File69 惑星ルニールへの貨客輸送③ プロならもっと上手いに違いない
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アラートが鳴り響くと、全員が慌て、同業者や客は好き勝手に散っていった。
それとは対照的に、受付嬢達は号令と同時にピシリと整列し、対応を始めた。
俺も船に戻るために移動しようとしたが、不意に服を引っ張られた。
どうやら全員が号令に従ったわけではなかったらしい。
「なんだ?金ならやらんぞ!」
「あんたトランスポーターだから船もってるよね?」
俺の服を掴んだまま、さっきまでと違った真剣な表情で見つめてきた。
「私が世話になってる人達を乗せて欲しい!シスターとガキ共ばっかりで、船をチャーターする金なんかもってないんだ!代金は私が払う!海賊するようなクソ貴族に捕まったら虫ケラみたいに殺されちゃう!だから!だから!…お願い…」
俺のフライトジャケットを必死に握りしめ、すがるようにお願いをしてくる。
演技ではなさそうなので、これを断ったら寝覚めは悪いだろう。
「その人達がいるエリアはどこだ?」
「繁華街抜けた北エリア」
「道案内はたのむぞ」
その俺の言葉が肯定だとわかったのか、
「わかった!ありがとう!」
さっきまでのやる気の無い表情とは段違いの笑顔を浮かべていた。
普段からこの笑顔なら、人気の受付嬢は間違いないかもしれない。
そして、その北エリアに向かいながら、移動用の移動板を探していた。
板と言っているが、ここでは小型のトラックのような乗り物だ。
だが、住人が脱出に使ったのか1台も見つからなかった。
「しかしいいのか?職場ほったらかして」
「私1人抜けたって大丈夫だよ。それに、私にとってはこっちの方がはるかに大事だから」
失礼な話ではあるが、こいつがよく採用されたなと本気で思う。
ギルドの正規職員になるのは厳しいと聞いている。
なのに、彼女の勤務態度は問題だ。
まあ、家族や大事な人達を優先したいのは理解できるが。
それにしても、制服にパンプスに防災用ヘルメットに電磁警棒という、間に合わせ感満載の格好は緊張感が薄れる。
「そういえば、やけに貴族を怖がってたよな」
「私、帝国からの移住者なんだ。だから、海賊をするようなクソ貴族のやることは簡単に想像出来るんだよ」
なるほど。
実は、共和国・星域連邦共に、帝国からの移住者は少なくない。
先先代の皇帝の大改革以降、現在はかなり減ってきたものの、いまだに貴族ではない人たちを下民と呼び、自治領に圧政を加える貴族は少なからずいる。
その貴族の領地から脱出したとしても、帝国内だと捕らえられる恐れがある。
なので、共和国や星域連邦に逃げて来る者達は後を絶たない。
そんな話をしながら通路を走っていた時、進行方向から銃撃の音が聞こえた。
「あの先に、射撃場でもあるのか?」
「シスターのいる教会と商店街ぐらいしかない!」
速度を上げた受付嬢の後をついていって角を曲がると、広場を挟み、向こうの商店街側には即興でつくったらしいバリケードがあり、こちら側にプラットフォーム数台を壁に、6人の男が商店街方向にむけて、銃撃をしていた。
「あれは知り合いか?」
「ここの警備の服じゃないし、使ってる銃が共和国製じゃない」
「海賊の一味ってことか」
すぐに角に隠れ、情報のすり合わせをしていると、
「誰かいるのか?!」
海賊に気づかれてしまった。
「あんたは声をだすなよ」
受付嬢にそう指示をだすと、麻酔針の短針銃だけを角から出して、引き金を何度か引いた。
「くそっ!後ろに回り込まれた!」
当たりはしなかったが、どうやら牽制にはなったらしい。
「お前ら海賊だな!挟まれたんだから降伏したらどうだ?!」
「海賊だと?俺達は栄光ある銀河帝国の貴族だ!貴様ら下民が、俺達貴族に納めるべき物を受け取りにきただけだ!」
「皇帝は許可してないはずだが?」
「陛下も心の底では承知しておられるわ!」
なんとも都合のよい妄想を垂れ流してやがる。
そして、さっきの軍人御嬢様と違い、貴族以外を奴隷としか見ていない連中らしい。
それならそれで使える手がないでもない。
「電磁警棒を貸してくれ」
「どうすんの?」
「あんたは、喋らず姿もだすなよ」
そして、電磁警棒を受けとったと同時に、
「でてこい下民!栄えある帝国貴族であるこの俺様が直々に処罰してやる!」
腹が立つが、都合のいい台詞をくれた。
「ぐわあっ!」
俺は悲鳴をあげると、すぐに女の姿になり、フライトジャケットを胸の下まで閉めて胸を強調すると、背中に電磁警棒を隠し、さらに髪で覆った。
「さっきの男は気絶させたわ。私は抵抗はしないから射たないでちょうだい!」
そういって、ニードルガンを左手に持ち、両手を上げながら連中の前にでた。
すると、俺の姿を見た男達の顔がいやらしく歪む。
こちらを向いているのは2人、向こうを向いているのが4人。
