File258 惑星キストリーデへの貨物輸送② 選挙活動には意外と禁則事項が多いらしい
惑星キストリーデは大きな特徴の無い平凡な居住可能惑星であり、居住するには環境の良い惑星だ。
そのため住人が多い。
つまり、選挙で票を確保するためには、アピールに来て損のない惑星なのだ。
するとどうなるか?
評議員補充選挙の候補者や支援者が大勢押し寄せるということになるわけだ。
「新たなる評議員には! ぜひとも私! カーラ・ジルナスを!」
「皆様の大切な一票を私に、このニルディアナ・ヴァイオレットにお預けください!」
『この共和国には、優れたリーダーが必要なのです! それこそが! 我が友、トニー・ヨーゼフ・アームスチンなのです!』
街頭での演説や、街頭ビジョンでの応援演説など、宇宙港内部でもこれだけやかましいのだから、惑星上はもっと騒がしいのだろう。
この評議員補充選挙は、全ての候補者に自由な投票が出来るので、自分の住んでいる惑星以外の候補者にも投票ができるシステムになっている。
流石にアンドロイドやバイオロイドには選挙権はない。
これを与えてしまうと、不正のやりまくりになってしまうからだ。
それにしても、俺達が惑星キストリーデの宇宙港に到着したのは午前7時。
それから荷下ろしや受付での手続きを済ませての、現在の時間は午前8時30分。
ちょうど通勤時間帯で、人の行き来が多いから、熱心に街頭スピーチをやるのは当然と言えば当然だ。
その賑やかさは、フードコートに到着しても変わらなかった。
立体映像の公告は全て候補者の宣伝ポスターに変わり、備え付けのビジョンからも候補者演説や応援演説が流れている。
ちょっとしたノイローゼになりそうだ。
そんなフードコートからの帰り、街頭選挙演説をしている候補者の集団の中に、見知った人物を見つけた。
それは中学のときの同級生であり、現段階での最年少評議員であるウィルティア・ルナーシュ評議員閣下だった。
彼女は老齢の女性の応援演説をしていて、そののぼりにはチヨコ・ツキシマとかいてあった。
そして意外なことに、その老齢の女性にもなぜか見覚えがあった
「マスター。あの方は惑星メレンデレクで砂嵐を予言した方では?」
「あ、そうだ! あの時のばあちゃんだ!」
意外な再会? に、俺達が驚いていると、ルナーシュ評議員がこちらを見つけて手を振ってきた。
が、急に驚いた顔をしたあと、こちらを睨みつけてからそっぽを向いてしまった。
どうかしたんだろうか?
まあ、選挙活動の邪魔をするわけにもいかないので、そのままその場を後にした。
しばらくの間、到着したらすぐに依頼を受けてすぐに出発することが多かったので、今回は一晩休んで、明日の朝に仕事を受けることにした。
オーバーホールの間休んでいただろうと言われるかもしれないが、早めに出発することが多かったのも真実だ。
しかし、正直この惑星キストリーデは住宅街が多く、観光施設はほとんどない。
その代わり生活するには物凄く環境がよく、学校・病院・警察・消防は充実し、交通機関はバス・タクシー・電車・地下鉄・路面電車などが充実している。
高級住宅街もあるらしく、一説ではその高級住宅街が観光資源になっているという。
俺としては他人様の家を鑑賞する気はないので、宇宙港内での生鮮食品の買い出しと、書店やゲームショップでの時間つぶしのアイテムを探したりしていた。
そうして正午近くになったときに、なぜかルナーシュ評議員から電話がかかってきた。
『お久しぶりです、ライアットさん』
画面に現れた評議員殿は、なぜか不機嫌そうだった。
「お久しぶりですルナーシュ評議員。もしかして補充選挙関係のお電話ですか? そういうお電話なら違反になりますよ」
評議員である彼女が、応援演説以外で投票のお願いなんかをした場合、影響力か大きいのでしてはいけないことになっている。
