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2 保護名目の軟禁と、噛み合わない応酬

 馬車が速度を落とし、重厚な鉄柵の門をくぐり抜ける音が響いた。

 車窓から覗く外の景色は、王都の目抜き通りから遠く離れた高台に位置する貴族街だった。

 街灯の光に照らされた手入れの行き届いた並木道、整然と刈り込まれた生垣。そしてその奥にそびえ立つ、白亜の石壁と黒漆喰の屋根を持つ壮大な邸宅。

 王国屈指の武門であり、歴代の当主が軍務と治安を統括してきたヴァレンシュタイン公爵家の本邸である。

 馬車が車回しに静かに停車すると、即座に外から扉が開かれた。

 整然と並んだ従僕たちと、非の打ち所のない礼服を着た老執事が深々と頭を下げている。


「お帰りなさいませ、オズワルド閣下」

「ああ。急な客人を連れてきた。部屋の用意はできているな?」

「は。最上階の東側客室を整えてございます」


 オズワルドは流れるような身のこなしで馬車から降り立つと、振り返ってエヴリンへ手を差し伸べた。漆黒の革手袋に包まれた掌がエヴリンの目の前に差し出される。

 エスコートの仕草としては完璧だった。

 名門貴族の当主としてこれ以上なく洗練された動作である。

 だが、エヴリンはその掌を完全に無視した。ドレスの裾を自らの手でたくし上げると、オズワルドの手には指一本触れず、自力でステップを踏んで地面へ降り立つ。


「……君は本当に人に頼るということを知らんな」


 差し出された手を空中で引く羽目になったオズワルドが、青灰色の瞳を細めて低く呟いた。

 その口調には怒りではなく深い同情と哀れみが滲んでいる。


「段差はわずか三段です。健康な人間が他人の手を借りて降りる必要性を感じません。それよりも公爵閣下。敷地内に入ったことであなたの言う『安全』は確保されたはずです。即座に門を開け、私を解放してください」


 エヴリンは振り返り、頑丈に閉じられた鉄門を指差す。

 門の両脇には長槍を手にした私設の近衛兵が二人、彫像のように直立不動で控えている。一般の貴族邸の警備水準を明らかに超えていた。

 オズワルドはエヴリンの言葉に答える代わりに、従僕から受け取った外套を肩にかけ、静かな足取りで玄関への階段を上り始める。


「中へ入れ。夜風で体を冷やす」

「人の話を聞いていらっしゃいますか?」

「聞いている。だからこそ中へ入れと言っているのだ。今夜はここで身体を休めろ。君が望むなら好きなだけここにいていい」


 オズワルドは振り返り、微かに胸を張ってそう言った。

 不条理に追われた薄幸の令嬢に、王国最強の庇護者が無条件の避難場所を提供する。彼の表情には「これで君は安心できるはずだ」という絶対の確信が満ちていた。

 エヴリンはすっと目を細める。


「では、明日出ていきます」


 オズワルドの足がピタリと止まる。階段の途中で振り返った男の顔には明確な拒絶の気配があった。


「それは駄目だ」

「……『好きなだけ』とは?」


「身の安全が完全に保障されるまでの話だ。今日明日で事態が好転するはずがないだろう? クロウフォード伯爵家はお前を勘当した。ランベール子爵家の令息も、公衆の面前で恥をかかされたことで逆上している。外に出れば報復される危険が極めて高い」


「報復される危険性については、私自身が最も熟知しております。そしてその対策も、公的機関を通じた法的手続きによって講じる予定です。あなたの私邸に匿われることは、その解決を先送りにしているだけに過ぎません」


「法の手続きなど暴力の前には紙切れに過ぎん。君は世の中の悪意を甘く見ている」


「世の中の悪意なら、過去十数年間にわたり実家で飽きるほど摂取してまいりました! ですから、十分把握しております。他人の善意を騙った拘束のほうが、私にとってはよほど予測困難で危険です」