これならなんとかなる。
「いいだろう。帝国貴族である俺達が可愛がってやる。こっちへこい」
男2人の視線が胸に来ているのを確認し、丁度いい距離になったところで、
「先に銃を渡しておく…わっ!」
「がっ!」
正面の男の顔面に短針銃を投げつけ、右手にいた男の側頭部を電磁警棒で一撃する。
「ぐえっ!」
その男の意識が飛んだのを確認しながら正面の男に振り返って、首元に電磁警棒を叩き込み、気絶したのを確認しながら短針銃を回収。
それに気が付いた残りの4人が振り返ったので、側転をしながら、連中の頭部に短針銃を撃ち込んだ。
「やるじゃん!どっかの諜報員になれるよ!」
俺が海賊を無力化したのを確認したのか、いつの間にか受付嬢が後ろに立っていた。
「ならねえよ。それにこのやり方は、古典作品の映画を真似ただけだ」
本物の諜報員ならもっとうまくやるだろう。
そう思いながらも、さっさと男にもどった。
「あ、男にもどっちゃった。そのままの方がいいのに」
「おーい!制圧したから捕縛してくれ!」
受付嬢からのチャチャは無視し、向こうの連中に声をかけた。
すると間を置かずに警官隊がやってきて、海賊達を捕縛すると同時に、俺に職務質問をしてきた。
まあ、こんな状態なら当然だ。
「あんた達はここの人間か?」
「俺はたまたまここに仕事でやってきた貨物輸送業者だよ。こっちはここの受付嬢の…」
そういえばまだ名前を聞いていなかった。
なにしろ名札を着けていないので、確認が出来なかったのだ。
まあ、個人情報の保安としては正解だが。
なので名前を聞こうとしたが、
「ねえ!教会のシスターラウバと子供共は?!」
「レイリアじゃないか!安心しろ。あそこにいる」
知り合いらしい警官と話をし、すぐに商店街のある方に走っていった。
視点変換 ◇受付嬢レイリア◇
私はバリケードを飛び越えると、一目散にシスターラウバのところに向かった。
するとすぐに、子供達や商店街の人達と一緒にいるシスターラウバを見つけ、
「シスターラウバ!」
私は全力でそこに向かった。
「よかった!みんな無事?」
「当たり前だい!俺達がついてるんだぜ!」
「海賊なんかぶっ飛ばしてやる!」
「ディックス兄ちゃんもいるもんね~」
一緒にいた子供達が、元気に返事をした。
どうやら怪我をした子は居ないようだ。
「貴女は大丈夫だったのレイリア?」
シスターラウバが心配そうに声をかけてくれる。
亡くなった私の母に良く似たこの人は、共和国での大事な人だ。
ちなみにディックスというのは、このシスターラウバの息子で、私より1つ年下。
今まさに、警察官として海賊達を捕縛している最中だ。
「ねえ、残ってる人達はこれで全部?」
私は青果店のおっちゃんを捕まえて、残っている人達がどれくらいいるか訪ねてみた。
貨物輸送業者の彼の船にだって限界がある。
「ああ。ほかの連中は避難用のボートや救難カプセルのある方に向かったはずだ」
だいたい40人ぐらいだろうか?
私は貨物輸送業者の彼に訪ねてみる。
「ねえ、これぐらいなら乗せれる?」
「貨物室でいいならな」
「脱出出来りゃいいからな!上等だ!」
私の質問に答えてくれた彼に、青果店のおっちゃんが反応する。
移動には、海賊達の側にあった軽トラを使わせてもらおう。
そこに、捕縛を終えた警官隊が戻ってきた。
「捕縛は終わった。俺達はコイツらをつれて本部に合流する」
「脱出しないのか?」
「市民が脱出する時間を稼ぐのが我々警察の仕事だ」
貨物輸送業者の彼が、隊長と話をしているのを尻目に、私はディックスに声をかける。
「やっぱり残るんだ…」
「俺は警官だからな。レイリア、母さんやみんなを頼む」
ディックスは本当に好い人だ。
私みたいな人間にも優しくしてくれる。
だからこそ、心配をさせるような事を口にだしてはいけない。
「あんたこそ撃ち殺されないでよ!」
ディックスの背中をバンと叩いて、警官隊の方に押し出してやる。
そして、警官隊が海賊達を連行していくのをみながら、自分の顔を叩いて気合いをいれる。
そして、商店街の人達と、プラットフォームのチェックをしていた貨物輸送業者の彼に向かって、
「じゃあ移動開始!プラットフォームは私が動かすから、あんたはその銃で迎撃をよろしく。そうだ、私はレイリア・ヘイブリーズ。レイリアでいいよ?」
と、忘れていた自己紹介を含めて声をかけた。
そういえば、この人の名前ってなんだっけ?
視点終了
ショウンが参考にした映像は『ダ◯・ハード』です!
久々にみたのですが…ブルー◯・ウィルスが若い!
当たり前ですが。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします
読みきりを製作しました…
なんか月間3位になってました…
ありがとうございます…
https://ncode.syosetu.com/n2702gq/




