File187 惑星ダグロウゼクでの休憩③ 何処かに需要はあるのかもしれない
「うおおおおおおっ! 船がデカなっとる上に、船内がめちゃめちゃ豪華になっとるやんけ!」
俺の船『ホワイトカーゴⅢ』の外観と船内を見た片繰のおっさんの第一声がこれだ。
まあそれも無理はない。
片繰のおっさんが知ってるのは、一番最初の『ホワイトカーゴⅠ』の時の、小さな自室の他には、小さなキッチンとベッドになるソファーが2つにトイレとシャワーがあるだけってものだったからな。
それから比べれば大きな進歩だ。
「2人用のベッドルームが4つも!おまけにベッドもふかふかや!さらには晋蓬皇国式の風呂!俺が手足伸ばして入れるサイズは凄いな!ラウンジには10人は座れるテーブルにソファーのセット!おまけに2階もあるやと?!そしてなによりあのキッチンはなんや!?まるっきりレストランの厨房やないか!」
おっさんは船内を見廻りながら、感想を駄々漏れにしつつ、驚愕の表情を浮かべていた。
「あの…本当によろしいのですか?」
「お家より凄い…」
ステリアさんとルミラちゃんのウームル親子は、片繰のおっさんに貨物船としか聞いていなかったためか、かなり驚いていた。
「大丈夫大丈夫。ショウンの家やから気にせずになんでもいいつけたって下さい!」
「俺もアディルもあんたの召し使いじゃないっての」
「堅いこというな。御客様やで御客様。金はきちんとはろたるがな」
とまあ、この片繰源三郎というビステルト人・シルバク(ゴリラ)種のゴリラなおっさんは、常にこんな感じなわけだが、不思議と嫌われないのは、本人の性格か、生来の特殊能力かなにかではないかと考えている。
取り敢えず荷物を部屋に置いてもらい、ルミラちゃんをアディルに任せると、俺と片繰のおっさん。そしてステリアさんとで、大人の話し合いを始めることにした。
「改めまして。俺はショウン・ライアット。この船の船長で貨物輸送業者です」
「ステリア・ウームルと申します。親子ともども匿っていただきありがとうございます」
ステリアさんは深々とお辞儀をする。
確率的には、結婚詐欺である可能性は限りなく低い感じはする。
だが詐欺でなかったとすると、現状はかなりギリギリだ。
「正直これからどうするんですか?犯罪じみた手段まで使ってくるということは、向こうは諦める気はないみたいですし」
そのなかでのこの質問はかなり辛辣だとは思うが、聞いておかないといけないだろう。
「私の両親は既に他界しているので、逃げ込めるところもありません。片繰さんとライアットさんにこれ以上御迷惑をかけるわけにはいきませんので、何とかお義母さんと話し合ってみたいんですが…」
ステリアさんの表情から察するに、向こうは話し合うつもりはないらしい。
すると、
「ほんなら俺がついてったる!」
片繰のおっさんが自分の胸をドンと叩き、真剣な表情でステリアさんを見つめていた。
たしかに片繰のおっさんがついていけば、向こうも少しは話を聞くかもしれない。
何しろビステルト人・シルバク(ゴリラ)種なだけに、身長は俺より少し高いぐらいだが、その筋肉は比較にならないレベルのデカさと強靱さをもっているので、向こうの脅しもある程度跳ね返すだろう。
「そんな!私の問題にこれ以上は…」
「ステリアさん。俺はあんたと結婚を前提にお付き合いをさせてもろうてる。ルミラちゃんの父親にも、ほんまの意味でなれるかはわからんけど、努力はします。し続けます。俺は貴女達と家族になりたいんや!せやから、困難は一緒に乗り越えて行きたいんや!」
「わかりました…。お願いします源三郎さん。私と一緒に、亡き元夫のお義母さんとの話し合いに同行してください」
「よっしゃ!何があっても守ってみせるで!」
が、目の前で砂を吐くようなラブロマンスをやられるのはたまったものじゃない。
「だとしても、明日にしたほうがいいんじゃないか」
向こうはティーグアエレクトロニクスという大きな企業だけに、門前払いを食らう可能性もあるので、今晩のうちに、アポイントメントを取った方が良いだろう。
「そうやな。ほなステリアさん、先ずはアポイントメントを取りましょう。ルミラちゃんの事やから、向こうも応じてくれはるはずや」
「わかりました」
