File159 惑星エオエデでの休暇② 心根が変わらない友人はありがたい
がっくりと肩を落とすケビンを連れて繁華街を歩き、土産物屋や晋蓬皇国式の温泉街の娯楽施設なんかを廻っていた。
射的や輪投げ・弓当てといった晋蓬皇国式のはもちろん、ピンボールやくじ引きといったものもあり、なかなか楽しいものだった。
ちなみにその途中に、純金は冗談だといってやったところ、めちゃくちゃ安堵の表情を浮かべていた。
幸い変なチンピラなんかに絡まれることなく温泉街を楽しみ、そろそろ食事の時間も近付いてきたので、角屋旅館の送迎用移動板の乗り場に向かうと、以前にあったケビンの職場の先輩にでくわした。
「あ!おいケビン!おまえどこにいってたんだ!合流する気配がなかったから、こっちで勝手に回ったからな!」
「すみません。偶然友人にあって、そいつと廻ってたんです」
俺は腕を離し、アディルにも離すように合図する。
「たしか、ジャン・ゴーズルさんですよね。お久し振りです」
そして丁寧に挨拶をすると、俺に気が付いたケビンの先輩は、
「あ!ライアットさんじゃないですか!お久し振りです!お元気でしたか!いやあ。温泉地で美人に出会えるとは運がいいなあ!」
と、ニコニコしながら話しかけてくる。
するとそこに、ケビンと歳が近い感じの男性と、30代くらいの女性と、俺やケビンよりは年下っぽい女の子がやってきて、
「あーケビン先輩こんなとこに居たー」
「コールマン君。あなた今までどこに居たのよ?」
「それよりケビン!何でお前がそんな美人2人と一緒にいるんだ!」
と、各々が手に紙袋を持った姿でケビンに声をかけてきた。
まあ間違いなく、ケビンの会社、たしかセローデク商会だったか。の同僚だろう。
「えーと、こいつはショウン・ライアット。中学時代からの友人なんです」
「ショウン・ライアットと申します。こっちはバイオロイドのアディルです」
「初めまして。アディルと申します」
ケビンが俺達を紹介したので、丁寧に挨拶をする。
そうすると、
「ご丁寧にどうも。私はサメラ・ブレビア。ケビン・コールマンの同僚で先輩になります」
俺と同じ浴衣姿の、30代くらいの女性が丁寧に挨拶をしてきて、
「俺は同じく同僚のスヴァン・ロガー。ねえ君、オオキタ・ソーナのコスプレ着てくれないかな?絶対君なら似合うと思うんだよ~」
「うわっ!キモっ!」
同い年くらいの男性は、笑顔で人のトラウマを抉るような事を言い、
「私はエリトリア・クリエスです。へ~ケビン先輩の知り合いにしては美人じゃないですか」
その彼の発言をキモいと言った年下っぽい女の子は、俺とアディルをじろじろと値踏みするように見つめてきた。
「お前ら。社外の人に失礼をするな!」
そして、きちんと挨拶したブレビアさん以外の2人は先輩のゴーズルさんに叱られていた。
そんなことをしているうちに送迎用移動板がやってきたので、他にも帰ってきたお客さんたちと一緒に乗り込むことになった。
そのなかには、以前にお会いしたあの課長さんもいた。
「お久し振りですねライアットさん。以前の『ロングショット』コロニーでは本当にご迷惑をおかけしました」
課長さん、リチャード・ハイマスさんは、丁寧かつ美しいお辞儀をしながら、『ロングショット』コロニーでの事を謝罪してきた。
「いえ。あれはセローデク商会さんの責任ではありませんから、気にしないでください」
「ありがとうございます。あの後取引もスムーズに終了し、丸く収まりました」
ハイマスさんは丁寧に頭を下げながら感謝の意を示してきた。
「課長。だったらそのお礼も兼ねてうちの宴会にお誘いしたらどうです?」
そこに、ゴーズルさんが妙な提案をするが、
「いやあ。私達はともかく、ライアットさんは気を遣ってしまうだろう」
課長さんに即座に却下されていた。
まあ俺としても、行きたくはないが。
そんな話をしているうちに、送迎用移動板は角屋旅館に到着した。
視点変換 ◇ケビン・コールマン◇
「いやー両手に花♪両手に花♪」
まさか慰安旅行中にショウンの奴に出くわすとは思ってなかったなあ。しかもバイオロイドの女の子付き!
