File170 惑星オルランゲアでの休憩⑤ 変わらない友人との遭遇
墓参りが終われば、霊園に近いバス停からバスに乗りこんだ。
目的地は、来る時にも利用したヨルムイ=エリアのザフラ市のリニアトレインの発着駅だ。
そのバスの中で、腕輪型端末の画面を眺めていたアディルが、
「マスター。オルランゲアにあるルトビーカー遺跡ってここから近いんですか?たしか、共和国で2番目に規模が大きい天然岩石で建てられた遺跡群なんですよね?」
と、訪ねてきた。
「距離的にはそんなに遠くはないけどアクセスが問題だな。それにあそこなんにもないぞ?石の廃墟があるだけだし」
「観光客に人気な遺跡群って書いてありましたが?」
「小学生の時に社会科見学で行ったきりだな。景観と文化財保護の観点から自販機や露店すらないんだよなあそこ…」
ルトビーカー遺跡はたしかに有名だが、地元の人間は好んでは行かない。
俺と同じように社会科見学で行ったきりという人は多いだろう。
ちなみに副社長御嬢様の母親であり、著名な考古学者であり歴史学者であり国立ヴォルダル大学教授でもあるシェルナ・リオアース博士と知り合うきっかけになったのはこの遺跡が原因だ。
「じゃあ、タレクテカ大聖堂はどうですか?巨大なステンドグラスがあるそうですが」
「あーたまに結婚式やってるな。やってたら入れてくれないんだよなーあそこ。そこも社会科見学で行った記憶があるな」
「歴史的建物なのに結婚式に使えるんですね」
タレクテカ大聖堂は、惑星オルランゲアが開拓され始めた時期に建てられた教会で、巨大なステンドグラスで作られたモザイク画がいまだに残っている。
本来なら文化財として保存してそうなものだが、教会であるのだから、その役割をまっとうするべきという責任者の理念の元、結婚式はもちろん、日曜の礼拝も普通に行っているらしい。
「まあ行きたいところを決めておいてくれ。明日はアディルの行きたいところにつれていってやるからさ」
「はい!」
そんな話をしているうちに、リニアトレインの発着駅に到着し、時刻表を確認したところ、星都・サルフルップ行きがあと10分で出発だというのですぐに乗ることにした。
星都・サルフルップに到着すれば、軌道エレベーターには直ぐに乗れるので慌てる必要はなくなる。
明日本格的に観光にいくとしても、少しはのんびりしてもいいだろうから、サルフルップ都内限定にして、アディルにリクエストを聞いてみる。
すると、国立オルランゲア大学の敷地内にある、一般の人でも利用できるカフェで食べられるスイーツを食べたいというので行くことにした。
国立オルランゲア大学は、惑星オルランゲア唯一の国立大学で、様々な学部があり敷地面積もかなり広い。
もし俺が中学をでてすぐにトランスポーターにならずに高校にいっていたら、目指していたかもしれない場所だ。
取り敢えず入口の守衛さんにカフェの場所を聞き、その場所に向かっていると、
「ちょっとすみません」
と、声をかけられた。
足を止めてみると、声をかけてきたのは、パンツスーツを身に付けた、キャリアウーマンのような女性だった。
「なんでしょうか?立入禁止の区域には踏み込んでないはずですが」
大学内は、一般の人間が出入り出来るとはいえ一部の建物内や敷地に立入禁止の区域がないわけではない。
しかし、明らかに大きな通りを歩いていたのだから問題はないと思ったんだがな。
「あーやっぱりわかんないか。私、私!マルチナ・アルラガナスよ!」
キャリアウーマンのような女性が、指で眼鏡の形を作り、名前をなのると記憶が甦り、彼女が何者か思い出した。
「あ!委員長か!?眼鏡がなかったし、雰囲気が変わってたからわからなかった!」
「もう委員長じゃないわよ。ライアットくんはどうしてここに?」
