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最近の若者は苦労を知らないそうで  作者: 木介


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グローバルスパイ

ケースを取り戻した善子はしきに次の指示を仰ぐ。


「予定がだいぶ狂ったわ、しきここからどこへ行けばいい?」


「…」


しき? 聞こえる?」


「聞こえてるよ、善子さん」


そこから聞こえてきたのはしきの声では無い。


「平野仁志…何であんたがそこにいるのよ、しきはどうしたの」


「理解出来ないって? それはそうだろうね、僕の目的はそんな不良品の回収じゃないから」


「ちゃんと質問に応えなさいよ!」


善子は仁志の態度に苛立ち声を荒げた。


「おぉ、恐い恐い」

「質問に対する答えだったね、僕の目的はね彼だよ」


彼とは恐らくしきの事を言っているのであろう。だが彼が目的という意味が分からず善子は返答に困る。


「君にはやっぱり分かんないんだね」


その言葉は本当に残念であるという気持ちが込められていた。


「伝説のスパイぜんが選んだ相棒だよ」

「君が思ってる以上に彼は優秀なんだ。だから君と直接連絡を取り合うこの日に居場所を特定して話を聞いてもらいに来た」


「話?」


「そう、うちの組織に入らないかってね」

「そしたら断られちゃった」


なにやら突然、茶目っ気のある声でふざける仁志にイラつきながらも「断られたんなら、さっさと帰りなさいよ」と皮肉を込めてそう返した。


だがこの時の善子には嫌な予感がしてならない。


「言っただろ? 彼は優秀なんだって、そんな人が他で活動するのは我々にとって損を生むんですよ」


しきに何したの」


善子は強がりながらもその声は震えていた。


「さぁ? それは後のお楽しみにして、君はまずその場から逃げる事に専念するんだね」


この会話を最後に通信は途絶えた。


(ここからしきのサポート無しで逃げろって…)


善子は気持ちを切り替えて当ての無い夜道をひたすらに走る。


雨は一層強くなり、冷たかった。


ーーー

バンッ!!


「で! お前はどこのスパイなんだ!」


あの後SBKに捕まった善子は尋問を受けていた。


「朝日乃亜、鏡操、田中光、現場にいたお前達がそれぞれ別の組織の人間である事は分かっている」


「…」


「何とか言ったらどうなんだ」


善子には何も聞こえていない。

彼女の心は子供の時に両親を失った後と同じであった。

そしてその目もあの時と同様である。


何を言っても意味をなさない状態に男は善子を一人残して部屋を去る。


「隊長、あいつの様子はどうだ?」


部屋から出ると早速声をかけられた。


「壱さん、彼女は他の奴と違って何を言っても反応しません。机を叩いてみても無反応、あれでは会話は不可能です」


「じゃあ、今度は俺が話をしよう」


そう言って壱は扉を開けて、ゆっくりと座り善子と相対した。

善子は相変わらずの表情で動きはない。


「俺の前ではその演技をやめろ、野口京子・・・・


「…その名前で呼ばないでくれる? 今は善子で通してるの」


その言葉を聞いた途端にけろっと態度が変わった。


「悪かったな、次からはそう呼ぶよ」


「正体を知ってるなら、もう帰してもらえるかしら?」


「そうゆう訳にはいかないんだよ、同業者なら分かるだろ」


演技が通用する相手では無いと悟った善子は先程とは打って変わって対応を変え、自分から聞きたかった事を質問する。


「私の事を知ってるならしきの事も知ってるでしょ? 彼はどうなったの?」


「聞きたいか?」


「一応」


「死んだよ」


「そう」


結果は分かっていた。だが事実を受け入れる為、他人から言ってもらいたかったのだ。


「何か心当たりがあるみたいだな」


「平野仁志って知ってる?」


「知ってるよ、営業部の新人で今回のプロジェクトに参加していた奴だな」


「あいつにやられたのよ」


「君は彼の事をどこまで知ってるんだ」


「どこまでって…、そうねGSから送られてきたスパイでぜんに憧れている感じだったわね」


ぜんに憧れている?」


「そうよ、だから私と競いたかったらしいわ。結局はそれも嘘だったけど、私が知っているのはそれが全てよ」


聞き終えた壱は少し唸り「平野仁志に関してだが…」と自らが知っている情報を話し始めた。


「彼はまずGSの人間ではない」

「彼を含めた四人、早乙女愛子、朝日乃亜、鏡操はスリーエスの人間だ」


「はぁ? 意味が分からないんだけど、さっきの男も別の組織だって言ってたわよ」

「それに同じ組織なら何でアイツ、鏡は朝日の事を必要以上に痛めつけてたわけ? 理由が無いじゃない」


そう善子は言ったが思い当たる節が無いわけでは無い。

仁志が言っていた「うちの組織に入らないか」というセリフには違和感があった。

本当にGSの人間であれば「うちの組織に戻らないか」というのが普通である。

そんな事を考えているうちに壱の話は進んでいく。


「そうだな、正確に言えばそれぞれ別の組織であり、それは全てスリーエスの管轄だ」

「要するに名前を変えて色々な場所で同様の依頼を受け、お金を一ヶ所集めている」


「呆れた。何よそれ、詐欺じゃない」


「ついでに教えてやるとスパイ業界は盛んになどなっていない。色々な組織があるように見えるが、実際にあるのはGSとスリーエスのみだ」


ここまで壱が丁寧に話すのには理由がある。

そしてそれは善子にとって願ってもない事であった。


「ここまでの説明で頭の回転が早い君なら気付いているだろうな、俺達SBK はGSから独立した組織では無い」


「俺達がGSグローバルスパイだ」


「途中からなんとなくそんな気がしてたわ」

「それで? そこまで教えるには理由があるんでしょ?」


「分かっていて聞いてるな」


壱は少し笑みを浮かべながら言う。


「GSに入れ善子・・、俺達はこれからスリーエスを潰しにいく」

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