File257 惑星ミンツトレニスでの休暇④ 成長しない奴がいる
翌日は街中、惑星ミンツトレニス星都ミルデルツァーを観光することにした。
高速超電導浮上式鉄道を使えば惑星内の遠方の観光地にも行けなくはないが、半額とはいえ、メンテナンスには金がかかるのでここは節約だ。
この星都ミルデルツァーには、政治の中枢があると同時に大小様々な工場がある。
そのなかでも、大きな工場の周辺は騒音や事故や災害時の対策の緩衝地帯として広い土地を確保し、公園として使用されていたりする。
さらには工場がたくさんあるだけに飲食店も多く、作業着姿の人達でも気軽に入れる店がいっぱい軒を連ねていた。
そのなかでも、たまたま入った味晶軒というリーシオ料理の店のランチセット(ラーメン・半チャーハン・餃子)を、塩ラーメンで頼んだところ、俺の製作したものなんか足元にも及ばないほどの美味しさだった。
やっぱりプロの作ったものは違う。
ほかにも、商店街や寺院といった星都にある名所をめぐったり、アニメやゲームのショップを周ったりと、1日たっぷり星都ミルデルツァーを楽しんだ。
そうして、夕飯のコンビニのサンドイッチやらホットスナックを買ってカプセルホテル『パジトノフ』に戻ると、警察の姿があり何やら騒ぎになっていた。
事情を聞いてみると、盗撮用の隠しカメラが発見されたらしい。
しかも、女性側の大浴場やトイレだけではなく、男性側の大浴場やトイレからも、隠しカメラが発見されたらしい。
女性達は当然、怖がったり怒ったりしていたが、男性達は「男の裸なんか撮ってなにが面白いんだ?」と困惑していた。
当然、宿泊客の俺達も話をきかれることになった。
そしてまずはホテルの男性スタッフが疑われた。
まあ当然と言えば当然だ。
しかし、このホテルの女性専用エリアは、スタッフも全て女性であり、男性スタッフが入る必要がある場合は、必ず女性スタッフが同行し、しかも男性スタッフにはGPSの装備が義務付けられているので、入ったらすぐにわかるし、防犯カメラにも男性スタッフが侵入する様子は映って無かった。
もちろん男性客の侵入も無かった。
そうなると次は女性スタッフが怪しまれる。
監視カメラに映らない角度や死角を知っていてもおかしくないというのが理由だ。
しかし怪しい動きをしているスタッフはいなかった。
そして当然宿泊客も疑われる。
そこでシュメール人の俺は当然疑われた。
変身すれば男性エリアにも女性エリアにも入れるから当然だ。
俺は男の方の姿も見せ、監視カメラを確認してもらっても、男女共に俺の姿はなかったし、女性専用でも、隠しカメラのある位置には向かわなかったのでシロになった。
そうなると捜査は難航し、宿泊客の中に犯人がいる可能性があるため、外にでないように、チェックアウトしないようにと警察にいわれてしまった。
そうしてしかたなく、女性専用エリアのラウンジで、コンビニのサンドイッチやらホットスナックと、ホテルのコーヒーで夕飯を食べていると、年齢は30代半ばくらいの女性3人が、何故か不機嫌そうな表情を浮かべながらこっちにやってきた。
彼女達と接触した記憶はないので、なんだろうと思っていると、
「アンタでしょ? 昨日タダでスイーツを配ってたのって。あたし達ももらってあげるからさっさと出しなさい」
と、明らかな上から目線で話しかけてきた。
「あー。デザートを配ったのは事実ですが、無料じゃないですよ」
そう。最初のギャル達が、申し訳ないからとデザート一つに600クレジットを支払ったところ、周りの人達がそれにならい、デザート一つにつき、600クレジットを払っていった。
「それにあれは、冷蔵庫の中身の整理のために作ったもので、もうないんですよ」
そもそもが中身整理のためだから、数があるわけでもない。
普通の人ならこれで諦めるだろう。
しかし、配っている最中ならまだしも、その翌日に、しかもタダで寄越せなんて言ってくる輩が、諦めるはずが無い。
「は? なにいってるのよ! 私達が食べてあげるって言ってるのよ!」
「普通は用意しておくもんでしょう!」
「ないんだったらさっさと材料買って来て作りなさいよ!」
女たちは苛立ちながら命令をしてくる。
「ここには厨房がないから作れませんよ」
「じゃあ厨房を借りて作ってきなさいよ!」
正直、初対面の相手にどうしてこんな発言ができるのかが信じられない。
もしかしたら、帝国の頭の悪い貴族というやつの令嬢なのかと思ってしまった。
しかしこのOL共、何処かで見たような気するんだよな……どこだっけ?
