File63 惑星オルランゲアでの休暇⑮ 偉い人は子供っぽい
ちょっと長め
誤字報告ありがとうございます。
「もしもし…」
『こんにちわショウンさん。記事を拝見しましたよ。って、どうしたんですか?なんだか疲れてらっしゃるようですが?』
相手はリキュキエル・エンタープライズ社副社長・レイアナ・リオアースだった。
どうやら俺の声のトーンで、今の俺の状態を察したらしい。
それはともかく、先ずは聞いておかないといけないことがある。
「いや、なんでもない。ところで、ひょっとしてお前さんも『料理の顔』でわかったとか言う口か?」
『いえ、食器とテーブルクロスと記事の内容から推測しただけですが?』
「そうか…」
こっちの事情を知らない御嬢様には、かなり混乱させてしまったらしい。
しかし良く考えると、食器とテーブルクロスと記事の内容から推測できた、レイアナとササラの方がとんでもない気がする。
『ともかく!これでますますショウンさんを専属料理人として迎え入れたくなってきました!』
「嫌だっての」
だが、話してくる内容は前の2組と一緒だった。
しかしそこからが、前の2組とは違っていた。
『貴方の勧誘が簡単にはいかないのは理解していますよ。でも気をつけてくださいね?金の亡者のなかには、少しでもお金になりそうなものに群がってくる連中がいます。そういう連中は『会話』が出来ないんですから』
「要求を突き付けて、断れば実力行使。か?」
『はい。スターフライト社も最近は怪しいですし、他にも怪しい組織がありますから』
どうやら心配をし、情報まで寄越してくれた。
この副社長御嬢様がリキュキエル・エンタープライズ社の将来のトップだというのは、社員達にも客達にも幸運な事なのかも知れない。
「忠告ありがとうよ。でも、それを言うなら子供のお前はもっと気を付けろよ」
『私にはボディガードのトーマスがいますから!』
あの変態執事は、言動はともかく腕はたしかなので、心配はないだろう。
何より会社自体が彼女を守るはずだ。
「やっぱり来たね」
「いやな予想どおりだ」
出来ればこれ以上連絡がないことを祈りたい。
ともかく、情報を広げないようにだけお願いしたところ、しっかりと報酬だけは要求されてしまった。
満面の笑みを浮かべ、『では、ハンバーグをお願いします!』と言うあたりは、まだまだ子供だと言うのがよくわかる。
「それにしてもモテるねえ」
「俺の『料理』がな」
俺は間違ってもロリキラーじゃあない。
ガキに懐かれるのは料理のせいだ。
「とりあえず情報は秘匿しておくよ。受付嬢としては当然の対応だしね」
「たのむ…」
ササラは、俺の心情を理解してくれたのか、ありがたい対応をしてくれた。
この辺りが、彼女が主任になった理由のひとつなのだろう。
「そういえば、回復したばっかりでなにしにきたのさ?」
「明日から本業復帰するために、仕事を受けにきた」
ミルトシュランテ関係のせいですっかり忘れてたぜ。
「あ、そうなんだ。じゃあカウンターに戻ろうか」
ちなみに、受付嬢とこうやって2人で部屋に入ったとしても、噂は一切されない。
と言うか、色々な相談をするやつが結構いるので、いちいち噂になることがないのだ。
ちなみに、常連は『借金女王』のアルニー・エスフォルだ。
割りのいい仕事はないかとか、借金の利息過払い請求とか、金の無心とかの相談?をしているらしい。
以前見かけたときは、ミィミスにすがり付き、引き摺られながら面談室からでてきたところだった。
ちなみにその時、ミィミスのスカートの留め具を破壊してしまい、彼女をあられもない姿にしてしまったため激怒され、割りのいい仕事を回して貰えなかったらしい。
ササラは、カウンターに到着すると、すぐさま依頼を検索しはじめる。
「これなんかどう?惑星ビーテンツへの高級寝具の輸送。ベッドじゃなくてマットレスやシーツや毛布や布団がメインみたい」
「ヤバいもんじゃ無さそうだし、それにするよ」
「了解。明日の9時、No.500だね」
「ああ、よろしく」
こうして俺は、ようやく日常にもどってくる事ができた。
視点変換 ◇フィナ・ヴルヴィア◇
今日は久しぶりのお休みな事もあって、自室でのんびりしていたところ、
「御嬢様ーっ!」
メイドのマリエラが血相をかえて部屋に入ってきました。
「どうしたのマリエラ?血相変えて」
「これっ!これ見てくださいっ!」
マリエラは、自分の汎用端末の画面を見せつけてきます。
それは、ドラコニアル人の95%が閲覧している、
「ミルトシュランテのホームページ?」
でした。
そういえば今日はまだ見ていませんでした。
「コラム!コラムを見てください!」
マリエラの言う通り、コラムのコーナーをみてみると、料理の写真とその時の出来事が書いてありました。
そして私は、その写真を見て衝撃をうけました。
「これ…」
「ですよね!ですよね!」
マリエラは興奮した様子でその写真を見つめています。
この写真に写っているお料理は、間違いなく以前お世話になったショウン・ライアットさんのものです!