勿論彼女だけでなく、全評議員がやってはいけないわけだが。
『あ、いえ! そうではなくてですね……その……一緒にいた人は彼女さんですか?』
選挙違反を疑われたためか、ルナーシュ評議員は物凄く慌てたあと、急に小声でもじもじと質問をしてきた。
一瞬質問の意図がわからなかったが、どうやらアディルの事をいっているらしい。
「一緒にいた人? アディルのことですか?」
『そのアディルさんという人とはどこまでの関係なんですか?』
ルナーシュ評議員は前のめりになり、声を荒らげて質問をぶつけてきた。
「アディルはバイオロイドですから、書類上は所有者と所有物という関係ですかね」
なぜ彼女がアディルと俺の関係を気にするかはわからないが、答えておくことにした。
『所有物……? て、バイオロイド?』
「ええ」
『なんだ……そうだったんですね!』
アディルがバイオロイドと聞くと勢いが治まり、急に雰囲気が柔らかくなった気がするのは気の所為だろうか。
それからアディルと行動を共にすることになった経緯を説明すると、
『そんなひどい業者が居るんですか? アンドロイドやバイオロイド達をなんだと思っているんですか!』
と、怪しんでいた態度から一変し、アディルを放置して処分しようとした業者に対して怒りをあらわにした。
その怒りが収まるのを見計らって、俺は彼女に質問を投げかけた。
「それで。補充選挙関連でなければ何のお話ですか?」
『うっうん! はい。実は同窓会の話でして』
評議員殿は軽く咳払いをしてから、物凄くいい笑顔で俺の質問に答えてくれた。
「同窓会の連絡は来てませんが?」
が、俺には聞き覚えも縁もない話だった。
『幹事の人にたまたま会うことがあって、教えてもらったんです。そろそろ連絡が来るはずです』
俺の実家は既にないし、仕事柄捕まりにくいから、そういう連絡はどうしても滞りがちになる。
しかも俺は高校に行ってないから、そういう連絡そのものが少ない。
「そういえば卒業してから1回も行ってないな」
『参加しませんか? 会いたい人とかいるなら』
「委員長とはこの前会ったし、ケビンのやつとはよく会うしな……」
高校大学ならともかく、中学は割と疎遠になるはずだろうに、意外とクラスメイトに出くわしているのは運が良いのか悪いのか。
「そうだな。タイミングが良ければ参加するよ」
「それは良かったです!」
俺にとっては確約出来ない話なのだが、評議員殿はやけに嬉しそうな表情を浮かべていた。
そうして宇宙港で1泊した俺達は、のんびりと銀河貨物輸送業者組合の貨物配達受付にやってきた。
次の目的地は、同窓会のことを考えてもソアクル 方向がベストだろう。
距離は約600光年。
所用フライト時間は、距離が10分の1になる超空間航法を使用し、時速1光年で移動すれば、所要時間は2日と12時間になる。
それを踏まえて依頼を探すと、それなりのものが見つかった。
そしてカウンターを離れ、貨物を受け取るべく停泊地に向かおうとしたとき、
「すみませんライアットさん。ちょっとお待ちいただけますか?」
受付嬢に呼び止められた。
「なんですか?」
「実は、ソアクル行きの便乗の要請があるんです」
お客も乗せれる貨客船としては、よほどな客でなければ乗せるのもやぶさかではないが、最近は便乗にあまりいい記憶がない。
お客に問題がなくても、外部からトラブルがやってくることが多々あったからだ。
「どんなお客さんなの?」
「女性が3人で、ビステルト人(獣人種・哺乳類動物)の鼬種の方とインセクティア人(昆虫人)で蜘蛛種の方とラフィム人(有翼人・鳥人種)の人達です」
そのあまりのまとまりの無さに、一瞬言葉を失った。
久しぶりの掲載です
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