File58 惑星オルランゲアでの休暇⑩ 周りの人達
ちょっと長めです
視点変換 ◇孤高たる男達の会・会長◇
我々孤高たる男達の会は、己を磨くために、宇宙港の外壁清掃のアルバイトをはじめた。
そこは漢の世界。
深淵たる宇宙に身をさらす危険な職場だ。
なのになぜっ!
糞リア充サークルが参加しているっ!
しかも同じ大学のっ!
あいつらがバイトをするなら、お洒落なカフェとかホストかキャバ嬢だろ!
なんでこんなバイトやってるんだ!?
さらには、男だけの職場かと思っていたのに、おばちゃんや女の人も意外と多かった。
ともかく!
あの糞リア充サークルは徹底的に無視だ。
そして我々は作業の間中、リア充どもへの怨嗟と、孤高たる漢がどれだけ素晴らしいかを語り合った。
そしてその昼休憩の時間。
運行管理区画にある職員用の食堂で、我々はとんでもないものをみてしまった!
それは、集合場所にいた時に見かけた、我が推し剣姫の1人であるオオキタ・ソーナにそっくりの美人が、ベテランのおっさん達と楽しそうに食事を取りながら談笑をしていたのだ!
なぜだ?!
なぜあのおっさん達はあの美人とあんなに仲良さそうに会話してるんだ?!
あんなおっさん達でも楽しく会話できるなら、俺達だってできるはずだ!
そうして、彼女が昼食のランチプレートを返却口に返しにいった時に、声をかけようと、なけなしの勇気を振り絞り、彼女に近づいていった。
しかし、
「ねーねー。君、1人で参加してるよね?」
「あんなおっさんと話してないで、俺達と一緒に居なよ」
「おっさんどもに絡まれて大変だったっしょ?」
あの糞リア充サークルの糞イケメンども3人が、彼女に話しかけた。
どうせ彼女も、あの連中にホイホイついていくんだろう。
やっぱりソーナちゃんは画面の向こうにしか居ないのだ…。
そう思っていたのだが、
「邪魔だ」
彼女はそれだけ吐き捨てると、ランチプレートを返却し、食堂をでていった。
残された糞イケメンどもは、連れの女共はもちろん、たまたまいた職員達にもに笑われていた。
ざまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
なにが『おっさんどもに絡まれて大変だったっしょ?』だ、お前らに絡まれたほうがよっほど迷惑だったみたいだなぁ!
やっぱり彼女はソーナちゃんだったのだ!
お前らみたいなチャラい連中なんか眼中にねえんだよ!
これで昼からの仕事にも張りが出るってもんだ!
視点返還 ◇ショウン・ライアット◇
午前中は自分の未熟さを痛感し、昼飯の時にはチャラいのに絡まれ、午後からはおっちゃん達の下らない話をしっかりと聞きながら、担当箇所の掃除を終了させた。
そして、その日の作業が全部終了すると、本日が初日のメンバーが、責任者のゴルトーさんに呼び止められた。
「えーと。本日のみの人は管理部環境維持科の受付で給与を受け取ってね。続ける人は私に申請してください」
ということなので、とりあえずオーバーホールが終了する日までは続ける事にした。
そして、晩飯をどうしようかと考えながら、カプセルホテルや繁華街のある2階層・生活施設区画に向かっていたその時、見ただけで不愉快になる奴の姿を見かけてしまった。
名前はジザン・ヤウサル。
中肉中背で髪は黒。タレ目で常に下卑た笑みを浮かべている。
同業者ではあるが評判が悪く、組合でも問題視している奴だ。
他者に対して常に高圧的で、挑発に罵詈雑言はあたりまえ。
自分を美化しての自分語りからの言いがかり。
気の弱そうな奴をみつけては、金を脅し取ったり、理不尽に殴り付ける。
そのくせ、俺・キャシー・サム・ウッドベイルといった荒事に慣れている面子や、ウィオラ・ザバルやホーゼンのおっさんのような、それなりの勢力をもってる連中には手だしして来ない臆病者の上に卑怯者だ。
なにより、以前に出くわした、海賊に成り下がった『ガズン兄弟』が可愛らしく思えるほど、それ以上にヤバイことをしているが、組合から除名されたり、GCPOに捕まったりしていないのは、決定的な証拠がないだけ。という噂がある。
幸い向こうはこちらを見つけてはいないらしい。
戦闘で負けることはないが、あいつとの会話は胸くそが悪くなるので見つかりたくはない。
なので、バレないようにさっさとその場を離れた。
翌日からは、少しはスッキリした気分で外壁掃除に集中出来た。
昨日の様なことにならないために、おっちゃん達のくだらない会話を聞きながらの清掃が、意外と楽しいと感じる。
それはまるで、遥か昔に存在した、音声だけで様々な情報やエンターテイメントを提供していた『ラジオ放送』と呼ばれる文化のようにも思えた。
昼休みになって昼食もおわり、昼からはおばちゃん達のチャンネルを聞いてみようかなとか考えていると、
「ちょっといいかしら?」
昨日のチャラい連中の仲間内ではない女性達が声をかけてきた。
そのメンバー全員が、美人ではあるがやけに意思の強そうな目をしていた。
こういってはなんだが、こんな外壁清掃を選ぶような雰囲気じゃない。
どちらかといえば、医者だの弁護士だのといった雰囲気の方がしっくりくる感じだ。
「なにか用…ですか?」
ちなみに彼女達とは一切の接点はない。
なんなのだろうかと考えていると、ラフィム人でリーダーらしいのが、いきなり平手打ちを放ってきた。
食らってやる必要もないので、手首を狙って肘を当ててやる。
「きゃっ!」
リーダーの女は、手首を押さえながら表情を歪めた。
「よくもやったわね!」
「いや、よくもやったわねって、いきなり殴りかかってきたのはそっちだろう」
自分から殴ろうとしてきたくせになにをいってるんだ?