さらには晋蓬皇国式の浴衣姿!
中学時代にやってた下らないサインをしてみたらノってくれるというありがたい返し!
銀髪巨乳のショウンはもちろん。アディルちゃんも可愛いよな~。
まあ2人とも俺より身長高いけど。(俺は屈辱の169㎝!)
見ろ見ろ。あそこの野郎2人組が羨ましそうに眺めてやがるぜ!
お。女の子もみてくるのか。まあ2人とも美人だし、ショウンの方は有名なソーシャルゲームのキャラにそっくりだからかも知れんけど。
そんな夢心地の時に、ショウンが現実に引き戻してきた。
「報酬は純金の10gプレート2枚な」
そうだった!中学の時にはこれを要求したらあとで絶対なんか奢らされてたんだ!
といっても、所詮は中学生だったからジュース1本とかだったんだけど、大人になったからってそれは酷くないか?!
すぐさま汎用端末を取り出して、金相場を確認する。
「えーと…今の取引価格が1g=8600クレジットだから…。1枚で8万6千クレジット。合計17万2千クレジット!俺の月の給料の半分近いじゃねーか!」
冗談じゃない!こんなにむしり取られたら明日から生活できなくなる!
「今回は2人分だから当然だな。ほれ。いくぞ」
離せ!腕を組むな!ってこいつ!わざと胸を押し付けてるのか?!
馬鹿め!思春期のガキではないんだ!そんなことでろう絡されるものか!
「頼む!給料の半分近く持ってかれたら明日からの生活がヤバくなっちまう!」
「まあまあ。その分サービスはしてやるよ♪」
うおっ!もう片方にアディルちゃんのがっ!
耐えろ!逆らえ!ここで負けたら来月の給料日までの俺の生活は惨めなものになってしまうっ!
「いらないから!そのサービスはいらないから!」
まさかこいつ!貨物輸送業者だけじゃなくてキャバ嬢とかやってる…はずはないか。
ええい!振りほどけ!振りほどけ俺!あ…両腕に柔らかいのが当たってる…。
俺はその現実に敗北感と幸福を感じながら、色々な店を回っていると、
「おいケビン。さっき言ってたサービスの代金はこれでいいぞ」
土産物屋で、ショウンのやつがついに最終勧告をしてきた。
俺はショウンの顔を見ることなく本音をはいた。
「なあ。たのむから勘弁してくれよ。月の給料の半分はきついんだよマジで…」
「お前どれだけ薄給なんだよ…。こんなのも買えないのか?」
ショウンの言葉にイラッとして、文句の一つも言ってやろうと振り向くと、その手には四角い箱があり、その包装に『賄賂饅頭』と書いてあり、『コバン』とか言う、晋蓬皇国が製作していた古い時代をテーマにしたドラマにでてくる通貨の形をしたスイーツだった。
「えっ!どういうこと?」
「流石に純金なんか要求しねえよ。そもそも売って無いだろこんな観光地に」
ショウンは呆れた様子で菓子の箱で俺を指してくる。
「そ…そうだよな!」
よかった!それぐらいだったら大丈夫だ!
良く考えたら、中学時代ショウンが代価に要求したものは、俺の小遣いで賄えるものばかりだった。
そんなショウンが俺の生活がたちゆかなくなるような要求をする訳が無いじゃないか。
その事実に安堵していると、
「マスター。先ほどおっしゃっていた純金ですが、あれではいかがですか?」
アディルちゃんが、片手をあげた変な猫の置物を指差していた。
説明書きには『純金製40g招き猫・34万4千クレジット』とあった。
なんでそんなものが売ってるんだよ!
もちろんショウンが止めてくれたのはいうまでもない。
視点終了
実際の温泉地に純金の置物が売っているかは定かではありません。
賄賂饅頭は、似た感じの品物があったような気がします。
もし同じ名前のものがあったらどうしよう…
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