないじゃない」


ごもっともなこの意見に乃亜は困ったように話す。


「私、自分の未来は見えないのよね」

「あなたみたいにプレゼントくれれば繋がりが出来てその人の未来が見えるんだけど…」


プレゼントとは以前部屋に置いた手紙の事だろう。皮肉を効かせて面倒くさい女だ。


そこへ注文していたランチセットが届く。

乃亜は「美味しそう」などと声をあげて本当のOLにしか見えない。

善子も食べようと手を伸ばした時「組む組まないは別にしても」と乃亜が真剣な顔つきでこちらを見て話す。


「明日じゃ遅いわ、今夜じゃなきゃダメ」


自称未来が見える女からの忠告であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