File186 惑星ダグロウゼクでの休憩② 有りがちだが、実際にあることだったりする
俺は片繰のおっさんの発言に本気で驚き、思わず聞き返した。
「結婚って…本当に?」
「おう。まあ相手はバツイチ子持ちなんやけどな。俺には最高の女性なんや♪」
片繰のおっさんは、照れくさそうにしながら、もじもじし始めた。
が、その発言に気になる箇所があった。
「バツイチはともかく子供って大丈夫なのか?」
子供の年齢によってはそういうことに敏感だったりするだろう。
すると、片繰のおっさんから不思議な台詞がでできた。
「今のところはギリギリ味方認定やな」
「味方認定?」
「なんや、亡くなった旦那の実家と揉めとるらしいてな。なんでも跡取りが居なくなったから、寄越せいわれとるらしいわ」
「めんどくさい話になってるな…」
それなら話はわかる。
その子にとっては、実家の連中よりは、片繰のおっさんの方がまだマシってやつだな。
「それより結婚したら仕事はどうするんだ?」
「まあ俺はこれしかできんからな。新しい船買って、ステリアさん。俺の婚約者な。と、一緒に生活するもよし。ルミラちゃん。娘さんで小学生な。の、学校のことも考えて、ダグロウゼク宇宙港に家を買って、俺がそこに帰るんでもええけどな」
片繰のおっさんは夢見心地で未来予想図を語っているわけだが、正直ちょっとキモい。
「で、そのステリアさんはなにやってる人なんだよ?」
「ダグロウゼク宇宙港にある小さな工場の事務員やってはる。これ写真」
見せられた画像に写っていたのは、年齢は35~6歳ぐらい、茶髪でロングストレート、儚い感じの美人で、片繰のおっさんとはまさに美女と野獣だな。
「明日には会う予定なんや」
そういいながら、片繰のおっさんは汎用端末の待ち受けにしている女性の写真にキスをしている。
この時俺の脳裏には、ちょっと嫌な想像がめぐった。
そう。結婚詐欺だ。
スケベセクハラゴリラ野郎の片繰のおっさんだが、同じセクハラ大王のホーゼスのおっさんと同じで、仕事やその他のことは信用できる人物だ。
それだけに、その可能性も考えるべきだろう。
「ところで、さっき俺に銃突き付けたそのお嬢さんは相棒かいな?」
「ああ。バイオロイドのアディルだ」
俺の言葉にアディルがお辞儀をする。
どうやら、片繰のおっさんをかなり警戒しているらしい。
「お前が誰かと一緒におるんは、バルクスさんが亡くなって以来やな。草葉の陰で喜んでるで」
このおっさんにもそれなりに世話になっているからな、後で悪人じゃないのはちゃんと説明しておこう。
「片繰さん!」
そこに何者かの声が響き、急いで近寄ってくる足音が聞こえた。
片繰のおっさんは、自分の名前が呼ばれたことに反応して声のした方に振り返ると、
「ステリアさん!?予定は明日のはずですよね?どうしたんですかこんなとこに?」
声の主は、先ほど見せてもらった写真の女性と、その女性に顔立ちの似た、小学生ぐらいのビステルト人のティグ種・虎獣人の女の子がいた。
どうやら死別した旦那さんは虎獣人だったようだ。
写真の女性=ステリアさんはずいぶんと焦った様子だった。
「実は学校の先生から連絡があって、『親戚を名乗る人が、私が頼んだといってルミラちゃんを連れにきたのですが本当ですか?』と連絡をくれたので、そんなことはしてないと答えてすぐに学校にいって、ルミラと合流しました。連れ去ろうとしたのは亡き主人の実家の従業員で、お義母さんの指示だと…」
「はあ?それ立派な犯罪やないか!」
片繰のおっさんは怒りをあらわにする。
「それでなんでここに?そのままご自宅に帰ればよろしいでしょう?」
俺は試す意味合いも兼ねて、ちょっと嫌な感じで当たり前な意見をステリアさんにぶつけてみた。
「自宅のアパートの近くにきた時に、お義母さんの部下の人がいるのを見かけまして、それで着の身着のままてこちらに…」
ステリアさんは憔悴した様子で、演技のようには見えなかった。
かなり心苦しいが、以前にアディルを疑ったサラ姉ちゃんも同じような心境だったのだろうか。
「ところで片繰さん。この方達は…?」
ステリアさんからすれば、結婚を考えている相手が、片方がバイオロイド、片方がシュメール人だとしても、女と一緒にいるのは気を悪くするだろう。
ルミラちゃんにいたっては、縞々の耳と尻尾をピンと立てて、俺達だけでなく、片繰のおっさんも睨み付けていた。
「私の同業者で恩人だった人の孫でショウン・ライアット。彼も私と同じで貨物輸送業者です」
彼と紹介されたので、ちょうどいいので男になり、「初めまして。ショウン・ライアットと申します。こっちは相棒でバイオロイドのアディルです」
2人共俺が男になったのに驚いたが、なんとか落ち着いてくれた。
なので取り敢えず2人に座ってもらい、詳しい事情を話してもらった。
聞いた話を要約するとこんな感じだ。
ステリアさんが学生時代にアルバイトをしていたところに旦那さんが入ってきて、お付き合いをして結婚。
お互いに身寄りがないから、友人や職場の人達を呼んで挙式。翌年ルミラちゃんが産まれる。
それから5年後に旦那さんが事故で死亡。
その時初めて旦那さんの実家(ティーグアエレクトロニクス創業者一族の次男だった)を知った。
姑に『後継者問題で揉めたくないから二度と近寄るな』と言われ、そのとおりにしていた。
それから5年立ち、つい先月に実家の長男夫婦と孫が事故でなくなった。
すると姑が『跡取りにするから孫娘(虎獣人・10歳)を寄越せ』と、言ってきた。
ステリアさんもいっしょにというならともかくルミラだけという条件に、最初は娘のためにと承諾しかけたが、ルミラちゃんが激怒したため拒否。
そのため、姑は社員に命令して強行手段をとることにしたらしい。
良くありそうな話と言えばそれまでだが、親子を引き剥がすってことは、姑はステリアさんが気にくわないらしいな。
もしかすると、息子が勝手に結婚したことにいまだに腹を立てているのか。
それとも彼女がヒューマンだったり、自分達のようなセレブでない事が気にくわないのか。
その辺りは直接聞く必要があるだろうな。
「ここに追っ手がくるんも時間の問題やし、ホテルとかも網張られてるやろなあ…」
片繰のおっさんが真剣な顔をし、
「そういうたらお前の船って貨客船やったよな?」
と、尋ねてきた。
まあその後の台詞は予想通りだった。
「頼む!お前の船にステリアさん達を泊めたってくれ!」
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獣人と人間の結婚について:片方が獣人なら人間と獣人の両方が産まれます
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