 淀みない反論に周囲に控えていた執事と従僕たちが小さく息を呑む。

 彼らにとって、当主であるオズワルド・ヴァレンシュタイン公爵の言葉は絶対である。

 軍においても社交界においても、この男の決定に正面から反論できる者など片手で数えるほどしかいない。

 それを擦り切れた型遅れのドレスを着た若い娘が、一切の躊躇なく論破しにかかっているのだ。


 オズワルドはこめかみを指先で軽く押さえた。

 青灰色の瞳に困惑と、それ以上に「どうしてこの娘はこれほど強情なのだろう」という深い困惑が浮かんでいる。


「君のその頑なさは、不当な環境が生み出した防衛機制なのだろうな。傷つくことを恐れるあまり、救いの手すら攻撃と見なしてしまう……痛ましいことだ」


(また始まったわ。この男の身勝手な深読みが)


 エヴリンは内心で盛大に舌打ちした。

 この男の最も厄介な点は邪心や悪意が微塵もないことだ。

 エヴリンを都合よく利用しようとか、弱みにつけ込んで愛人にしようといった下心があれば、契約や法を盾にして容易に撃退できる。

 しかしオズワルドの行動原理は、「弱者救済」と「正義感」だった。

 自分を善意の騎士だと信じて疑わない人間ほど、他人の拒絶を「照れ」や「心の傷」へと都合よく変換して突き進んでくるものはない。


「閣下。私の精神状態を勝手に分析して満足するのはおやめください。もう一度申し上げますが、私はここに留まる合意をしておりません」

「客室へ案内しろ」


 オズワルドはエヴリンの言葉を完全に無視し、老執事に向かって顎をしゃくった。


「は、かしこまりました。エヴリン様、こちらへどうぞ」


 執事が恭しく頭を下げ、館の奥へと手招きする。

 エヴリンはオズワルドの背中を睨みつけたが、力尽くで突破しようとしても、周囲の屈強な近衛兵に取り押さえられるのがオチだろう。

 ここは一旦、退くふりをして内部の構造と警備状況を把握するほうが合理的だ。


「……案内していただきます。ただし、この滞在は私の合意に基づくものではなく、不法な移動制限下にあることを改めて申し添えておきます」

「承知いたしました」


 執事は表情一つ変えずに応じた。名門の執事だけあって、不条理な事態に対する適応力だけは無駄に高いらしい。


   ◇


 案内された最上階の東側客室は、客室というよりは一つの独立した豪邸のような広さを持っていた。

 床には足音が吸い込まれるような毛足の長い羊毛の絨毯が敷き詰められ、壁には落ち着いた色調の絹の壁紙が貼られている。

 部屋の中央には天蓋付きの巨大な寝台が鎮座し、奥には執務用の黒檀の机と、上質な革張りの長椅子が並んでいた。

 世の多くの不遇な令嬢であれば、実家の屋根裏部屋や粗末な小部屋との落差に圧倒され、温かなもてなしに涙をこぼす場面かもしれない。

 しかし、エヴリンの行動は全く異なっていた。部屋の扉が閉まった瞬間、彼女はまず扉の内側に駆け寄り鍵の構造を精査する。


「外側からも鍵を掛けられる構造。内側から錠を下ろしても、外から合鍵を使われれば無意味ね。扉の厚みは約五寸、オークの無垢材。体当たりでの突破は不可能」


 次いで彼女は窓際へと歩み寄り、重厚なドレープカーテンを引き開けた。


「窓は二重ガラス。格子の幅は約六寸。人間が通り抜けるのは無理。外は三階相当の高さ……下は石畳の中庭。シーツを結んで降りるとしても強度が足りないし、そもそも中庭には二刻おきに歩哨が巡回している」


 エヴリンは手元から取り出した手帳に、部屋の寸法と確認できた脱出経路の難易度を淡々とメモしていった。豪華な天蓋付きベッドなど、彼女にとっては単なる「視界を遮る巨大な障害物」に過ぎない。

