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File253 惑星ミンツトレニスへの貨物輸送② どうしようもない奴は救いようがない

 さて、今回彼等が救難信号(SOS)を発信する原因となった酸素発生装置は、船内の空調システムそのものである上に、専門家でなければ破損部分の修理も危うい代物なため、二重三重の対策がしてあるはずだ。

 それが壊れたとなればよっぽどの事態があったことになる。

『さきほどは本当に失礼しました。実はすでに会社や軍や警察にも連絡済みで、さらにはうちの社の船も、こちらに来てくれることになっているんです』

「酸素は持つのか?」

『あと6時間は大丈夫ですし、宇宙服が人数分あって、そっちは予備タンク含めて全員4時間は大丈夫です。会社の船は時速5光年で飛ばして5時間くらいで来れるはずだし、軍の船は4時間ぐらいで来れるそうですから』

 若い奴、社員さんの顔色をみるかぎり、あの専務にそう言えと強制されている感じはないので、救援が来るのは真実のようだ。

 しかしそれなら、なぜあの専務はこちらを怒鳴りつけたんだ?

 俺は気になってそのあたりを尋ねてみた。

「なら安心だろうが……救援を出したのはどれぐらい前なんだ?」

 俺の質問の意図を理解した社員は、申し訳なさそうに、絞り出すように答えた。

『……20分前です……』

「それでアンタのところの専務はこっちを怒鳴りつけたのか?」

 正直意味不明だ。

 もちろん酸素発生装置が壊れている状態が不安でないわけはない。

 俺が到着したとき、救援要請からすでに4時間以上経過して、軍隊も会社の船も到着して居らず、そのためこちらを軍や会社の船と勘違いして怒鳴りつけたたというならわからなくもない。

 しかし、通報からわずか20分、酸素の残量もたっぷりあり、しかも救援がこちらに向かっているのが分かってる状態で、救援に来た相手に暴言を吐く神経がわからない。

 たしかに不安に陥るのに時間は関係ないから、思わず勘違いをして怒鳴りつけたとしても、謝罪をするのは当然だろう。

 しかし、彼等の会社の専務は謝りもしない。

『すみません……社内でも有名な人でして……』

 つまりは嫌われ者ってわけか。

 偉い役員のコネか、経営者一族かその親族ってとこかな。

 社員達は相当苦労しているようだ。

『それでは、救援が来る予定がありますし、空気の方も十二分に余裕かありますから、そちらの要件を優先して下さい。救難信号を受けて来てくださってありがとうございました』