こうしてステリアさんが元旦那の義母にアポイントメントをとったところ、気持ち悪いぐらいにあっさりと話し合いを了承した。
俺も片繰のおっさんも明らかに怪しいと感じとり、警戒する事を決めた。
そして時間が経過して夕食の時間になった。
ルミラちゃんがいるのもあり、今回はちょっとだけお子様なメニューにしてみたわけだが、
【夕食のメニュー:エビピラフ・野菜のクリームシチュー(人参・馬鈴薯・玉葱・蕪・白菜・キャベツ・ブロッコリー)・デミグラスハンバーグ目玉焼き乗せ・林檎のヨーグルトサラダ・バナナのアイスクリーム】
「わあ!美味しそう!」
「デミグラスの目玉焼き乗せは至高や!」
虎幼女とゴリラ中年からは歓喜の声があがった。
その様子を、ステリアさんは優しい表情で見つめていた。
ちなみにビステルト人(獣人種・哺乳類動物)・ラフィム人(有翼人・鳥人種)・インセクティア人(昆虫人)は、『人間に動物・昆虫の特徴が発現している』だけなので、食事は人間と全く同じで、草食動物の人でも肉は食べるし、肉食動物の人でも野菜は食べる。
栄養としてもどちらも必須だ。
アディルはデミグラスソースが気に入ったのか、
「マスター!今度これの作り方を教えて下さい!」
と、ソースを口につけながら主張してきた。
翌朝。アディルと一緒に船体のチェックをしていた時、
『マスター!警官が停泊地内部に侵入してきました!』
「はあ?!」
貨物室のチェックをしていたアディルから、信じられない報告が入った。
慌てて窓から外を見ると、ビームシールドを構えた警官隊が俺の船を取り囲んでいた。
そして、責任者らしい警官が前に出ると、
「犯人に告ぐ!今すぐ人質の少女を解放しなさい!」
と、拡声器で投降を呼び掛けてきた。
その喧騒に、片繰のおっさんとウームル親子がラウンジにやってきた。
「おい!何事や!?」
「警察が人質を解放しろってさ」
「人質?どういうことや?!そんなんどこにもおらへんぞ!」
「こんなことになっている原因はお義母さんです。私を誘拐犯という事にして、ルミラを手に入れるつもりなんです」
ステリアさんが指差した方向をみると、警官隊の責任者の横に、高価そうな服を着た、虎耳と虎尻尾のついた、因業そうな婆さんがいた。
多分あれがステリアさんの亡き元旦那の母親で、ルミラちゃんにとっての祖母か。
虎の獣人だから当然と言えば当然だが、虎耳・虎尻尾の老婆なんか何処に需要があるんだと問い質したくはなる。
昨日のアポイントメントの電話は、ステリアさんの汎用端末からかけた上に、音声のみの会話だったのだが、応対に出た秘書だという人物が、何回も上司である婆さん、現在のティーグアエレクトロニクスの会長兼社長であるカディナ・ティーグアのスケジュールを確認をしていた。
多分その時に逆探知でもされていたんだろう。
こんなマネをするって事は、始めから話し合いをする気はなかったってことか。
「なんちゅうババアや…。そこまでして自分の我が儘を押し通すつもりかい!」
片繰のおっさんは鼻息を荒くし、今にも飛び出さんばかりだったが、飛び出したらこちらが不利になるのは理解しているらしく、なんとか飛び出さずにいた。
そこに、カディナ・ティーグアが拡声器でこんなことを呼び掛けてきた。
「私の大事な大事な孫を返しなさい!その子は我がティーグアエレクトロニクスの後継者なのよ!」
何を調子の良いことをといいたくなるが、こちらが不利なのは間違いない。
ステリアさんは、片繰のおっさんと俺とアディルに必死に謝罪し、自分から出ていこうとするし。
片繰のおっさんは、憤慨しながらもステリアさんが出ていくのを引き留めている。
アディルも買ったばかりのビームシールドのチェックを始めた。
俺も最悪警官隊が突入してきたら、身を守るくらいはするつもりだ。
すると突然、ルミラちゃんが船の外に飛び出していった。
別作品の書籍化作業が終了したので再開
ですがまた次の作業がくる予定…
リアルの仕事が忙しくなった上に、他作品の書籍化作業も加わり、この作品の執筆が滞るかも知れない事を宣言しておきます。
ネタも涸渇ぎみなので入力もしたいので…
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