File171 惑星オルランゲアでの休憩⑥ 苦い想いと甘いもの
委員長ことマルチナ・アルラガナスの案内でたどり着いた、オルランゲア大学内にあるカフェでの食事はなかなか美味しかった。
そして、入る前にはわからなかったのだが、このカフェには同じようなネーミングコンセプトのケーキやデザートが並んだスイーツショップが併設されていた。
ネーミングはともかく、見た目美味しそうなケーキやデザートにアディルが興味を示したので、持ち帰りするから好きなのを選ぶようにと言ってやると、真剣に悩み始めてしまった。
その光景を見つめていると、アルラガナスが声をかけてきた。
「ライアットくんさ。アディルちゃん大事にしてるんだね」
「相棒だし、家族だからな」
明らかにからかう気が満々なので、素っ気なくと答えてやった。
するとさらに、
「お祖父さんはお元気なの?」
と、聞いてきた。
「3年くらい前に病気でポックリ。今年で4年目かな」
「ごめんなさい…。失礼なこと聞いちゃって…」
「別に良いよ。知らなかったんだし」
彼女は申し訳なさそうな表情をする。
俺の祖母と両親が亡くなっているのは彼女も知っている。
しかし祖父が亡くなったのは、中学を卒業してからだから知らなくて当然だ。
「それよりそっちはどうなんだ?中学の時から趣味がそのままなら苦労してそうだけど」
湿っぽい話もなんなので、ちょっと失礼ではあるが、話題を変えるべく彼女に話を振った。
「恋人ってこと?」
「まあな」
中学時代から治っていないの彼女の癖を考えると大変そうだが、それさえなければ美人で頭もよい彼女ならモテそうな感じはする。
「居ないっていったら、女の子になって胸の谷間スーハーさせてくれる?」
「断る」
この癖さえなければ本当に。
まあ俺が拒否する事ぐらいは、最初からわかって言っているんだろう。
特に落ち込むような様子もなく、
「仕方ない。後でルーの谷間に埋もれさせてもらうかあ」
「ルー?」
「ルーフィア・リスラート。貴方と同じシュメール人の彼氏兼彼女かな」
自分に恋人がいることを告白した。
その彼女の表情は、物凄く嬉しそうだった。
だが、恋人がいるならさっきの発言は不味いだろう。
「そりゃおめでとう。というか、今の発言は浮気になるんじゃないのか?」
すると彼女はニヤリと笑い、
「私もルーもゲーオタのアニメオタだからさ、オオキタ・ソーナのおっぱいなら喜ぶわよ♪」
と、汎用端末を操作し、俺にとっては黒歴史とも言える、オルランゲアのコミックマルシェでのオオキタ・ソーナのコスプレをした俺の画像を見せてきた。
「中学の時は女の子の時はポニーテールしてたでしょ。だから、ライアットくんが大人になったらこんな感じかな~とは思ってた。でも画像見た瞬間はそれ専用に作ったアンドロイドかと思ったわよ」
「知り合いに売り子の助っ人を頼まれて会場にいったら、無理矢理着せられたんだ。というかなんで俺だってわかったんだ?」
彼女がそういう趣味なのは知らなかったが、どうやら俺をモデルに作られたとまでは思われてないようだ。
でもなんでこれが俺だと判別できたんだ?
「撮影エリアで窃盗犯と盗撮犯捕まえた時の動画をルーがたまたま撮っててさ、それに入ってた声でわかったわ。あ、ちなみにこれがルーフィリア。女の子版ね」
そうして彼女が見せてくれた写真には、金髪碧眼の女性が、アルラガナスと並んで笑顔を浮かべていた。
「ちなみにその動画は、肖像権なんかのこと考えてどこにも公開してないから安心してね」
「出来れば消去してくれ…」
そのあたりの常識的な判断をしてくれているのは非常にありがたい話だ。
「そうだ。連絡先交換しない?中学の時のサークルボードはなくなっちゃったからさ」
「ああ。べつにいいよ」
そうして連絡先を交換していると、
「マスター!ほしいものが決まりました!」
欲しいものが決まったらしいアディルが声をかけてきた。
ちなみにその品物の名前は、『朝採れブランド卵と新鮮濃厚牛乳のカスタードプリン』とか『地元産3種類のベリーを使ったベリーベリーベリーロールケーキ』とか『自家製マスカルポーネのティラミス』といった感じだった。
そうしてケーキを買い、大学の入り口でマルチナ・アルラガナスと別れた後、宇宙港のホテルに戻るために軌道エレベーターに乗り込んだ。
そして宇宙港に戻ってきた時、
「そう言えば昨日のササラさんのプリンはどうなったんでしょう?」
と、アディルが呟いた。
俺も気になったので貨物配達受付に行ってみたところ、ちょうどササラがいたので、軽く声をかけた。
「ようササラ。プリンはどうな…ってどうした?」
が、受付にいたササラは、脱け殻のような表情をしていて、俺が話し掛けると身体を震えさせ始めた。
「奪われた…」
その一言で、俺とアディルはササラの身に何が起こったかはすぐに理解した。
「あれだけ渡さないって息巻いてたのにか?」
あの時の彼女の迫力から考えて、奪われるとは考えにくい。
その彼女から奪い取るとは何者だ!?
すると彼女はぽつぽつと語り始め、
「あのあと外務部の嫌味な眼鏡がやってきてさ…。お客様用のお茶菓子が切れそうだからって、私のプリンを全部持ってったんだよ…。全部だよ全部…。1個でいいじゃん…。それ以前に他部署に調達にくるな!買いに行け!許可も取らずに勝手に持って行こうとするな!おまけに『私物だから持っていくな!どうしてもというなら代金を払え!』っていったら『職員なら職務のために無償提供して当然だろう。そもそも業務管理部には菓子が腐るほどあるだろう』だと?!ふざけるなぁぁぁぁぁぁっ!」
最後には怒りを再燃させていた。
「そりゃ災難だったな…」
ちなみに外務部というのは、宇宙港や賞金稼ぎギルド・警察・政府・自治会なんかと提携交渉や情報交換をしたり、ギルドの設置場所を探したり、クレーム対応をしたりする部署だ。
そのため来客も多く、そういったものは常備しているのだろうが、ストックが少ないところに来客が多くきてしまったんだろう。
そして業務管理部というのは、お客からの配達依頼の受領。登録者(輸送業者)への割り振りを行う部署の事で、ササラ達の職場であり、俺達貨物輸送業者が世話になっているところだ。
女性が多い職場だけあって、個人が持っているお菓子なんかが多いのはわからなくはない。
だが、そのエリートとやらの強引な理屈で勝手に持って行くのはどうなんだ?犯罪だろ。
そんな荒ぶるササラに代わり、
「その後事情を知った外務部の部長さんがきて謝ってくれて代金は払ってくれたんですが、プリンは全部食べられちゃったみたいなんです。ちなみにその外務部のエリートの方は謝りにはきませんでした」
ミィミスが奪われた後の顛末を話してくれ、
「ですが…私たち業務管理部・貨物配達受付係の人間は、全員がその方の顔をしっかりと記憶させていただきました♪」
笑顔でそんなことをいってきた。
ああ、そのエリートはここの女性達全員を完全に敵に回したわけか…。
取り敢えず、今度なにか差し入れておくかな。
最近仕事が忙しくて筆が滞りがちです…
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