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最近の若者は苦労を知らないそうで  作者: 木介


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特効薬争奪戦6

        ーー鏡操ーー

爆発。この凄まじい事実で本部は騒然としている。

壱が叫んだ「隊長! 突入部隊は既に準備出来てるな、俺は現場で指揮をとる、ここは任せた」


「承知しました、お気をつけて」


訓練された彼らは指揮官が代わっても乱れる事なく、淡々と仕事をこなしていく。

そんな様子を操は遠くから眺めていた。


「あなたは何もしないの?」


そんな彼の隣に来て声をかけたのは操が一番会いたくない人物であった。


「朝日乃亜…」


彼女は松葉杖をつきながら、頭に包帯を巻き顔はガーゼで左側が殆ど隠れている。


痛々しい彼女の姿を見て、操がまず発した言葉は「謝らないからな」という自分本位の言葉であった。


乃亜は「別に気にしてない」と応える。

事実彼女は操がやった事を気になどしておらず、この世界で生きているいじょう、いつ死が訪れても仕方のない事だというのを薬漬けの彼女は日々実感しているのだ。

そんな事など露しらず操はバツが悪そうに目を合わせない。


「で、あなたは何もしないの?」


「…」


「鉄人を操ってた経験があるなら何か出来るんじゃない?」


「はっ! 腕がこれじゃあな」


自らの折れた左腕を少し上げて乾いた笑いで応えた。


「そう、彼女ならどうしたんだろう…」


「そりゃ、何かしようとしたんじゃないのか? 精神論が好きな奴だからな」


(根性無いわね)


みっともなく泣きながら地面で丸くなっていた時、善子に言われた言葉を思い出す。


(何であの時の事を思い出すんだ…もう俺には関係ないだろ)


「恐いの?」


操は乃亜に言われて初めて自分の震えを実感した。そしてこの感情は恐怖では無い事にも気付く。


「いや、違う。何でだろうな、ただ悔しいんだ」


そう言って落ち込む操の左腕に突然刺されたような痛みが走った。


「痛ッ!!」


気付いた時に既に遅く、乃亜が注射で何かを打ち込んだ後らしい。


「お前何をした…」自分が痛めつけた相手から注射を打たれたのだ操の顔はみるみる青ざめていく。


「痛かった? 本当に?」


「何言ってるんだお前、俺に何をしたのか聞いてるんだ!」


「もう一度聞くわ、左腕は痛い?」


「はぁ!? 当たり前だろそんな事! 腕が折れて…」


改めて言われると痛みなど感じる事なく、自然と動かせる。


「大丈夫そうね、一時的にだけど動かせる状態にしたわ、ただし骨がくっついた訳じゃ無いから動かせる範囲に限度があるけどね」


「さっきの注射か? 一体どうやって…」


「そんな事より出来る事があるんじゃない?」と操の話を遮り乃亜は言う。


「…」


操は黙って元いた自分の席へ戻り伝えた。


「交代しろ、俺なら何とか出来る」


        ーー善子ーー

彼女の体は悲鳴をあげ走る事などままならない。自らの記憶を頼りに出口へ向かう途中、爆発音が響き渡る。


(愛子やってくれたのね)


これで相手も混乱し弱体化するであろう、ここへ突入されたら一溜りもない。

そんな事を考えながら倉庫へ続く扉を出てカードキーを使った廊下へ戻った。

そこへ待ち構えていたのは自分を挟むようにして左右の廊下奥にいる二体の鉄人、彼らは善子の存在に気付き走ってくる。


この時、善子は死を覚悟した。

かつて潜入した研究所でも敵わないと悟り、避けた相手と挟み撃ちに合っているのだ。


ただ彼女の覚悟とは死を受け入れたという訳では無い。

たとえ死んだとしても悔いの無いように抗うという覚悟である。

二体の鉄人がダンダンダンと大きな足音をたてながら近付いてくる。


そこで善子は気付いた、右から来る方が若干だが速いという事。そして二体の攻撃を上手く合わせる事が出来れば同士討ちが可能であるという事を。

だがそれには善子が引き付けてギリギリで避けなければならない。


「今の体で出来るかは賭けね…」


そう呟きつつ身構える。


右の鉄人の攻撃を合わせる為、少しずつ左へ寄っていく、善子は焦らず待って見極めていく。


ダン! ダン! ダン!


音が大きく体に響き渡る。


「今だ!」


そう声に出し攻撃を避けようと体を動かした…はずだった。

彼女の体は限界を向かえており思うようには動かなかったのだ。


(こんな風に死ぬなんて…)


最後に一矢報いる事が出来ずに死ぬという、自分の意にそぐわない結果を情けなく思いながらも、二体の攻撃から目を背ける事なく諦めはしなかった。


すると右の鉄人は善子を掴み、左の鉄人の攻撃避けさせた。

すかさず善子を掴んだ鉄人はもう一体へ攻撃し破壊している。


何が起きているのか理解できずキョトンとした顔で善子は立ち尽くした。


「よぉ、待たせたな」


そう聞こえるのは善子が付けているインカムからであった。


「鏡? これあんたなの?」


目の前の鉄人を覗き込みながら善子は聞く。


「そうだよ、一体だけハッキングしてやったんだ。ただこの鉄人にはマイクの機能が無くてな、やり取りはこっちを通させてもらう」


かつて苦戦した鉄人が味方になるとこうも頼もしいものかと善子から少し笑みが溢れる。


「頼もしいわね、じゃあ案内もお願い出来るかしら」


「案内に関しては閉鎖や爆破によって構造が変わってる部分があるから俺には出来ない」


「俺には?」


「私なら出来るわ」


インカムを通して聞こえてきたのは同じ部署で働いていた同僚。

未来の見える女の声であった。


「朝日乃亜! 私と手を組んでくれるの?」


かつて彼女が持ち掛けてきたセリフをそのまま伝える。


「私から持ち掛けた話だからね、手を組ませてもらうわ、ひかりちゃん」


善子は操に守られながら、乃亜の指示で出口へ向かう。

かつては敵であった同期ライバルの力を借りながら手に入れた特効薬、この長く続いた戦い、残すは無事に脱出するのみであった。

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