 刹那、控えめなノックの音が響いた。


「エヴリン様。夜食をお持ちいたしました」


 入ってきたのは初老の執事と、銀のトレイを持った若い侍女だった。

 トレイの上には薄く切り分けられた冷製の燻製肉と二種類の硬質チーズ。幾房かの葡萄、乾燥焼き菓子。そして、硝子の水差しに入った常温の果実水が整然と並べられていた。

 簡素ながらも手早くつまめる、夜更けの軽食盛り合わせである。


「閣下より、あまり胃に負担をかけぬよう、軽く召し上がってお休みいただくようにとの言伝でございます」


 侍女が恭しくサイドテーブルに皿を並べる。エヴリンはテーブルの前に立ち、腕を組んでその皿を見下ろした。


(飢えた小鳥に餌を与えて懐かせようという算段かしら。いえ、あの公爵のことだから、本当にただ『夜会から何も食べていないはずだから用意させろ』と形式的に命じただけね)


 エヴリンは小さく息を吐き、長椅子に腰を下ろした。ここで意地を張って絶食などという非合理的な行動を取る気は毛頭ない。

 明日以降、脱出するにせよ交渉するにせよ、体力がなければ動けないからだ。


「いただきます」


 エヴリンは銀のフォークを取り、燻製肉とチーズを口に運ぶ。塩気の利いた肉と程よく熟成したチーズは上質なものだった。だが、そこに特別な感動はない。

 彼女にとって食事とは生命活動を維持するための熱量補給に過ぎない。淡々と手を動かし必要な分量だけを胃に収め、果実水で喉を潤していく。

 皿の半分ほどを平らげたところで、エヴリンはナプキンを置き、控えていた執事を見た。


「執事長」

「ハインツとお呼びください、エヴリン様」

「ではハインツ。明日の朝、この部屋の利用料と、今いただいた軽食の代金を算定した請求書を私宛てに発行してください」


 ハインツの眉がわずかにピクリと跳ねる。


「……恐れながらエヴリン様。当家において、主人の客人に宿泊料や食事代を請求することなどあり得ません。そのようなことをいたせば公爵家の名折れでございます」


「客とは、招く側と招かれる側の双方が合意して初めて成立する身分です。私は招かれてここに来たのではなく、閣下の独断によって連行されてまいりました。したがって私は客人ではありません」


 エヴリンは冷静に論理を展開する。


「無償の施しを受け取ることは、相手に心理的、あるいは社会的な債務を負うことを意味します。後になって『あの時助けてやったのだから』と不当な要求を突きつけられるリスクを避けるため、私は受けた便益に対して正当な対価を金銭で支払う必要があります。王都の最高級宿の相場が一日銀貨八枚ですから、この部屋の設備と軽食を考慮し、一泊につき銀貨十五枚で計算してください。手持ちの現金で即日清算いたします」


 ハインツは完全に言葉を失い、丸い眼鏡の奥の目を瞬かせる。

 長年、数多の高位貴族や王族に仕えてきた老執事にとっても、連れてこられた令嬢から「後々の揉め事を避けるため正規の宿泊料を請求しろ」と迫られた経験など皆無に違いない。


「……閣下にその旨をお伝えいたします」

「ええ、よろしく。領収書の発行も忘れずにお願いします」


 エヴリンは満足そうに頷き、残りの果実水を飲み干した。

 施しを拒み、すべてを契約と取引に還元する。これこそが他人に依存せず、自分の人生の決定権を自らの手中に留め置くためのエヴリンの鉄則だった。


   ◇


 翌朝。

 王都の東の空が白み始めた頃、クロウフォード伯爵邸の執務室では、普段とは異なる苛立ちの混ざったざわめきが広がっていた。


「おい、エヴリンがまとめていた今週の支払一覧はどこにある?」


 執務机の前に立ったエドガー伯爵は、眉間に深い皺を寄せて書類の束をめくる。

 クロウフォード家には家令もいれば会計担当の使用人もおり、伯爵家としての運営体制が整っていないわけではない。

 領地の運営や農政、専門的な法務などはそれぞれの担当者が担っている。

 しかし、エドガーやドロテア夫人はここ数年、細々とした商会との支払期限の確認、請求書の照合、贈答品の記録や親族間の借財の期日管理といった「面倒で時間のかかる雑多な帳簿実務」を、すべて長女のエヴリンに押し付けていた。


