21/29
承認
(あれも秦だ)天下を競望せず……それが、元就の遺訓で、自分が、勝手気儘にやれる人間ではないことを、輝元はしっていただろう。天下という大舞台で、きらびやかに舞う……八幡大菩薩のみそなわされる手の平のうえで……たしかに、輝元は、そういう人物ではない。秦という一族も、いい加減、その渡来から千年が経過している。完全に本邦の馬の骨にも馬頭の鬼にも化していて、一族で連帯する意識などない――普段は。
だが、ここは、という切所で、ふと、彼我の紐帯に気づかされるのではないか――行動の指針を決する際、おのれのルーツに思いをはせるのは、神頼みに似ている。
人事を尽くした後は、神頼みにすがるしかないではないか。だからこそ、信長も、秀吉や川並衆を、中国戦線へ送りこんだ。渡来人由来の人士が多いこの地では、ひょうすべ同士のほうが、調略もはかどろうと……
小説的には、ここで、中国大返しに後塵を蹴立てる秀吉を思う、輝元を描くべきだろう――
「そうせい
「尾張のひょうすべよ」




