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File188 惑星ダグロウゼクでの休憩④ 家族だからこそ許せない事がある

 ルミラちゃんが外にでると、カディナ・ティーグア=婆さんは、

「ああよかった!さあ早くこっちへきなさい!おばあちゃんと一緒におうちに帰りましょう!」

 と、わざとらしい感じで都合のいい事をいう。が、

「わたしおばあちゃんの家なんか知らないもん!見たこともない!」

 と、ルミラちゃんは婆さんの元に行くのを拒否した。

 その事実に婆さんは一瞬眉を吊り上げたが、すぐに表情を改め、

「でもあの女…、お母さんに酷いことをされているんでしょう?」

 心配そうに見える表情をし、心配しているような口調で話しかける。

「お母さんは私が悪い事しない限りはいつも優しいもん!酷いことなんかされてない!」

 しかしルミラちゃんには通用せず、

「おばあちゃんはお父さんが亡くなった時に来て、『うちに近寄るな』って言ってたもん!私に『小汚ないからちかよるな』っていったし、お母さんにいっぱい意地悪したのしってるもん!私はおばあちゃんのところになんか行きたくない!」

 よりルミラちゃんに嫌われることになった。

 すると我慢の限界が来たのか、孫を心配する祖母の仮面は外れ、

「生意気なことをいうな!オマエは我が家の跡継ぎとして、私の命令にしたがっていればいいんだ!」

「ひっ…!」

 傲慢な経営者、もしくは自己中心的で我が儘な年寄りとしての顔が顕になり、ルミラちゃんを怒鳴り付けた。

 年齢の割りにしっかりしているうえ、同じ虎獣人とはいえ、まだ10歳の子供に、老人とはいえ大人の怒鳴り声は怖かったらしく、あとずさって目に涙を浮かべた。

 すると ステリアさんと片繰のおっさんが、いつの間にかルミラちゃんの所にかけつけて、ステリアさんはルミラちゃんを抱き締め、片繰のおっさんは2人を守るように立ちはだかった。

「ティーグアさん。なにやら聞いた話とちがっているようですが?」

 ルミラちゃんの言葉にステリアさんの行動。婆さんの豹変ぶりに、横にいた警察の責任者が婆さんに怪訝な表情(かお)をむける。

 どうやら警察は、婆さんが都合のいいことを並べ立てて出動させただけで、後ろ暗いことは取り敢えず無いらしい。

「あ…あの子は混乱…いえ、あの女に洗脳されているのよ!」

 婆さんは焦った様子で自分に都合のよさそうな事を口走るが、警察の責任者は疑いの眼差しを向けている。

「会長。もうお止めになりませんか」

 するとそこに、婆さんと歳の近そうな、白髪頭で生え際は少し後退していて、質の良さそうなスーツをきちんと着こなした、苦労が滲み出ている雰囲気のヒューマンの爺さんがあらわれた。

「フーネイズ!副社長のあなたが、どうしてここにいるの?!株主総会の準備はどうしたのよ?!」

 その爺さん=フーネイズ氏を見た婆さんはかなり驚き、この場に居ることに叱責する。

 しかしフーネイズ氏はそれを気にする事なく、婆さんに向かって言葉を続けた。

「もうお止めになったらどうです?そんな事をしてお孫さんを手に入れたとしても、お孫さんも貴女も不幸になるだけです。会社は今いる有能な社員にまかせればよろしいでしょう。今の貴女をこのまま社のトップに据え置けば、ティーグアエレクトロニクスは間違いなく破滅します。いや、もうすでにしているのかもしれない。今日の株主総会では貴方の会長解任を決議する予定でした。すでに株主全員と役員全員。さらには貴女に飼い慣らされた社員以外の全員が、貴女の解任に賛成しています」