「それにしても服装だっさ!てか男物?」
その言葉を聞いた瞬間、10年前の事を思いだした。
中学の時に、ケビンの奴といった惑星オルランゲアにあるケーキショップ『プランスメリー』に行った時に絡んできた大学生かOLくらいの女達だ!
あれから10年は経過しているのに、いまだにこんな恥ずかしいことを平然とやっているとは驚きだ。
そしてなにより、俺のことは覚えていないらしい。
まああの時よりは身長も伸びたし、服装もフライトジャケットだから気が付かないんだろう。
何よりこんな事をやりまくっているから、いちいち覚えて居ないんだろう。
そして、俺も10年前とは違うという事を思い知らせてやる。
「悪いがこれ以上ふざけたことをするなら警察を呼びますよ」
「はあ? 私達の方が不利益を被ってるんだからふざけてるのはあんたでしょ?」
「慰謝料請求しようよ! 300万くらい!」
「あ! それいいわね!」
俺はもちろん、周りの人達も完全にドン引きしていた。
頭が悪い、では済まされない非常識、いや、無常識なこの女達の言動に恐怖すら感じた。
するとそこに、なぜか警察がやってきた。
盗撮の捜査をしていた刑事さんのほかに、老齢の刑事さんも一緒だった。
すると女達は、
「あ、お巡りさ〜ん。この女が私達にだけスイーツを寄越さないの〜」
「これって差別だし、精神的苦痛を味わったから慰謝料とれるんでしょ?」
女達の言動に、老齢の刑事さんが一歩前に出てきて、
「話は聞こえてたけど、残念だがそれは無理だろうね。逆に君たちの脅迫なら立証できるけども。まあそっちは後でゆっくり話を聞くとして」
その老齢の刑事さんはその女3人に向き直り、
「エリー・ハドソン、ソーリア・ブルコート、チッチェリーナ・ハイランド。お前さん達3人を横領・恐喝の容疑で逮捕する。ついでに盗撮の教唆犯としても来てもらおうかね」
と、いいはなった。
「はあ? なにいってるのよこのジジイ!」
「ふざけるんじゃないわよ!」
「耄碌ジジイがなに言ってんのよ!」
女達は罵声を刑事さんに叩きつけるが、刑事さんは動じることなく、
「ノイラリア・シュワイデンを知ってるよね? 知らないわけはない。あんた達の職場の後輩だし、このカプセルホテル『パジトノフ』のオーナーの娘さんだ。あんた達に横領の事実で脅されて金銭を要求された。で、何とか金を工面するために、男女両方の風呂場とトイレに忍び込んでカメラを仕掛けたそうだ。それを闇のルートに流して収入を得て、それをあんた達に渡してたってわけだ」
とんでもない事を言い放った。
「カメラに映らなかったのは当然。仕掛ける時にはカメラの電源を切っていたからだ。深夜の2時から3時の間なら、客の動きも少ないから、見つかるリスクも少ないからね。オーナーの娘なら、スタッフに指示もできるしね」
老齢の刑事さんは、にこにことしながら説明を続ける。
「ならその子が盗撮の犯人でしょ! 私達は関係ないわ!」
「そうよ! シュワイデンだけ逮捕しなさいよ!」
「名誉毀損で訴えるわよ!」
女達ら喚くが老齢の刑事さんはにこにことしながら続きをはなす。
「いやいや。ちゃんと言ったでしょう。横領と恐喝って。自白してきたシュワイデンさんが全部話してくれましたよ。あんた達が彼女に被せた横領の証拠といっしょにね。さらには、このホテルの宿泊費もただにさせてましたね」
老齢の刑事さんが話し終わると、制服の警官が3人を捕まえた。
3人はぎゃあぎゃあと喚いていたが、あっという間に連れていかれた。
「あんた達は、さっきの被害届は出すかね?」
と、聞かれたが、めんどくさいので出すのをやめた。
意外な人がでてきてしまいました
老齢の刑事さんのモデルは
笹野 高史さんです
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