悪役令嬢は狙われる
リザローズはテレスに手紙を書いては送り、書いては送りを繰返した。
最初のうちは全く返事もなかったが、
一月もすると返事も届くようになり、今では文通か?というくらい(週三回は)手紙が届くようになった。
秋も深まり、この国にも実りの季節を祝う祭りが各地で行われる。
この時期は貴族は忙しい。
自領の収穫祭や納税、秋の王宮舞踏会、社交パーティーもこの頃は招待状の届かない日は無いほどだ。
そんな中で、テレスの家のパーティーの招待状も届く。
お義父様に進言し、リザちゃんと二人で参列する許可をもらう。
リザちゃんに伝えると、喜びすぐにテレスに手紙を送っていた。
***
テレスの家、スタイザー伯爵家。
王国建国よりある由緒正しい家柄だ。
フルーツの一大名産地で、品種改良の研究も盛んだ。
ウィルウッド公爵領でもその研究を生かして、フルーツや野菜の生産に力を入れている。
今回のパーティーでも珍しいフルーツが、ふんだんに振る舞われるだろう。
パーティー会場に到着し、主催のスタイザー伯爵夫妻に挨拶をする。
すると夫妻からテレスの件でお礼を言われた。
「娘が生徒会の皆さんにはいつも良くしてもらってると、話しているんですよ。娘と仲良くしてくださりありがとうございます。」にこにこと優しく微笑えむ伯爵。
「ちょっと気難しいところもあり、今も学園を休んでいてご心配をお掛けして…。ぜひ今日は娘と会っていってくださいね」と夫人が期待を含ませた瞳で見つめてきた。
会場に入ると、テレスが俺たちを見つけてすぐに寄ってきた。
「本日は来ていただいて、ありがとうございます。」
「こちらこそお招き頂いて、テレス様とお会いできて嬉しいですわっ!」とリザちゃんがテレスの手を握る。
テレスの顔がみるみるうちに真っ赤になった。
「お元気そうで何よりです。
リザローズもテレス嬢に会えて嬉しいようです。
今日はゆっくりとお話する時間も取れないでしょうし、
良ければ明日お時間がありましたらランチでもいかがですか?
学園のことなどもお話したいですし。」と声をかけるとテレスから冷たい表情で見つめられ、「そうですわね…明日もぜひうちにお出でください。」…リザちゃんとの態度の変わりよう…なんだろう?と思いつつも、他にも公爵家として挨拶をしておかねばならない方などもいたのでそこで一旦別れた。
「リザ、テレス嬢とだいぶ仲良くなったようだね。」
今回のパーティーでも挨拶や歓談、ダンスやをひっきりなしに誘われていた。公爵の仕事を手伝っている俺とも、コネクションを繋ぎたい人間はたくさんいるのだ。
頃合いを見計らいリザちゃんをダンスに誘う。
細くしなやかな腰を抱き、耳元にささやくように話しかけた。
リザちゃんがふっと微笑む。
「少しでも心を開いてくれたのなら嬉しいんだけど。」
「少なくとも俺には、二人が仲良く見えたよ。明日はゆっくりとお話も出来るだろうしテレス嬢が学園に戻る決意をしてくれるといいね。」
ふと視線を感じる
そちらを見やると、テレスが睨むように俺を見ていた。
目が合うと、すぐに反らされた。
曲が終わりリザちゃんをエスコートしながら飲み物をもらい、壁際に立ちダンスを楽しむ人たちを眺める。
テレスはゲーム内では俺の婚約者として、もしかしたらリザローズの取り巻きのような形では出ていたかもしれないがモブキャラ。
しかしヒロインと王子の出会いイベントを奪い、リザやミリアに嫌がらせを受けたと噂を流し、今回はリザちゃんの好意に甘えているような態度。
そして俺に対して敵対心を露にする感じ、何かあるなと勘ぐる。
「どうしたの?」考え込んでいた俺にリザちゃんが声をかけた。
「うん、テレス嬢は何で最初リザに対して嫌がらせのようなことをしていたんだろうと思って。
明日は俺それも聞いてみたいな。
だってリザに何か思ってたんなら、聞いて悪いところは直す、勘違いしてたなら誤解を解いた方がもっと仲良くなれるだろ?」
と言うと、
「そうね。でも、私は心当たりがあるの。
前に言ったでしょ?
テレス様はもともとラルクと婚約する予定だったって。
でも、私がラルクを奪ってしまって。
他の方たちも、ラルクのことを好きな方もいたから
実はテレス様だけじゃないの。
私のこと良く思わない方は。」と俯く。
知らなかった。いつもお茶会は和やかな雰囲気で、リザちゃんも明るく振る舞っていたし。
気づかなかった。いつも一番側にいたのに。
「ごめんね。気づいてあげられなくて。
俺はリザのこと傷つけるものから守りたいんだ。」不甲斐ない自分に腹が立つ。
「でもテレス嬢は俺のことでそんなことしたんじゃないと思うよ。
だって明らかに…」
「そうですわね、ラルク様のことは関係ないですわ。」テレスが後方から近づき会話に割って入ってきた。
「悪役令嬢のリザローズ様がこんなに性格が変わって出てくるなんて、夢にも思わないでしょ?
だから最初は困惑してしまっただけですよ。
私、ヤンデレキャラなんて全然好きじゃないですし。
ふふふっ!そこで聡明な私は解ってしまったのです!
きっとあなたも転生者ですね!」とビシッと人差し指を向けてくる。リザちゃんに…。
「私、リザちゃんが押しキャラなのに、まさか転生者なんて!!でも、二人で組めばバットエンドも回避できますよ!
なんせゲームの情報は全部頭に入ってるし!
やりこんでますからね!リザちゃんのイベント、全部見てますから!
私がリザちゃんに生まれ変わりたかった!うらやまし過ぎますね。
まだ挽回のチャンスはありますよ!
そんなヤンデレ!リザちゃんの幸せの未来のためには近くにいたらダメですよ!
ほっといて、あっちでお話でも…」と矢継ぎ早に話を進めて強引にリザちゃんの腕を引っ張る。
「待って!何を言ってるか、さっぱり意味が解りません!
やっ引っ張らないで!どうしたんですか?テレス様」と戸惑うリザちゃん。
俺は二人を引き離しながら、静かに言った。
「リザは転生者じゃないよ。テレス嬢、落ち着いて、その話詳しく聞きたいけど、明日じゃダメかな?」
するとテレスがぎょっとした顔で、
「えっ…!まさかラルクが、えっ!えっ!」と動揺している。
「お互い落ち着く必要があるようだ。
私たちはこれで帰るので、また明日。」とリザちゃんの手を引き会場をあとにした。
まさか、テレスもリザ押しだったとは。
狙いはリザちゃん…。油断も隙もないやつだっ!
と心で毒づいた。