 その内容は、婆さんを会長の座から引きずり下ろす話だった。

 そんな話に婆さんが納得するわけはなく、怒りを顕にしてフーネイズ氏を怒鳴り付けた。

「なにを言ってるのよ!ティーグアエレクトロニクスは私の祖父が作ったのよ!それを父が継ぎ私が受け継いだ!つまり会社は私達ティーグア一族の物!トップに居ないといけないのは、私の息子の子供であるあの子であることが当たり前なの!それがあの子の幸せでもあるのよ!」

「ですが、貴女は長男であるワイアス君ばかり可愛がり、次男のアルデ君は完全に放置。兄弟の仲がよかった事と、貴女のご主人であり、彼等の父親であり、私の友人であったターガスがいたから、なんとか家庭を保っていた。しかし次男が高校を卒業するときに、長男もご主人もいない時を狙って追い出した。その時点で次男とは縁が切れているのですよ」

 怒る婆さんに、フーネイズ氏は冷静に事実と正論を並べていく。

「だからなによ!?私の子供である次男の子供で私の孫よ?どう扱ったって私の自由でしょう!」

 フーネイズ氏の話の内容に、婆さんは感情的になって声を荒げる。

「子供も孫もお前の所有物じゃない!」

 そしてその感情的になって出た一言に、フーネイズ氏が激怒した。

 おそらく普段は温厚な人物なのだろう。

 婆さんはフーネイズ氏の迫力に気圧された様子だった。

 フーネイズ氏は呼吸を整えてから一度咳払いをすると、改めて婆さんを見つめ、

「ティーグアエレクトロニクス会長カディナ・ティーグア。株主・役員・社員からの賛成多数により、貴女を会長職から解任する。貴女のあまりにも理不尽な経営方針。さらには、いくら自分の孫だとはいえ、自社の社員に誘拐をさせるなど言語道断!貴女に誘拐を命令された社員は既に判明し、さきほど警察に逮捕してもらいました」

 と、婆さんに引導を渡した。

 そして警察の責任者らしい人のところにも、誘拐の実行犯逮捕の連絡がいったらしく、

「ティーグアエレクトロニクス会長、カディナ・ティーグアさん。詳しい話を聞きたいので、取り敢えず署までご同行願えますかな?」

 責任者の人はかなり険しい表情をしながら婆さんに声をかけた。

 すくなくとも、嘘まみれの通報をして警察を出動させたのだから、その責任は逃れられないだろうし、嫌がる孫を自分の道具にするべく誘拐しようとしたことは、すぐに世間にしれわたり、ティーグアエレクトロニクスにはそれなりのダメージがあるだろう。

 その事実に、婆さんはその場にへたりこむ。

 しかしなにかを思いついたのか、急に顔を上げると、

「だったらあの子を!あの子を将来社長にすると約束してちょうだい!」

 と、副社長のフーネイズ氏に懇願する。

 するとフーネイズ氏はルミラちゃんにむかって、

「ルミラちゃん。大人になったら、おばあちゃんのお仕事をお手伝いをしたいかい?」

 と、質問した。すると、

「やだ!私おばあちゃん嫌いだもん!お手伝いなんかしたくない!」

 当然といえば、当然の答えが帰ってきた。

 大好きな母親を虐め、必要になるまでは『小汚ないから近寄るな』とまでいってきた人間の手伝いなんかやりたがるわけはないよな。

 すると、ステリアさんがルミラちゃんを抱っこし、婆さん=カディナ・ティーグアに声を掛けた。

「お義母さん。いえ、カディナ・ティーグアさん。確かに私は貴女の次男であるアルデ・ティーグアと結婚し、この子を授かりました。でも私達はティーグアの姓を名乗らず、ウールムという私の姓を名乗っています。夫のアルデも結婚と同時にウールムに改名しています。しかも私と知り合った頃にはアルデ・ホールダムと名乗っていました。亡くなった夫のアルデは、それだけティーグア家との関わりを絶っていたのです。自分達はティーグア家ではないと示していたんです」