「ああ。この子が大学内のカフェに行きたいって言ったんでな」
「ああ、あそこね。案内してあげるわ」
こうして、中学以来にあった委員長、マルチナ・アルラガナスの案内で、カフェに向かうことになった。
アルラガナスさんとは中学卒業以来なので、色々話したいことはあった。
「そういえば、なんで今日はオルランゲアにいるわけ?てっきり飛び回ってるとばっかり思ってたけど」
「船をオーバーホールに出してるんだ」
「なる程ね」
「アルラガナスさんはここに入学したんだっけ?」
「いまは院生やってるわ。もう少しで文学の博士号を取れそうなの。卒業後は国立オルランゲア大学で准教授に誘われてる」
「そりゃすごいな」
「そっちは中学卒業してすぐに就職したんでしょ?色々大変だったんじゃない?」
「まあまあかな。なんとかやってるよ」
中学時代の彼女はなかなかアレだったが、眼鏡を外し、髪はロングヘアーになりキッチリとスーツを着こなし、大学院生、果ては大学の准教授になろうという彼女に、昔の面影は取り敢えず見当たらなかった。
「で、この子は誰なの?彼女?」
そして当然だが、アディルの事に話がおよぶ。
「相棒のアディルだ。縁があって手に入れたバイオロイドなんだ」
「初めまして。アディルと申します!」
「へ~バイオロイドなんだ。私はマルチナ・アルラガナス。ライアット君とは中学の時のクラスメイトよ」
そうやってにこやかに挨拶をしていた時、なぜかアルラガナスの目付きが怪しくなった様な気がした。
「まさか中学の時みたいな変な事を考えてないだろうな?」
まさかなと思いながらも、なんとなくいやな予感がしたので、冗談っぽく尋ねてみた。
「なにも考えてないわよ。高身長で性格も良さげ、おまけにスタイルもいい。どこのメーカーの子かなって思っただけだから」
澄ました感じでいっているが、視線はアディルの胸に集中していた。
あれは確実に中学時代の委員長の雰囲気だ。
「大学院生にもなったから、悪癖を反省したんじゃないのかよ…」
「それはそっちが勘違いしただけでしょう?」
ため息をつきながら緩くといつめると、あっさりと白状した。
「それに、私に悪癖を植え付けてくれた張本人に言われたくないわよ。あの頃は女の子の貴方が本当に素敵な御姉様に思えてたんだもの」
委員長は心外とばかりに俺に非難を浴びせる。
「じゃあ歯を折ってくれとか、胸の谷間に顔を埋めてスーハーさせてくれとか言ってたのも俺のせいだと?」
なので、当時の彼女の悪癖を指摘すると彼女は言葉に詰まり、
「えへっ♪」
と、笑いながら舌を出して誤魔化した。
それにより、最初に感じたキャリアウーマンのイメージは完全に消え去った。
それにしても悪癖が直るどころか悪化してないか?
ともかくその仕草にイラッとしたので、
「じゃあ俺達はこれで。カフェの場所はわかったんでな。あと、変態を准教授にしない方がいいですよって抗議のメールを委員長の実名入りで大学に送っておく」
アディルの肩、は無理なので腰を掴んでカフェのあるらしい方向に早足で向かった。
「待って待って!ごめんなさい!全部私がおごるから!許して!」
するとその後ろから、委員長が謝りながら追いすがってきた。
まあ、流石に通報はする気はなかったが、これを機会に自重してもらいたいもんだ。
そして大学内にあるそのカフェに到着すると、彼女のおごりで、飲み物を始めとして、『濃厚ブランド卵と自家製ハムのホットサンド』『特製ソーセージの有機野菜マシマシホットドッグ』『三段重ねのふわふわストロベリースペシャルパンケーキ』『カルテットチョコレートパフェ』なんかのなかなかに高そうなメニューを注文してやった。
もう少し日常話です
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