File194 惑星フオホサでの休暇① 自然のスケールには、人間は到底敵わない
本来なら、午前2時といった深夜時間に到着した場合は、朝の8時くらいまでは船内で過ごしてもらうようにしているのだが、お客であるラトム氏・レールス嬢・ロイス嬢の3名は、今回のような事態が起こったからには申し訳ないし、警察での事情聴取もあるからと、船を降りてしまった。
まあ、ロイス嬢だけは最後の朝ごはんを食べたいとダダをこねていたが、船を降りる提案をしたラトム氏とレールス嬢が無理矢理引きずっていった。
なので、朝食に出そうと思っていた大きなクラシックタイプのカスタードプリン×3を土産に渡したところ、
「有り難う御座います!絶対に大切にいただきます!この命が燃え尽きようとも!」
と、ロイス嬢でなくレールス嬢の方がテンションが上がってしまった。
ちなみに、引き渡す時に軽く聞いた話によると、首謀者のマーテルはこの星にいるアルドル人の支族長の息子だそうで、ラトム氏達はその支族長に抗議に行くそうだ。
同時に、情報を拡散した友人にも文句を言うつもりだそうで、なんとなくそっちのほうに強い怒りのベクトルが向いている気がした。
ちなみに族長に『支』がついているのは、この惑星のアルドル人の集落は、連邦にある彼等の本拠地の集落の傘下の一つという扱いなのだそうだ。
警察とお客さん達が停泊地をでていき、貨物を引き渡した後に一眠りしたのち、アディルが『樹上の迷宮都市』を見てみたいというので、ひとまず仕事は受けずにに惑星上に降りることにした。
銀河貨物輸送業者組合の受付に行って報酬を受け取ってから、地上に降りるべく、湖上に繋がっている軌道エレベーターに向かったところ、宇宙港の窓からも、乱立する木々の姿が見えていた。
そうして軌道エレベーターに乗り込み、地上へ向かう。
軌道エレベーターの地上部分がある『サレシュガル湖』は、最長:2060km・最大幅:870km・水面積:742000㎞2・平均水深:274m・最深部:2050mという規模をほこる惑星フオホサ最大の湖である。
この地上部分には、シャトルの発着場・整備場・管制塔・事務建物兼待合室があるだけで、星都ではない。
幸いシャトルにはあまり待つことなく乗ることができ、俺もアディルも他の観光客同様に窓の外を眺めていた。
待合室でもらった観光パンフレットによると、惑星フオホサは、入植初期には樹上に板を渡して住宅の建設場所を確保したり、その高さで留まる浮遊板を連結したり、木をくり貫いたり、ウロを利用してみたりして、少しずつ住宅を確保していったのだそうだ。
現在は一定の太さの樹木の周囲を、木の板のようなデザインの超硬化アクリル樹脂製の床を木の幹に2段3段と取り付け、一番上には商店や公共機関やホテルなどが並び、2段めからは住宅が並んでいるそうで、これを『樹上居住区』と呼ぶらしい。
『樹上居住区』同士は橋で繋がっていて、頑丈な橋だったり、揺れるつり橋だったりと様々。
水は、湖の水や雨水を濾過して使用しているそうだ。
『樹上居住区』以外には、大きな木の洞を利用したり、木の内部をくり貫いて作った居住区があるが、そのなかでも、高さ9700m直径1000m円周3140mの超巨木『スニラフ』の内部をくり貫いて作られた星都ユグルスは、まさにこの星の象徴であり名物だ。
地上からの高さ1000mの所から、高さは600m・直径500m分を樹木の強度を考えた厚さ250mを残してくり貫き、内部からも柱や梁で強化をしているそうだ。
内部の面積は196250㎡。1フロア10mの60階層部分と、吹き抜けの部分があり、吹き抜け部分にあるモニュメント兼空気循環機がある。
ちなみに内部は火気厳禁・完全禁煙で調理の時にはIHを使用。
スプリンクラー設置は絶対で、通路は10mごとにスプリンクラーが設置してあるらしい。
住宅建物には、軽量で耐火性・防音性を重視した特殊なアクリル樹脂材を使用している。
ちなみに、『樹上居住区』に使用している超硬化アクリル樹脂も、住宅建材に使われている軽量で耐火性・防音性を重視した特殊なアクリル樹脂材も、この惑星の樹木の天然樹液から作られている。
この天然樹脂は色々な使い道があり、観光業と共にこの惑星の重要な産業の一つになっているそうだ。
そうしているうちに、この惑星でも最大の超巨木『スニラフ』の姿が近づいてきた。
本当に樹木なのかと疑いたくなる巨大さだ。
シャトルの発着場は、巨大な樹木の幹にへばりつく茸の様に建設されており、そこから内部に向かって直径50m・長さ250mもある通路を通ることで、ようやく星都『樹内都市』ユグルスに到着した。
「樹のなかにこんな都市があるなんて凄いですね!」
「1階層から10階層までは商店街や繁華街。11階層から15階層までは宿泊施設。16階層から20階層までは各種スタジアム・公園・アスレチック・スポーツジムなんかのスポーツ施設。21階層から30階層までは星庁舎・警察・消防・病院・図書館・美術館・博物館なんかの公共機関や公共施設。31階層からは住宅地だそうだ」
子供の時に1度見たはずなんだが、やはり圧巻だったし、記憶もあやふやだった。
今の説明もパンフレット先生の受け売りだ。
夕方には船に戻る予定だが、それまではゆっくりと回る事にしている。
来る途中のシャトルから『樹上居住区』は見えたので、そっちを見に行ってもいいだろう。
とはいえまずは商店街を見て回ることにした。
10階層ある商店街だが、1から5階層ぐらいまでは観光客相手の土産物屋や飲食店などが軒を連ねていて、そこからは地元の人達の利用する商店街になっているらしい。
アディルは物珍しそうに店をみてまわっているが、それは俺も同じだ。
どうやらアルドル人達の集落は星都の近くではないらしいが、時おり姿をみることはある。
多分一般の人なんだろうが、観光客の写真撮影に色々なポーズで答えたりしていた。
そのうち腹も減ってきたので、何か食べようとしたところ、偶々空きがあったオープンカフェに入ることにした。
アディルはやっぱりという感じでパンケーキを注文した。
お店の人の話だと、パンケーキに使っているシロップは地元産のものらしい。
この惑星の樹木の天然樹液には、アクリル樹脂に使えるものやシロップに使えるものなど色々とあるらしい。
同じような木に見えて実は色々と種類があり、素人では見分けるのが難しいらしい。
そうやって昼食?を済ますと、俺もアディルもやっぱり『樹上居住区』にいってみたくなったので、内部移動用の浮遊板に乗り、『樹上居住区』行きのシャトルがある発着場に向かった。
星都ユグルスのシャトル発着場は3つあり、それぞれに内部にはいるための通路がある。
そのシャトル発着場の待合室に入って時間を確認しているときに、不意に声をかけられた。
「ショウンにアディルちゃんじゃないか!こんなとこで……って、仕事で来て休暇中だよなやっぱり」
声の主は、小学生時代からの友人のケビン・コールマンだった。
今回は説明回です。
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