 そのステリアさんの表情は責めるようなものではなく、まるで教え諭すようなものだった。

「つまり。亡き私の夫も私達も、貴女の家族ではないという事です。私は今、夫亡き後、私達を心配して色々と助けてくださったこの片繰源三郎さんという方との再婚を考えています。ですからもう私達に関わらないでください」

 しかしこの最後の言葉だけは、しっかりと拒絶の意思が見てとれた。

 そう通告された婆さんは、

「私は孫に会社を継いでほしかったのよ…」

 と、力なくつぶやいた。


 そうして、ティーグアエレクトロニクス会長、カディナ・ティーグアは、誘拐未遂の主犯・虚構申告罪の容疑で、自分が連れてきた警官隊に連行されていった。

 副社長のガイル・フーネイズ氏からは、上司の迷惑行為への謝罪と、自社社員が誘拐を実行しようとした事実を謝罪し、会長の解任と共に世間に公表すると言われたが、迷惑だから止めてくれとステリアさんに懇願されていた。

 一連の事が終わってみると、最初にステリアさんを結婚詐欺師ではないかと疑った自分が恥ずかしくなってくる。


 警官や関係者が全員がいなくなり、取り敢えず船内に戻って来た時、

「顔を見せにいってあげるくらいならええんやないですか?」

 と、片繰のおっさんがステリアさんに提案したところ、

「駄目です。あの人は思いしらされて、最後になっても、ルミラの名前を呼びませんでしたから」

 物凄く冷たい表情でそう言い切った。

 おそらく彼女は、娘だけでなく亡くなった旦那さんを蔑ろにしていた事にも怒っているんだろう。


 後なんとなくだけど、おっさんは尻に敷かれそうだ。

関係者の情報

孫娘ルミラ・ウールム:虎幼女。今回の勇者。


母親ステリア・ウールム:未亡人。結婚詐欺師ではない。


父親アルデ・ウールム(ティーグアorホールダム):虎獣人。故人。母親に嫌われた理由は、母親が女の子を欲しがっていた上に、彼を出産後に出産不能になったため。生前は修理工。


祖母カディナ・ティーグア:虎老女。ティーグアエレクトロニクスの会長で総ての元凶。


祖父ターガス・ティーグア(ホールダム):虎獣人。故人。生前はティーグアエレクトロニクスの総工場長。先代と先々代(祖母の父親と祖父)にきにいられて婿養子としてやってきた。


伯父ワイアス・ティーグア:虎獣人。故人。生前はティーグアエレクトロニクス社長。弟のアルデとは仲が良く、弟が家をでたあと、唯一連絡をとっていた。


ガイル・フーネイズ:ヒューマン。ティーグアエレクトロニクス副社長。ターガス・ティーグアとは学生時代からの友人。


片繰源三郎:ゴリラ獣人。トランスポーター。ステリア・ウールムの再婚予定相手。


ショウン・ライアット:シュメール人。トランスポーター。巻き込まれた人。


アディル:バイオロイド。ショウンの所有物(かぞく)


書籍化作業再開…次は苦しいかも……


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[気になる点] 多種族が出てくるSF物なのに種族差によるすれ違いとかではなく、キチガイが出てきて捕まるだけの展開が多すぎるのが気になります。 せっかくならもっと犯行や逃走、その解決にも種族的能力を使っ…
[良い点] ルミラちゃん(10歳)が今回のMVPでしたな、さすがの主人公も今回は出番が無し… [気になる点] しかし、まず旦那だった次男が事故で死亡、次いで長男夫婦と子供も事故で死亡って、ティーグアエ…
[気になる点] 副社長の登場シーンですが、 セリフがちょっと説明的過ぎて違和感があるので、 副社長のフーネイズ!どうしてここにいるの?!株主総会の準備はどうしたのよ? ↓ フーネイズ!副社長のあなたが…
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