「貴女みたいなのがいるから女性の地位が向上しないのよ!」
時代錯誤過ぎるだろうこいつら。
今現在、男女での雇用格差だとか待遇差別は皆無だ。
評議員の半数は女性だし、女性経営者だって山ほどいる。
何よりこの職場にだって、女性はたくさんいる。
「私がなにかしましたっけねえ?」
まあ、こいつらがどんな主張をしようが構わないが、喧嘩を売られる理由が分からない。
「貴女、この職場の男性に媚びを売ってるでしょう!止めてくれないかしらそういうの!」
「ひょっとして、昨日おっちゃん達と話してたり、チャラいのにナンパされたことか?」
「そうよ!」
「おっちゃん達は話が合うだけだし、チャラいのは向こうが声をかけてきただけだぞ?」
「それが問題なのよ!貴女のせいで、私達が正当に評価されないでしょう!」
「は?」
一瞬頭が真っ白になった。
しかしすぐに、リーダーの言葉を理解した。
「いやいや!俺の行動に問題があるんだったら、俺の評価が下がるだけだろう?なんであんた達が正当に評価されないことにつながるんだ?」
訳がわからない。
なんで俺のせいでこいつらの評価がさがる話になるんだ?
「とにかく!これ以上私達の邪魔はしないでちょうだい!解ったわね!」
リーダーは手首を擦りながら、取り巻きと一緒にどこかに行ってしまった。
その日の午後は、おばちゃん達のチャンネルに入ったのだが、出てくるのは、旦那の愚痴・子供の愚痴と悩み・持病の悩み・安いマーケットの情報・流行りのドラマといった、まさに井戸端会議といった内容で、おばちゃん達は絶対に宇宙に溺れる事は無いなと確信した。
視点変換 ◇男を手玉にとる才女の会・会長◇
まったくなんなのよあの女!
本来なら、昨日の昼にはあのおっさん達に飲み物でも差し入れて印象を良くしようと思ったのに、あの女が全部やってしまって入り込む隙がなかったし。
本来ならナンパされるのは私達なのに、あの女がいるせいで相手にもされなかった。
だから一発殴ってやろうとしたら、肘で手首を強打されてしまった。
私達と同じ女子大生だったらあんなことができるわけがない!
もしかしたら、あの女は賞金稼ぎで、潜入捜査でもしているのかもしれない。
だとしたら、この職場に犯罪者が居るってことになるわ!
多分あのキモオタっぽい集団ね!
本当はあと3日は続けるつもりだったけど、今日で終了ね。
幸い1日区切りにしてあったから問題は無いわ。
それに、ここには利用価値のある男は居なかったしね。
早いとこ次のところにいって、利用価値のある男を探さないとね。
視点終了
用語説明
前回乗せ忘れた分も掲載します。
C-251ガス地帯:惑星オルランゲアの近くにある星間ガス集積地帯。
星間ガスの成分の中に、アルゴンガスが含まれているため、肥大化を防ぐ意味でも採取が行われている。
トイレ事情:コロニーや宇宙港や宇宙船は、無重力状態になることが前提なので、吸引座席式(洋式)の便器で統一されている。
色々な設定がユルガバなので、『ここどうなってんの?』と、気になるところがありましたら、ご指摘お願いいたします。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




