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File259 大変なことも知恵と工夫でなんとかなるもの

タイトルを変更しました

 とはいえ、断る理由として『気が乗らない』は不誠実なことこの上ない。

 向こうだって何かしらの理由があって便乗を希望しているのだからな。

「わかりました。条件としては、こちらの指示には必ず従うこと。船の移動速度に関して口出ししないことの2つが守れるならOKと言っておいてください」

 なので、いつもの便乗の条件を提示した。

 これに納得がいかないなら断るだろうし、文句を言ってくるなら乗せなければいいだけだ。

『わかりました。そのようにお伝えします』

 受付嬢はゴニョゴニョと先方と話し合い

『了承するそうです』

 と、告げてきた。

「じゃあ貨物の搬入があるから、1時間後に指定の停泊地(アンカーレイジ)に来るようにお伝えください」

 向こうがこちらの条件を飲むというなら拒否する理由はない。

 

 そうして搬入が終わったころ、その例のお客さん達がやってきた。

 1人は、緩いウェーブのかかった金髪をポニーテールにした、背中に白い羽毛の翼のあるラフィム人の女性。

 もう1人は、茶色の背中まであるロングヘアに、小さく丸い耳のある、ビステルト人(獣人種・哺乳類動物)の鼬(タリド)種の女性。

 そして最後は、赤毛のストレートロングヘアで前髪ぱっつんで褐色肌のインセクティア人(昆虫人)の蜘蛛(シュピーナ)種の女性だったのだが、なんと彼女は下半身が巨大な黒い蜘蛛の状態だった。

 インセクティア人(昆虫人)やビステルト人(獣人種・哺乳類動物)のなかには、このように半人半獣や半人半虫の姿に変身することができる人たちがおり、シュピーナ種はこのような半人半虫、いわゆるアラクネになることができるわけだが、普段はちゃんと人の姿をとっているはずだ。

「私はルイ・デラグナー。普段は消防のレスキュー部隊で働いてて、この姿なら垂直のガラスとか平気で登れるから、レスキューの時によくなってたんだけど、なんか突然人間の姿に戻れなくなってさぁ」

 本人は軽い口調で話しているが、これは以前俺が女の姿のままで固定されたのと同じような症状だ。

 俺の場合は性別が入れ替わるだけだが、彼女の場合、建物への侵入や睡眠などに関して不便が生じるだろう。

「私は星立病院の看護師のシュレーネ・アンヘイリアともうします。星立病院の看護師をやっています。彼女のこの症状ですが、ホルモンの影響だろうということで、ソアクルにいる専門医の先生のところで治療することになったんですが……」

 緩いウェーブのかかった金髪をポニーテールにした、背中に白い羽毛の翼のあるラフィム人のシュレーネ・アンヘイリアさんだが、流石に看護師の格好はしておらずスーツ姿だ。

「こいつが定期便の個室の予約を忘れやがってよー」

 そして、文句をいうデラグナーさんと一緒に、もう一人を睨みつけた。

「だからごめんなさいって言ってるじゃない!」

 背中まである茶色のロングヘアに、小さく丸い耳のある、ビステルト人(獣人種・哺乳類動物)の鼬(タリド)種の女性、リアナ・レイドルトさんは、2人の視線に怯えながら後ずさっていた。

「私の同僚のリアナ・レイドルドです。彼女のミスで定期便の個室が取れず……」

 アンヘイリアさんの同僚というからには彼女も看護師なのだろう。

 たしかにデラグナーさんの状況を考えれば、広い定期便は乗り込みやすいし、個室をとれば他の客への影響も少ないだろう。

「なるほど。それで同じ方向にいく貨物船(わたしのふね)に同乗を頼んできたと。事情は理解しました。しかし上のラウンジにはいれますか?」

 こちらとしては拒否する理由はないし、最悪貨物室があるが、入れるならラウンジの方がいいだろう。

 そう思って尋ねてみると、

「「「ラウンジ?」」」

 3人とも驚いた表情をしていた。

 どうやら貨物室での宿泊を覚悟していたらしい。

「この船は貨客船なんですよ」

 

