File64 惑星ビーテンツへの貨物輸送① プライドを取るか平穏を取るか
ちょっと短めです
目覚ましの音に目を覚まし、ゆっくりと身体を起こす。
そして自分の身体を確認し、男であることを認識する。
カプセルホテルではやらないが、船では下着で寝るので、そのまま下に降りると、ポットに水を入れて火にかけ、食パンをトースターにセットしてから、シャワーを浴びて完全に覚醒する。
着替えをしてから、ベーコンエッグを作っている間に、湯が沸き、トーストが焼き上がる。
ラウンジのテレビをつけ、ニュースを聞き流しながら朝食を食べる。
それが終わるころに、搬入の連絡がはいり、停泊地の搬入用の扉が開いた。
「おはようございます。キャプテン・ライアット。サークルエイトカンパニーからの依頼品『寝具用品』です。積み込みを開始してよろしいですか?」
「ああ。よろしく頼む」
依頼品を輸送してきたのは、宇宙港の備品でもある、女性型・全身機械体アンドロイドのOHー328Tだ。愛称はミツハ。
一見すると、ビジネススーツを元にしたデザインの女性用アーマーを着た人間のようにみえるが、れっきとしたアンドロイドだ。
顔はティラナと違ってのっぺらぼうではなく、口も開けば、目の部分にはレンズの目がちゃんと備わっている。
数多くいる貨物搬入用アンドロイドの一体だが、他の貨物搬入用アンドロイド達と違い、高級品の電子頭脳が搭載されているため、ティラナと同じくらい表情豊かで性格もいい子だ。
そのためか、貨物輸送業者ではちょっとした人気者になっている。
ちなみになぜこの子だけ高級品の電子頭脳が搭載されたのかは、色々な推測がなされているが、真相は謎だ。
「そういえば、暫く休暇をお取りになっていましたね?」
「ああ、体調不良でな」
「え!?大丈夫なんですか?」
ティラナと違い、目や口のパーツがあるため、その時のミツハの感情は実に分かりやすく、彼女が本気で心配しているのがさらによくわかる。
「まあな。お陰様で全快したよ」
「ご自愛くださいね」
これで身体がバイオ体だったら、確実に襲われるか拐われるかしているだろう。
何しろアンドロイドはどれだけ精巧でも品物扱いになるので窃盗にしかならないために、罪が軽いのだ。
そんな話をしているうちに、積み込みが終わった。
「では、私はこれで失礼いたします。お気をつけていってらっしゃいませ!」
受け取りサインをもらうと、運搬用ドロイド達を引き連れて、次の仕事に向かっていった。
ミツハが出ていったあと、船外のチェックを済ませてから貨物室以下全ての箇所をチェックの後、扉を閉め、操縦室に座り、管制塔に通信をいれる。
「管制塔。こちら登録ナンバーSEC201103。貨客船『ホワイトカーゴⅡ』。出港許可を求む」
『こちら管制塔。『ホワイトカーゴⅡ』出港を許可する。暫く休んでたんだってな。実は俺もなんだよ』
応答したのはコビーだった。
やけにうきうきした様子で、顔は満面の笑みを浮かべていた。
これはヤバい。
「了解、管制塔。アンタの場合は奥さんのための休暇だろ?病気療養の俺とは違うさ」
『でも休んでたってのはいっしょだろ?でよ、その休みの間になにがあったと思う?』
「あー悪い。急ぎの荷物だからもうでるわ。エンジン点火。微速前進」
『なんだよ~ちょっとは聞いてくれよ~』
あの話は長くなる。
間違いなく奥さんとの惚気話だ。
以前は夫婦喧嘩をしていたせいで少しは静かだったが、またあのうざさが戻ってきた。
そもそもなにが原因で歯を折られたのかがいまだに謎だ。
通信を切り、船を前進させる。
「超空間跳躍の座標軸固定。目標惑星ビーテンツ。エネルギーチャージ開始」
その間も船はゆっくりと進んでいく。
以前は気にすることもなかったが、窓の外をなんとなく気にしてしまった。
そのうちにチャージが終了したので、
「エネルギーチャージ完了。超空間跳躍開始」
空間が歪み、超空間のトンネルに突入する。
「超空間に侵入。これより自動航行装置に移行する」
これから3日間、トラブルがなければ平穏な航海になるはずだ。
と、思っていたのは初日だけだった。
2日目の昼過ぎ、救難カプセルの位置信号を受信してしまったからだ。
宙航法では、こういった救難カプセルは必ず回収することが義務付けられている。
だがここ最近、救難信号や、こういった類いのものにはいい記憶がない。
もちろん、見なかったことにしてスルーするやつもいる。
中には、遭難者を装った海賊や強盗って可能性もあるからだ。
しかし見捨ててしまっては寝覚めが悪いし、法を犯す事にもなる。
なにより船乗りとしてのプライドが、救難カプセルの回収をするべきだと主張している。
仕方なく超空間から脱出し、カプセルの元に急いだ。
超空間から通常空間に出てから20分。
宇宙空間にただよう救難カプセルを発見した。
船をカプセルの進行方向を塞ぐようにして止め、宇宙服を着てからハッチを開ける準備をする。
荷物全てを完全に固定してから、重力発生装置を切り、貨物室内部の空気を船外と同じ真空状態にする。
それが終了すれば、ハッチを開け放したままで、救難カプセルに近づいていく。
この時下手をすると、救難カプセルに衝突されてしまうので、正面ではなく側面から近づいて、カプセルづたいで前に回り、バーニアを噴射させ、カプセルを停止させる。
そのまま船の後部まで引っ張っていき、貨物室に救難カプセルを入れて固定する。
その後から空気を注入。重力発生装置をONにする。
これで救難カプセルの回収は完了だ。
コールドスリープ式のカプセルの様だし、とりあえずビーテンツまではこのままにさせてもらおう。
そうおもっていたのだが、救難カプセルがいきなり起動し始めた。
どうやら、カプセル周囲の状況を自動でチェックし、覚醒させるシステムが搭載されていたらしい。
そうしてそのなかからでてきたのは、ちっちゃいおっさんだった。
用語説明
アンドロイド:いわずと知れた、人造人間の総称。
無機物で製造された機械体を「アンドロイド」
有機物で製造された細胞体を「バイオロイド」
両方を使用した混合体の3種類を基本とします。
ほかにもさまざまな種類・名称がありますが、ここではこの3種に限定させていただきます。
基本的に、生身の人間が活動するには困難な場所での作業や繰り返しの単純作業。
人間が嫌がることや、大量の人手が必要な場合に使用されます。
搭載される電子頭脳のグレードによって、行動や反応が変わり、学習によって人間のような反応をするようになります。
しかし、アンドロイドはあくまでも『物品』扱いで、暴行・殺害・誘拐をしたとしても、器物破損・窃盗などの罪しか問われません。
◇サイボーグとの違い
アンドロイドは、細胞体を使用し、どれだけ人間そっくりでも『ロボット』であり。
サイボーグは、全てが機械であっても人間です。
その決定的な違いは『脳』です。
生体脳なら人間
電子頭脳ならアンドロイド
という区別になります。
実際には、
じゃあ人間の記憶を電子頭脳に入れた場合は?
アンドロイドに培養した生体脳を入れた場合は?
クローンはどうなんだよ?
バイオロイドを人間として育てた場合のそいつの人間としての定義は?
など様々なパターンがありますが、
長くなる&専門的な話になる&倫理問題になってややこしい
などの理由で省略いたしたく思います。
いまのところ、格好いい人・だらしな可愛い人を出したいと考えています。
が、なかなかまとまりません…
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