「旦那様。エヴリン様が普段お使いだった台帳はこちらにございますが……」


 家令がおずおずと差し出した分厚い帳簿を開き、エドガーは舌打ちをした。

 几帳面な文字で数字と日付がびっしりと並んでいるが、どこまでが支払い済みで、どの商会との値引き交渉が合意に至っているのか、エヴリン本人に口頭で確認しなければ判別がつかない箇所が多々あった。


「引き継ぎの覚書一枚残さずに出ていくとは、つくづく気の利かん娘だ。今日は王都の織物商と酒商の集金日だというのに、どの請求書が正当な金額なのか確認するだけで午前中が潰れてしまうではないか」

「まあ、あなた。あんな可愛げのない娘の仕事など、使用人に手分けして確認させれば済むことですわ」


 部屋に入ってきた継母ドロテア夫人が、優雅に扇を揺らしながら言う。


「あの子がいなくなって、ようやく家中がすっきりいたしましたのに。妹のコレットの支度もございます。いつまでも昨夜の勘当を引きずらないでくださいまし」

「そうはおっしゃいますが、奥様……」


 家令が困り顔で口を挟んだ。


「エヴリン様は各商会の契約更新時期や、支払いの優先順位をすべて頭に入れて調整しておられました。急ぎの請求書だけでも三件重なっておりまして、担当者が朝から照会に追われております。確認が取れるまで支払いを止めるわけにもまいりませんし……」


「ええい、少し待たせておけ! これだから商人は卑しいのだ!」


 エドガーが苛立たしげに書類を放り投げる。

 家が破綻するわけではないが、思っていた以上にエヴリンに押し付けていた実務が煩雑で、手間のかかるものだったと知り、不快感を募らせていく。

 その時、執務室の扉がノックされ、息を切らせたセドリック・ランベールが足早に入ってきた。


「クロウフォード伯爵! いらっしゃいますね!」


 昨夜の夜会での着飾った姿とは対照的に、セドリックの表情は焦燥に染まり、目の下には隈が浮かんでいる。


「セドリック殿? 朝早くからどうされたのだ」

「どうされた、ではありません! エヴリンはどこです! まだここにいるのでしょう!?」

「エヴリンなら昨夜勘当を言い渡し、屋敷から追い出したが……」

「なっ、本当に追い出してしまったのですか!?」


 セドリックは愕然として声を荒らげた。


「馬鹿な……今朝一番で父上に呼び出され、昨夜の醜聞について散々怒鳴りつけられたのです! 公衆の面前で叫んだせいで、ランベール子爵家が婚約者の口座から金を不正に引き出したという噂がすでに社交界中に広まり始め、父上からは『今日中にエヴリンと話をつけ、四百二十万ゼルの返還と口外禁止の合意を取り付けろ。できなければ廃嫡も辞さない』と厳命されたのです!」


「廃嫡!? セドリック様、そんな……!」


 物陰から顔を覗かせたコレットが、ショックを受けたように声を漏らす。

 胸元には、昨夜セドリックから贈られた真珠の首飾りが揺れていた。


「四百二十万ゼルなど、今の私に即座に用意できるはずがない! エヴリンが夜会で言っていた通り、正式に公証院を通じて返還請求を打たれ、親戚や金融業者にまで知れ渡ったら私の立場は完全に終わる! 正式な手続きを取られる前に、あの女を探し出して話をつけなければならないのです! どこへ行ったか心当たりはないのですか!」


