File254 惑星ミンツトレニスでの休暇① 仲のいい人が、実は偉い人だとびっくりする
カプセルホテルの施設を増やしました
クソほど腹の立った救難信号(SOS)の現場から
離れた後は、何事もなく惑星ミンツトレニスに到着した。
ここには有名な老舗の造船会社であるスリーカース社があるためか、部品工場・塗装工場・修理工場・スクラップ工場など、さまざまな工場があったりする。
依頼の貨物を引き渡し、報酬を受け取ったあと、カウンターに置いてあった、古式ゆかしきプラペーパーのチラシに目が止まった。
そのチラシには、
『スリーカース社550周年記念大50%セール開催中! 販売・修理・点検は現行料金より50%OFF! 買取査定無料! 買取価格は50%UP! 今すぐスリーカース社の直営店へ!』
と、書いてあった。
修理・点検の料金が50%OFFというのはなかなか魅力的だし、自社製品でなくともOKとのことなので、どうせなら頼んでみることにした。
スリーカース社の工場やドックは惑星上にあるが、申し込みのできる営業所は宇宙港内部にもあるのでそこに向かうことにした。
営業所に行って船のメンテナンスをお願いすると、
「明日の午前10時までに、惑星上のスリーカース社の整備工場に船とともに来ていただきます。その際、こちらの予約チケットをお渡し下さい。チケットにはライアット様のDNAと虹彩のデータをインプットしてありますので偽造やなりすましは不可能なのでご安心ください」
と、説明された。
ともかく予約が出来たので、次はレンタルコンテナショップの『ディメンションポケット』に向かった。
宇宙港には、大抵存在している施設で、メンテナンスやオーバーホールの間、船内の動かせる家具や機械、食料などを預かってくれるところだ。
特に俺の船は貨客船なので、家具が多く、メンテナンスやオーバーホールの時は毎度上客になっている。
ここは24時間稼働しているので、明日の朝8時に回収に来てもらうようにお願いした。
ちなみに借りている間は、何回でも出入りが可能だ。
そして翌日。
朝8時に『ディメンションポケット』に家具や機械、備蓄、保存食なんかをお預けし、コンテナに持って行ってもらった。
それから宇宙港を出発し、惑星上のスリーカース社の整備工場に向かった。
そして整備工場に到着すると、工場のスタッフに、目的を聞かれたので、メンテナンスの予約をしていると伝えると、大型のプラットフォームに乗せてくれと指示されたので、それに乗せて船を降りると、責任者は事務所の方に行ってくれというので、その場はアディルに任せて事務所に向かった。
するとその事務所で、以前に会ったことのある人に出くわした。
「おや。いつぞやの船長さん! たしか、ライアットさんでしたね!」
「ソイグさんじゃないですか!」
それは、以前に乗客として乗せたことのある、熊獣人のサルビロ・ソイグさんだった。
スリーカース社の社員だったのだから、居てもおかしくないが、会えるとはおもわなかった。
「いやぁ、あの時はお世話になりました。あの時いただいたミックスベリーのジャムとホイップクリームをそえたシフォンケーキ。朝食にいただいたフレンチトーストは本当においしゅうございました!」
ソイグさんは熊獣人らしく甘い物が好きらしく、以前に出したデザートを思い出して幸せそうな表情をしていた。
「たしか工場長をしてらしたんでしたね」
「ええ。スリーカース社の総工場長を務めさせてもらっています」
「え?」
工場長とは聞いていたが、スリーカース本社の社長・副社長についでのトップ3で、全ての工場を統括する総工場長だとは聞いてなかったので、思わず目を丸くしてしまった。
しかし、驚く俺を気にすることなく、
「では今回、ライアット様からのご依頼はメンテナンスでお間違いありませんね」
と、淡々と話しかけて来たので、
「はい!お願いします」
と、返してしまった。
そして修理工場の方に移動すると、工場のスタッフがすでに作業を開始し、アディルがその光景を興味深そうに眺めていた。
そして俺の船を見たソイグさんは
「おや? 以前の船とはちがいますね」
「はい。前の船は爆発事件で焼失してしまいまして」
「それは災難でしたね。お怪我などは?」
「大丈夫です」
前の船と違う事を指摘し、その理由を聞いて、ソイグさんは心から心配してくれたようだ、
そして改めて船を見て、
「ふむ。アルケオット社の下部貨物室型高速貨客MAF―02。別名『グラシュク』ですね。30年ほど前に軍の将校専用の移動船として採用された奴です。頑丈で、信頼性も高い奴だ。いい買い物をしましたね」
メーカー名や運用方法まで当ててきた。
「ええ。それと同時に新しく家族になったバイオロイドのアディルです」
「初めまして。アディルと申します」
「サルビロ・ソイグと申します。ふむ……パートナードールズ社の『シールダーシリーズ』のファーストロットですね。彼等は性格も性能も良かったのですが、当時は目立つといって忌避されてしまいましたけどね。しかし、ライアットさんはいい買い物をしましたね」
ソイグさんはにっこりしなからそういった。
「では、明後日の午前10時には終了しておりますので、お越しください」
「わかりました。お願いします」
受け付けで改めて交換用のタグをいただき、市街地に行くまでのタクシーを呼んでもらった。
その間にアディルの要望を聞いてみた。
「さてと。宿はどうする? 惑星上のホテルを探してみるか?」
「マスター。私、宇宙港のカプセルホテルに泊まってみたいです」
「カプセルホテル? そういえばアディルは泊まったことは……ないか」
「はい」
「じゃあそうするか」
こうしてあっさりと宿が決まった。
「ここがカプセルホテルだ」
「バイオロイドの培養プラントか、メンテナンスカプセルみたいです」
「なるほど。慣れてると言えばなれてるのか」
アディルを連れてきたのは、宇宙港にある、男女でエリアがわかれているカプセルホテル『パジトノフ』で、1階がフロント・ロビー・喫茶店・コインロッカー(通常・大型・貴重品・冷蔵・冷凍)があり、2階から5階までが男性エリア、6階から9階までが女性エリアになっていて、各階にトイレがある。
そしてそれぞれのエリアの最初の階(2階と6階)に、大浴場・サウナ・シャワールーム・各種自販機と水、晋蓬茶、コーヒー、紅茶の無料サービスのある休憩ラウンジ・コインランドリーがあり、10階はスタッフエリアになっている。
宿泊者専用エリアと女性専用フロアには、カードキーがないと入れない仕組みであり、館内の共用部分には防犯カメラが設置されており、スタッフによる巡回も行われている、セキュリティもしっかりしたカプセルホテルだ。
今回はアディルが一緒なので、女になって同じエリアの続きの部屋をとった。
「カプセルなのにこんなにくつろげる空間なんですね! なんだか楽しいです!」
アディルはカプセルの中でゴロゴロところがっていた。
カプセルは幅100cm・長さ230cmなので、アディルでも十分に余裕がある。
嬉しそうにしているアディルを見ると、連れてきてやって良かったと、こちらも嬉しくなってくる。
しかしこの時、あんな事件が起こるとは、まったく想像すらしてしなかったのである。
サルビロ・ソイグさんのモデルは若い頃の、俳優の小倉久寛さんのだったりします。
あれで身長が180cmを超えてる感じです
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