 そして社員が、こちらのことも考え、御礼の言葉と、この場からの離脱許可を出してくれた。

「わかった。これ以降は無事であることを祈るよ」

 そういって社員とあいさつをして出発しようとした時、

『おい! 何処へ行く? さっさと儂をそちらの船に乗せんか!』

 と、専務(バカ)が画面に現れた。

「悪いがアンタを乗せるつもりはない。そちらの船にはすでに救出隊が出発し、空気の残量も十二分にある。なによりそちらから行っていいと許可ももらったからな」

 俺は不機嫌を隠すことなく、専務(バカ)の乗船を拒否した。

 すると専務(バカ)は顔を真っ赤にし、

『ではコチラの許可は取り消しだ! 儂をそっちにのせないというなら、お前を救難信号(SOS)を無視した奴として通報してやる!』

「テメエ……」

 船乗りにとって、救難信号(SOS)を無視するというのは、特別な理由がないかぎり、するべきではない。

 その教示を利用して、自分の欲求を通そうとする専務(バカ)の発言に、俺は本気で腹が立った。

 すると社員が、

『止めて下さい専務! 相手に失礼なことをしないで下さい!』

 と、発言をやめさせようとした。

『うるさい! 儂に逆らうなら貴様はクビだ! 懲戒免職だ! 給料は没収! いますぐこの船から降りろ!』

 しかし専務(バカ)は聞く耳を持たず、テメエの我儘で権力を振りかざし、理不尽を押しつけた。

 すると、社員達も我慢の限界に達したのか、

『いくらなんでも横暴だ! ふざけるな!』

『かまうもんか! フルボッコにしてやろうぜ!』

『そもそも壊れたのもこいつのせいだったりしてな!』

『毎度セクハラしてくるからうんざりしてたのよ!』

 専務(バカ)を取り囲み、社員達が剣呑な雰囲気に変わっていく。

『なっ……なんだと!? 儂は専務だぞ! 貴様らとは身分が違うんだぞ!』

 しかし専務(バカ)は状況が理解出来ていないのか、さらに暴言を吐いた。

『何が身分だ! 帝国じゃねえんだよ!』

 社員の一人が専務(バカ)の襟首をつかむ。

 このまま私刑(リンチ)の流れは流石に駄目なので、

「待った待った! 空気が限られた状態で暴れたりしたら、消費が激しくなるぞ!」

 と、酸素の消費を注意したところ、さっと静かになってくれた。

 しかし、専務(バカ)は止まらなかった。

『お前達は全員クビだ! 専務であるこの儂に楯突いたんだからな! だが恨むなら儂ではなく、あいつを恨め! あいつがこの儂をさっさと船に迎え入れんからだ! お前ら全員がクビになるのはあいつ

の責任だ!』

 え? 何言ってんのこいつ。 

 自分がクビにしておいて、その責任が俺のせいって、本気で言ってるのか?

 この時俺は本気でキレた。

 社員達も、あまりのバカ理論に開いた口が塞がってない。

 なので、社員達のためにも、俺の溜飲を下げるためにも、罠に嵌めてやることにした。

 まずは大きくため息をつき、

「悪いが俺の船には移動用の連結通路がなくてね。移動したいのなら宇宙服を着て、こちらのエアロックに来てもらうしかないんだが……」

 そう向こうに伝えたあと、わざと女の姿に変わり、

「失礼。俺はシュメール人でね。『月のもの』がきたらしい」

 と、説明してやった。

 すると専務(バカ)はニタリとした笑みを浮かべ、

『それなら今から行く! 歓迎の用意をして待っとれ! 儂に対しての無礼な発言に対しての慰謝料はしっかり請求してやるからな!』

 専務(バカ)は嬉しそうな間抜け面をしながら画面外に消えた。

 ボケが! だれが受け入れるっていったんだよ!

 そして直ぐに、

「では改めて離脱の許可をいただきたい」

 と、社員にお願いしたところ、こちらの意図を理解した社員は、

『はい! 了解しました。許可いたします。駆けつけていただきありがとうございます! お気をつけて!』

 と、爽やかな笑顔でこちらの出発を許可してくれた。

 なのでさっそく出発することにした。

 

 

視点変換 ◇バウダースライド社社員◇

 

 私達の救難信号(SOS)を受けて救援に来てくれた貨物船が、私達のいる宙域を離れていく。

 直ぐに超空間航行に入るだろう。

 あの専務(カス)は、貨物船の船長がシュメール人で美人だと分かると、直ぐにエアロックに向かい、宇宙服を着込んで向こうの船に行こうとした。

 しかしすでに相手の船はなく、専務(カス)の奴は宇宙空間に放り出されることになった。

 エアロックはオートロックなので、専務(カス)が飛び出たら直ぐに閉じた。

 それから専務(カス)は慌ててこちらに戻ろうとしたが、船外活動なんかやったことのない専務(カス)に、移動用のスラスターが操れる訳がない。

 専務(カス)必死で救出してくれと訴えてくるが、こいつの横領や冤罪やセクハラなどの刑事事件や普段の勤務態度なんかを社長と警察と労働基準監督署に全部報告するまでは、宇宙遊泳を楽しんでもらうつもりだ。

 

視点終了

ゴミやカスは、その状態になるまではちゃんと役に立っているのだから、侮蔑の言葉にするのは、ゴミやカスに失礼になりますw


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― 新着の感想 ―
昔の名作SFで「冷たい方程式」と言うのがありましてな。 いくつかのパロディやオマージュ作品もあってだいたい 「宇宙船の運行を危険にさらす(カツカツの酸素、食料、推進材を無駄にする)ようなアホは殺して…
ゴミのポイ捨てはダメだもんね、ちゃんとゴミ箱(ブタ箱)に入れないとね
うーん? 呼ばれる前段階までは役に立ってる!に、疑問たらたら?なんですけどwww
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