「知るか! あんな生意気な娘、どこで野垂れ死のうと関係ないわ!」


 エドガーは声を荒らげたが、内心では冷や汗をかいていた。

 エヴリンの手元にはランベール家だけでなく、クロウフォード家の過去の金銭取引に関する書類の写しも多数保管されていたはずだ。

 もし彼女が外部の第三者や公的機関にそれらを持ち込めば、自分たちの体面にもさらなる傷がつく。

 家庭内の体面と金銭の焦りから、執務室には気まずい沈黙と苛立ちが充満していた。

 自分たちが長年「無能で可愛げがない」と見下し、都合よく雑務を押し付けていた長女が、いざいなくなってみると、どれほど厄介な爆弾を残していったのか。

 彼らはその現実をようやく実感し始めていた。


   ◇


 同じ頃。ヴァレンシュタイン公爵邸。

 朝の清々しい陽光が降り注ぐ中、エヴリンは客室を出て、一階のエントランスホールへと降りていた。

 身なりは昨夜の擦り切れた藍色のドレスのままだ。

 一晩寝たことで多少の皺は寄っていたが、エヴリンは背筋をぴんと伸ばし、昨夜の手帳を小脇に抱えて大扉へと向かっていた。


「おはよう、エヴリン。早い起床だな」


 ホールの中央。すでに朝の鍛錬を終えたのか、動きやすい上着を羽織ったオズワルドが待ち構えていた。

 黒髪を軽く拭いながら、彼は爽やかで、しかしどこか満足げな笑みを浮かべている。


「よく眠れたか? 部屋の居心地はどうだった。ベッドが合わなければ、すぐに別の寝具を手配させるが」

「十分休息は取れました。そして、ハインツに宿泊代と飲食代として銀貨十五枚を預けてまいりましたので、ご確認ください」


 エヴリンは足を止めずに言い放ち、そのまま大扉のノブへ手を伸ばす。しかし、扉の前に立っていた二人の衛兵が交差するように槍を下げて進路を塞ぐ。

 金属の擦れ合う冷たい音が響く。


 エヴリンは足を止め、ゆっくりと振り返った。


「公爵閣下。これは何の真似でしょうか」

「何の真似とはこちらの台詞だ。どこへ行く気だ」


「どこへとは? 昨夜申し上げたはずです。明日出ていくと。本日は王都登記局で身分証の再交付を受け、その後、王都公証院へ向かってセドリック様に対する債権回収の正式な手続きを行い、夕方までに賃貸アパートの契約を済ませる予定です。分刻みのスケジュールですので通してください」


 オズワルドは呆れたように息を吐き、長い脚でエヴリンの前へと歩み寄った。


「昨夜の私の言葉を忘れたのか。外は危険だと言ったはずだ。クロウフォード伯爵家もランベール子爵家も、君がどこへ行ったか血眼で探しているだろう。今外へ出れば、捕まってどこかへ連れ去られるのがオチだ」

「私が連れ去られる心配をしてくださるなら、まずご自身が私を連れ去った事実を深く反省していただきたいところですね」


 エヴリンの鋭利な正論がオズワルドの胸元に突き刺さる。だが、オズワルドは眉一つ動かさず、むしろ慈愛に満ちた瞳でエヴリンを見下ろした。


「あれは緊急避難措置だ。法の手続きなど私が代理人を立てて全て処理させてやる。君が自ら出向く必要はない。君はここで安全に守られていればいいのだ」


「私の個人情報を委任状もなしに他人に預ける気はありません。それに閣下。『守る』とは、相手の自由を奪って鳥籠に閉じ込めることと同義ではありません」


「閉じ込めてなどいない。君の安全を最優先に考えているだけだ」

「私の意思を無視して外出を禁じる行為を、世間一般では監禁と呼びます」

「保護だ」

「監禁です」


 二人の視線が空中で激しく火花を散らした。

 冷徹で隙のない公爵と、不屈のエヴリン。

 互いに一歩も引かない朝の応酬は、昨夜の馬車の中よりもさらに熱を帯びていた。



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