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四話

「草木が多いな」


目の前の情報を口に出すだけという疲れの症状が表れ始めた歩き始めの1時間。

俺は言葉を出す暇もないほどに息があがっていた。

役職があるなら基礎体力の補正でもかけてくれないかなと思う山道の一歩、特に勇者なら尚のこと。

そんな山中、地図を広げるリーダーである中里さん。


「最初の町ーダナーまでは残すところ1キロだ、あと少し頑張ろう」


幻獣から貰った地図には魔法がかかっているようで現在地が丸くマーキングされている。

我々でいうGPS機能が搭載されているらしい、それもパーティメンバー各人のポイントが浮かび出ている。

最初こそメンバーが地図を渡し合っていたが疲労と共に地図を見る気力も失せていた。

やはり風の勇者様だけあって中里さんのリーダーシップは目を見張る。


異世界に来て5時間ほどが経った。

最初の幻獣は確かに異世界要素としては充分な効果があったけど記憶は時間経過とともに薄れ今となっては近所の森を散歩しているような感覚。

そんな散歩の中で俺は先ほどの自己紹介を思い起こす、やはり名前を覚えてないと後々面倒になる。


ー初期地点から1時間後ー


「少し休憩がてら自己紹介でもしようか」


歩き疲れ始めたタイミングで自己紹介とは中里さんも意地の悪い……いやいや、策士である。

人間の嘘は体力のある場合とない場合とではその発生率はかなり違う。

いわゆる嘘は自制に起因するというもの、疲れた状態で嘘を言う事は気力がいるというもの。

酒の席だったり何かを成し遂げた後に仲が深まるのも嘘の自制が無いから本音で話して本気で仲良くなれる。

中里さんはその席を今にした。


「まずは私から行こうか

中里なかざと友利ともり、島根に住んでた16歳高校2年だ。風の勇者という役職を貰った以上、みんなの助けになりたいと思ってる。よろしくお願いします。」


簡単な情報と共に終わる自己紹介。

島根に住んでいたのかとやはり声質が良いなとしか思わなかったが最初の自己紹介はそんなものか。

背が高いから年上だと思ったけど同い年だったとは、それに筋の通った顔立ち。


「じゃあ次は俺がやろう。石丸いしま大我たいが、神奈川、17歳だ。

柔道をやっていたから動けはする。役職は「守人ガードマン」だ。日本に帰るために協力していこう」


口をへの字にした堅物みたいな大男。

それ以外の感想は……無し。


「私やります。田上たのうえ優香ゆうかと言います。

静岡の山奥に住んでました、15歳になりました。役職は「薬師くすし」ですが薬の知識はありません……お願いします。」


肩まで伸びる茶色のくせっ毛。

視線は泳ぎどこか不安そうな顔、心配になる。

それに薬の知識ないのに薬師とは運も無いのか。


そしてみんなの視線は俺の元に。

空気的にもう一人の女の子は喋りそうになかったので田上さんの自己紹介が終わり少しの間を持って話を始める。


「俺は水上みずかみ 涼介りょうすけ、東京に住んでた16歳高校2年です。役職は戦士ですけどもちろん剣を握ったことはおろか運動もあまり得意ではないです。足を引っ張るかもしれませんがよろしくお願いします」


丁寧な自己紹介と一礼にて番を終わらせる。

最初から足を引っ張ると言う事を言って置けば少しマイナス印象だが頑張り次第で評価は上がっていく。

まぁ運動をやってこなかったのは本当だけど。

そして最後に残った5人目の女子に視線が集まる。


かかる前髪の下から覗く大きな目はうつむき、綺麗な黒目が下を見る。

低身長と肩下まで伸びる黒髪、胸の前で手を握る仕草から中学生と言われてもおかしくはない。

そんな女の子が場に押され声を出す。


「私は甲斐田かいだみのりです……17歳、役職は「射手アーチャー」です。岩手に住んでました……よろしくお願いします」


驚いたのは幼そうな外見に合わずの透き通った声質。

そして何よりこのパーティの最年長さんだったと言うこと、それに貴重な遠距離枠。

自信の無さ気な点を除いては優秀な人材と言えるのではないだろうか、臨機応変な対応ができるかは知らないけど。


このメンバーが「風の勇者」パーティ一行である。

それぞれがどの程度戦えるかは知らないがあの場にいたお気楽な奴らよりかははるかにマシと言える。

遠耳だがある一人の男が「これってあの異世界転生ってやつ?すっげ!」と声をあげていた。

夢を見ている所申し訳ないが、これは立派な拉致行為。

沸々とした怒りがあるだけで喜びこそない。


ー現在ー


「見えてきたぞ、私らの最初の町「ダナ」だ」


森林を抜け出た丘の上から見下ろす円形の町並み。

外壁に囲まれた西洋建築に似た様相、門から出る馬車はここが異世界だと再認識させる。

あの場所から目覚めて約6時間、俺たちは最初の町に踏み入る。



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