「「「お〜〜!」」」

 ラウンジに入った3人は感嘆の声をあげた

「定期便の個室より広い!」

「立派なコテージみたいですね」

「奥には客室とお風呂があるわよ!」

 デラグナーさんには、ベッドやピンボール台を搬入した時に使った、ラウンジ入り口部分の貨物用搬入用の扉をあけ、縦になって入ってもらった。

 とはいえ……客室はさすがに無理なのでどうしたものかと考えていると。

「ここに糸で寝床作らせてもらっていい?」

 デラグナーさんがラウンジの天井の隅から、提案をしてきた。

 自分の糸を使って寝床をつくるわけか。

「構いませんよ。でも、シーリングファンには気をつけてくださいね」

「りょーかーい♪」

 そういった彼女は、ラウンジの天井の隅に、よく見る蜘蛛の巣ではなく、燕の巣のような寝床を作り上げた。 

 その材料の糸は、蜘蛛の下半身からだけではなく、指先からも出るようだった。

「あー。これだけ空間があると楽だわ〜〜」

 デラグナーさんは、十分な広さの寝床ができてご満悦のようだ。

「いいな〜〜私にも作ってよ!」

 その快適そうな寝床を見て、レイドルドさんがおねだりをしたところ、

「おめーはちっとは反省しろ!」

 と、デラグナーさんに叱られた。

「なによ! 私がミスったおかげでこんないい船に乗れたんじゃない!」

「それは結果論でしょ。貴女がミスしたのは間違いないんだから」

「うっ……」

 レイドルドさんが自分の失敗は失敗ではないと主張したが、アンヘイリアさんに一瞬で論破されてしまった。

「ともかく荷物を置いてください。出航しますよ」

 それだけ伝えると、俺はアディルが待つ操縦室(コックピット)に向かった。


 そうして宇宙港(ポート)を出発して、超空間に入って安定すると、

「ねえねえ聞いて! 客室のベッドがめちゃくちゃいいやつだったのよ!」

「スプリングが最高でした!」

「おめーら私が部屋にはいれないからって喧嘩売ってんだろ」

 3人は楽しそうにラウンジでおしゃべりをしていた。

 

 それから何のトラブルもなく順調に時間が経過し、昼食『サンドイッチ(ハムキュウリ・たまごサラダ・チーズレタストマト・ツナ・照り焼きチキン)・コーンポタージュ・マカロニサラダ・ドリンク』も問題なく終了した。

 デラグナーさんは蜘蛛だが、コーヒーは大丈夫らしく酔っ払うことはなかった。

 獣人や昆虫人は、動物や昆虫の特徴が出る人と出ない人がいるが、デラグナーさんは出ないタイプの人のようだ。

 それからもなんのトラブルもなく時間は過ぎていった。

 あまりの平穏さに、夕食は最近凝っている晋蓬皇国(しんほうおうこく)風の料理にしてみた。

夕食『白米・豆腐と長ネギの味噌汁・豚の角煮(豚肉・大根・煮卵)・巾着卵(油揚げに卵を入れて出汁で煮たもの)・蓮根の金平・漬物(キュウリ・大根・蕪・茄子・白菜)』

 これに蜜豆をつけてみたところ、

「美味そ〜〜♪」

「これはテンションが上がりますね!」

「早速いただき!」

「ずるいぞお前!」

 どうやら満足してもらえる反応をしてもらった。

 しかし、アンヘイリアさんが不意に動きを止め、

「あの……昼もそうでしたけど、お二人は食べないんですか?」

 と、聞いてきた。

「私達は後からいただくことにしているんです」

 ブローカーのチャーリー・レックのような親しい客ならともかく、普通お客さんと一緒に食事はしない。

 そんなこちらの返答に、

「どうせなら一緒に食おうぜ。その方が美味いじゃんか」

 デラグナーさんがそう返してきた。

「そうそう! ごはんは大勢で食べた方が美味しいもの!」

 というレイドルドさんの後押しに負け、では御言葉に甘えてと、自分達が食べる賄い『豚肉の端切れと油揚げを炒めて角煮のたれを絡めたやつを丼ご飯に乗せたやつ+温泉卵・蓮根の金平・豆腐と長ネギの味噌汁・漬物(キュウリ・大根・蕪・茄子・白菜)』を持って、夕食に参加させてもらった。

 すると彼女達から発せられた第一声は、

「「「なんかそっちも美味そう!」」」

 だった。

久しぶりの投稿です!



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― 新着の感想 ―
こちらの更新に気づけないとは また新たな胃袋を掴む旅のはじまりですね
 更新ありがとうございます。  テラグナーさん自前の糸でベット作るのはいいんですが、後できちんと片付けてもらわんとね。クモ糸って結構べたべたくっついて面倒やからね。
待ってました、たいへんでしょうけど続けて下さい。 SFを読み60年以上ですが、こんなジャンルは初めてです。
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