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二話

住んでいた町に未練はない、過ごしていた毎日に戻りたいとも思わない、幼少期から英才教育というベルトコンベアーに流されていた人生。家族に会いたいという気もない。

だが日本に戻りたくないと言われればそれは違う。

俺はあの日常に満足していた、変わり映えのしない通学路も退屈な学園生活も窮屈な家庭環境も捨てがたい俺の一部。

それを強制送還で手放すには惜しい。


水上みずかみ 涼介りょうすけ、16歳、役職は「戦士」です」


だから俺は「ー水の勇者ー」の役職を隠し日本への最短ルートを模索する。


「俺は日野ひの 雄大ゆうだい、15歳、「火の勇者」だ」


驚いたことに火の勇者である日野君は一歳年下だった。

中学高校の先輩後輩がいかに小さいものかが顕著に現れている、やはりしっかりしている人は何歳だろうとしっかりしている。逆もまた然り。

それぞれの役職を聞き終えたところで地面に役職が書かれる、各々が書かれた役職の前に立つ。

俺はもちろん戦士。


「やはり強いと言っても構成が崩壊すれば強くても死ぬ、そうだな?」


日野君の隣に立つのはメガネをかけた才女みたいな子。

その子は先程、役職を聞いて回る勇者たちに「強さの基準は何か?」など質問を投げかけ、話し合いの末パーティ構成のアドバイザー的な位置どりとなった。

最初は保身のために動いているのかと思ったが才女が放った一言「私は勇者不在のパーティに行きます」という一言でその立ち位置が確立。

何を考えているのかはわからない。


「その通りです日野君、我々に提示されたのは日本への帰還方法と帝王、四人の勇者の存在、5人1組のパーティ構成、そして役職です。

それらを複合するとこれはRPGゲームのようなバランスが鍵になると思います、どれだけ強い攻撃手がいても長期戦になれば回復手がいないと死ぬように勇者に固執しないでパーティ全体を見ないとどの道全滅すると思われます」


もっともらしい事をスラスラと話す才女。

だが少し引っかかる事はある、それは勇者の価値が適正かどうかという話。

わざわざ勇者という日本にいる我々でも理解できる程に強力な役職を提示したということは少なからず勇者主体となる意図はある。

それを考えると勇者に固執しないという考え方は通らない。

だがそれをあえて言わないというのは勇者不在のパーティに行く人への配慮なのだろう。


「今分けたのは前衛、後衛、支援、のカテゴリーです。ここから適正な構成を決めます。もちろん会ったばかりなので判断材料は少ないですが出来うる限り正確な構成にしたいので協力をお願いします」


頭を下げる才女。

いつの間にか先程まで漂っていた不穏な空気は薄れていた。

果敢な主導を行う勇者たちに安堵したのか20名いる少年少女は旅立ちに前向きになっている。


「じゃあ手をあげて、身長体重、あとスポーツ歴とかもあれば言ってくださいね」


パーティ構成を決める判断材料、それは基礎情報。

異世界にきて1時間、いよいよパーティ構成発表が行われる。

初めは火の勇者パーティの発表から。


「俺のパーティはいろは、さかと、ひより、せいは、以上だ」


呼ばれた4人が笑みを浮かべながら歩き出す。

選定基準は秘匿、それを公開すれば遺恨を残すという事らしい。

まぁ妥当な判断、仮にその基準を公開すればどの道不平だという文句は出てくる。


「次は風の勇者である私のパーティだ」


前に出るのは俺が一番入りたい風の勇者中里なかざと 友利ともりのパーティ。

選定基準はわからないが中里さんの好み的に言うことを聞きそうな人と推測、気持ち程度だが中里さんの目を見て積極的な会話を交えつつ勇者不在のパーティに入らない方に基礎情報をおさえていた。

さて、結果は。


「いしまたいが、たのうえゆうか、かいだみのり……みずかみりょうすけ」


よし!!

同じ名前は他にいない、笑みを隠しながら立ち上がり胸を張って歩く。

第一関門は突破した、あとは俺の水の勇者がどんな力を持っているかを調べつつ中里さんと帝王を殺せば問題は全て解決する。

悪く思わないでくれよ、日本に帰るためだ。


その後、雷の勇者である郡田ぐんだ 来夏らいかのパーティメンバーが呼ばれ残されたのは勇者不在のパーティリーダーである才女 石橋いしばし 花音かのんのパーティが自動的に決定される。

やはりと言うべきか、残された勇者不在のパーティメンバーの誰も文句を言わずその場に立っていた。

その中の一人が。


「やはり真の勇者とは逆境を跳ね除けるのだ」


そしてある一人が。


「異世界を旅するの……楽しみ」


と、言うように。

十人十色と言う言葉があるように20人も中高生がいれば日本に帰る事が主たる目的ではない輩や勇者を必要としない輩もいる。

最初からそいつらだけを振り分ければ良いだろと思ったが挙手制にすると裏をかく連中が出てくる危険があるとさっき火の勇者が言っていた。

なんの危険があるかを少し考えていると風の勇者である中里なかざと 友利ともりに召集がかけられる。


「君たちを選定した理由は一つ、知性だ」


理由は単純であれば単純であるほど良いと聞いた事があるが少し単純がすぎる。

知性と言われて思うことはあの短い質疑応答で知性を正確に測れるわけがないと言う事だけ。

そんな疑問をよそに中里は話を続ける。


「我々は力ではなく知力で旅をしようと思う、それぞれの力を最大限活かせるようなパーティにしていきたい。これからよろしく頼む」


理路整然と話す中里にパーティメンバーの顔が引き締まる。

この風の勇者パーティは知略で旅をするをスローガンとした集団になるらしい。

まぁ熱血の猪突猛進パーティは肌に合わないし旅途中で嫌気がさすに決まってる。

やはり俺の勘は当たっていたようだ。


「ではそれぞれのリーダー、この宝箱を開けよう」


火の勇者である日野の下に並ぶ四つの両手でやっと持てるような木箱。

宝箱と呼称するのは日野の先入観による独断だろうが見えないこともない。

それぞれに火、水、雷、風と漢字で書かれておりそこから4人の勇者の分類がわかる。


「では残った水の箱をかのんが開けてくれ」


「うん、わかった」


そうして幻獣からの唯一の贈り物である箱を我々はようやく開封する。




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