以前には出して貰ったことのない晋蓬皇国のお料理でしたが、食器とテーブルクロス。それと『料理の顔』を見て、間違いないと確信しました。
ミルトシュランテに掲載されるということは、相当な名誉です。
これはすぐに連絡をいれて祝辞をのべ、食事の予約をするべく連絡をしなければいけません!
しかし私は、重大なことを見落としていました。
「どうかなさいましたか御嬢様?」
「そういえば、ショウン・ライアットさんの連絡先を知りません…」
私はその事実にがっくりと肩を落としました。
「サラフィニア・ドラッケン様ならご存知なのでは?」
なので、マリエラの言葉はまさに神の啓示のようでした。
私はすぐに、友人であるサラフィニア・ドラッケンに連絡を取りました。
「もしもしサラ!」
『あらフィナ。どうしたの血相変えて』
「ショウンさんの連絡先を教えて!」
私の剣幕に、サラは一旦は驚くものの、直ぐにそれが、どういう連絡なのか理解してくれました。
『ああ。コラムを読んだのね。教えてもいいけどなにがしたいの?』
「お祝いと、お料理の依頼をしたいの!お願い!」
『う~ん。あんまりおすすめしないわよ』
私は必死に懇願します。
しかし、サラの表情は芳しくありません。
「どうして?コラムといえど、ミルトシュランテに取り上げられるのは、料理人としては物凄く名誉な…あっ!」
私は理解してしまいました。
ショウンさんがこの記事を見て喜ぶかどうかを。
『そう。ショウンは料理人じゃなくて貨物輸送業者。料理人扱いすると怒るわ。危うく2度とご飯を作ってくれないところだった…』
私はサラの言葉に、一瞬言葉を失った。
ドラコニアル人の私達にとって、あれだけの食事を食べられなくなるのは、拷問に等しい。
「それは…本当に危ないところだったわね…」
『ええ。直ぐに謝ったら許してくれたけれど、もしあのままだったらと思うと…』
そのあまりの恐怖に、サラはもちろん、私もマリエラも身体が震えた。
『だから、情報の拡散も嫌がるからやめたほうがいいわね』
「そう…じゃあ連絡はしない方がいいわね」
そう話がまとまった時に、私の部屋の扉をノックする音が響きました。
「姉上。この前の運び屋の連絡先を…あっ?サラフィニアさん!」
入ってきたのは弟のカリスでした。
『こんにちはカリス』
「こ…こんにちは。お久しぶりです!」
『祭りの時にあったばかりじゃない』
「あはは!そうでしたね!」
カリスは、姉の私から見てもイケメンで、父の事業の手伝いでも手腕を発揮するエリートなんだけど、昔からサラに憧れているみたいで、今でも緊張するみたいなのよね。
で、そのままでは話が進まないから、私が水を向けることにします。
「それよりカリス。なにか用事?」
「あっ、ああ。実は、この前の運び屋のショウン・ライアットの連絡先をしらないかなと思って」
『姉弟揃って考えることが一緒ね。悪いけどおすすめしないわよ。料理人扱いは嫌がるし、情報拡散とかしたら2度とご飯は作ってくれなくなるわよ』
その質問には、私ではなくサラが答えてくれました。
「え?」
するとその答えをきいた瞬間、カリスの顔色が変わりました。
「カリス…貴方まさか…?」
「友達にしってるって言っちゃった…」
その瞬間、空気が凍結しました。
この事実がショウンさんに知れた時、私達は2度と食事をご馳走して貰えないでしょう。
「さようならカリス。私達は今日から他人よ」
「ちょっ…姉上?」
なので私は、彼とは他人になることにします。
『私は関係ないからね。じゃあまたね』
「サラフィニアさん!?」
そういうと、サラは早々に電話を切ってしまいました。
私は静かに席を立つと、リビングに向かう為に、呆然とするカリスを横目に、自室を後にしました。
「カリス様。早く御自宅に戻られたほうがよろしいのでは?」
私と一緒に部屋を出たマリエラも、カリスを見限ったようです。
とはいえ、本当にショウンさんがお怒りなら、一緒に謝ってあげることにしましょう。
視点終了
今回で、男にもどれない生まれ故郷での休暇編は終了です。
さて…次はどうしよう?
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