悪役令嬢は知らぬ間にピンチに陥っていた
リザちゃんがそんなことをするわけないのに、何故虐めてるような噂が立つんだ?
その後もこそこそしている者がいれば聞き耳を立てて噂を聞いて回った。
どうやら、噂は二種類出回っているらしい。
裏庭でリザローズとミリアに生徒会で王子やラルクに可愛がられていると嫉妬をむき出しに言われて頬を叩かれたというもの。
人通りのない廊下でリザローズとミリアに同じように絡まれて、近くにあった水道から水をかけられたというもの。
これはゲーム内でリザローズがミリアに行ういじめと同じ内容だった。
しかも裏庭に呼び出しているところはクラスの生徒、連れだって歩いているところを裏庭近くにいた生徒、次の日は頬が腫れていたり、濡れてしまい保健室の先生に服を借りていたり、…と、状況証拠は確かにリザローズとミリアに疑いがかかるような状態だった。
***
まだリザちゃんとミリアにはこの噂が届いてないようだった。
女子生徒会役員は今度行われる、学園の社交パーティー用にお茶とお菓子の選定をするため集まりが別にあった。
お茶に詳しいマーガレットや2年、3年の生徒会の先輩も一緒に3年生の生徒会室に集まることとなっていた。
それをチャンスと、王子にエリック、ハロルド、マーロンを集めて、この噂の話し合いをすることにした。
場所は5人で集まっても違和感のない生徒会室で。
ここは防音で生徒会の人間でないと入れない場所だったので打ってつけだった。
「今日は話したいことがあるんだ。
女子たちには聞かれたくない事なんだけど。」
と俺が切り出すと、
「あの噂の事か?」とハロルド、隣でうなずくエリック。
「えっ?噂?なになに?」とマーロンは噂を知らないらしい。
しかし王子だけは、「テレス嬢が相談してきた件か?」と言ってきた。
どうやらテレスは王子には相談という形でアプローチしていたようだ。所謂王子ルートということか?
まずはどんな噂が流れているか、事細かく説明した。ハロルドはどちらも知っている素振りだが、エリックは
「服に水をかけられたのは知っていたが、叩かれたというのは知らなかった。そんなことをリザローズ嬢やミリア嬢がするわけないと思うが…」と怪しむ。
「しかも虐められてるテレス嬢が何事もなかったように、二人と仕事をしているし、なんか変だよねー。」とマーロン
「確かに、いつも冷静なリザローズ嬢がそんなことをするのはおかしいよな。相談を受けたとき信じられなくてテレス嬢には素っ気なく対応してしまったが」と顎に手を当てて王子も呟く。
「リザローズはテレス嬢から入学前より嫌がらせを受けてきたんだ。最初は同じ生徒会でうまくやれるか心配もしてたほどだ。
しかし生徒会の仕事はきっちりしてきた。なのにこんな嫉妬をするか、甚だ疑問なんだ。
それに生徒会のメンバーは知っていると思うが、リザローズが嫉妬するほど俺とテレス嬢とは話してもいないし、接触もない。」
「入学前から嫌がらせを受けていたのはリザローズ嬢だったのか?それじゃこの話、本当に変だな。どうしてテレス嬢も私に相談などしてきたのか?」と王子も訝しがる。
「まぁもともとテレス嬢に嫉妬するほどの何かがあるわけないよねー」とけらけら笑うマーロン
「笑い事じゃないだろう。この噂リザローズ嬢やミリア嬢が知ったら傷つくはずだ。
なるべく二人に気づかれないようにしてやろう。」と正義感が強いエリックが拳をふるふると震わせる。
「まずは噂の出所を確かめよう。多分王子に相談をしているんだ、テレス嬢が仲の良い友人にも相談して噂が発生したんだろう。
リザローズ嬢と婚約者のラルクと噂に上がっているフィリップは調べるのを控えてくれ。
関係者じゃない俺たちが調べた方が、噂を流したやつの尻尾を掴みやすいはずだ。
そして、そんな戯れ言を相談というかたちで吹聴したテレス嬢の真意にも近づけるはずだ。」
と建設的な意見を言うハロルド。
また詳細がわかり次第集まることとなった。
リザローズやミリア、そしてその二人に近い人物には届かない用に噂は広がっていった。
学園のパーティーの準備で忙しく、慌ただしい時間を過ごした。
ゲームのイベントが、このパーティーであったはずだ。
ダンスをしているときに、リザローズがわざとミリアの足を引っかけて、転ばせる。
しかしミリアとダンスをしていた王子が、リザローズを嗜めて、足を挫いたミリアをお姫様抱っこして退場するのだ。
しかも保健室で先生がいないのを口実に、女子の生足に湿布と包帯を巻いてあげるシーンがあって、そのスチルがちょっとエロい。
もしかしたら、今度のパーティーでもテレスは何かするかもしれないな。
***
後日ハロルドより上がってきた報告は、想像していたものとほぼ同じ内容だった。
噂の出所はテレスが仲良くしている女子生徒たち。
テレスが泣いて虐められていると友人に洩らしたらしいが、
状況証拠のみで本当にリザローズたちがやった場面に遭遇したものはいなかった。
最近はクラスで行動をするときは、リザローズにはレベッカやルミエール、マーガレットにいつもそばにいるようにしてもらい、ミリアには王子がなるべくそばにいるようにしてもらった。
テレスには見張りの目をつけることにして、変な噂が立たないように注意していた。
「今までは行動を見張り、噂が立たないように見張っていられたが…。
でもパーティーでは生徒会のメンバーはホスト側、仕事をしながら生徒たちが楽しめるように振る舞わなければいけない。
もしかしたら、パーティーで狙われる可能性は高いな。」
と俺は4人の事をぐるりと見遣る。
「ダンスをしているときに、わざと倒れて足を掛けられた、と騒ぐくらいはするかもしれない。」とゲーム内でのイベントを付け加える。
「確かにリザローズ嬢か、ミリア嬢が近くに来たときにわざと倒れれば、見えなくもないな」とハロルド
「それ以上の何かが起こるかもしれないしねー」とマーロン
「パーティーでもあの3人をなるべく近づけないよう、見張ることにしよう。」とエリック。
「では俺はミリア嬢。ラルクにはリザローズ嬢。婚約者殿と一緒に居られる時にはみんなにもリザローズ嬢とミリア嬢のフォローをしてもらうようにしよう。とりあえず、テレス嬢の動きはみんなで見張ることにしよう。」と王子が作戦を決めた。
男子たちは頷きあうと、アイコンタクトをとり無事パーティーが終わるようにと祈った。




