File158 惑星エオエデでの休暇① 不意に起きた楽しい事は本当に楽しい
シーベルス海賊団の連中が、風呂あがりに出してやったプリンをなぜか泣きながら食べたり。
リュオウ警部殿とササラの奴に連絡をとり、彼等が何故海賊になったのかの事情を録音しつつ話したりなどしていた間に5時間が経過し、やってきた警察に大人しく連行されていった。
ちなみに話を聞いた警部殿は『わかった。有効に使わせてもらう』と言い。
ササラは『こういう馬鹿がいまだに生息するから『依頼料中抜きしてるんじゃないだろうな?』とかいまだに因縁付けられるんだよね~これは是非ともなんとかしてあげないとね~』と、悪い笑顔を浮かべていた。
それからまた10時間かけ、今度は何事もなく、当初の予定より6時間遅れての午後1時30分に惑星エオエデに到着した。
惑星エオエデは 銀河共和国の中でも有名な惑星で、星域連邦や帝国にまで名前が知られている。
その理由は、この惑星には至るところに温泉が湧いている上に、その温泉の効能の一つに美肌や疲労回復なんてのがあるからだ。
さらには、元・晋蓬皇国の人達が始めた、『温泉街』という都市ぐるみのコンセプトも人気があり、シーズンを問わず観光客・湯治客が絶えないらしい。
以前に晋蓬皇国風の旅館である『武蔵屋旅館』に宿泊した時は、料理・サービス・風呂など、本当に満足したので、せっかくならこの『温泉街』も体験したいとは思っていた。
「マスター!一緒に温泉に入ってみたいです!」
なので、アディルがおねだりをしてきたのをこれ幸いに、旅館が取れなかったら入浴だけでもと考えながら旅館を探したところ、『角屋旅館』という所で2人部屋が空いていたので、予約して宿泊することにした。
軌道エレベーターを降りると、目の前に広がるのは木造の建物が並ぶ町並みと、それを覆う大量の湯気だった。
組合の受付でもらったガイドブックには、街中の至る所からお湯が吹き出すため、街がこのように湯気まみれになるらしい。
ともかく、そんな街中を眺めながら、予約した『角屋旅館』にむかった。
到着した『角屋旅館』は、繁華街のある所から少し離れており、かなりの敷地面積があるようだ。
そして以前に泊まった『武蔵屋旅館』とは違って2階がなく、部屋や浴場やレストランなど向かう時には階段やエレベーターを使うことがない。が、それだと当然ながら移動距離が凄いことになるが、その対策として、施設内移動用の移動板があり、そのための専用通路もある。
俺とアディルが案内された2人部屋は、到着まで距離はあったものの、晋蓬皇国風の旅館ではスタンダードな部屋だった。
「ではマスター!さっそく温泉にいきましょう!」
持ってきた着替えなどの入ったバッグを部屋に置くなり、アディルがはしゃいだ様子で俺に詰めよってきた。
「別に温泉は逃げやしないんだから、少しはゆっくりしな。それに、晩飯を食べてからのほうが時間を気にせずに入れるぞ」
そういってアディルをたしなめているところに、ノックの音が聞こえた。
「どうぞ」
「失礼いたします。浴衣と羽織りを御持ちしました」
入室許可をだしたところ、大きな箱形の御盆をもった仲居さんが入ってきた。
その御盆には、浴衣という、晋蓬皇国では温泉街特有の、外着にもなるバスローブと、その上から着る紺色のガウンがあった。
これは、フロントで浴衣のサイズと色柄を指定すると、後から部屋に届けてくれるシステムになっていて、サイズはともかく色柄はお任せにしてみた。
「あ、ありがとうございます」
「お二人とも美人さんな上にスタイルもよろしいから、浴衣選びが大変でしたよ」
仲居さん(おばちゃん)はにこにこしながら俺たちに浴衣を渡してくる。
そう。いま俺はアディルが一緒に温泉に入りたいという要望に答えるため、女の姿になっている。
男のままでもよかったが、男女だと違った目線で見られそうなので、女の姿は都合がよかったと言える。
「お夕食は午後6時からになります。お時間がありますので、お風呂に入るなり、街中を散策するなりしてはいかがですか?旅館内もお庭や娯楽施設などもありますし、時間は潰せますよ」
今の時間は午後3時。風呂は夕食の後にと決めている。
それならばと、浴衣に羽織りというスタイルに着替えてから街中を散策することにした。
そうして玄関に向かい、部屋の鍵をフロントに預けようとした時に、意外な相手に出会った。
「あれ?ケビンじゃないか!」
「え?ショウン?!なんでこんなとこに?!」
それは、中学時代からの友人であるケビン・コールマンだった。
スーツ姿ではなく、かなりラフなスタイルだが、接待の可能性もなくはないだろう。
「俺は仕事でここに来て今は休暇だ。明日の朝までだけどな」
「俺は慰安旅行で、今日からなんだ。ところでこっちの彼女は?」
どうやら接待ではなかったらしいケビンがアディルに視線を向けると、アディルは丁寧に挨拶をする。
「始めまして。バイオロイドのアディルと申します」
「俺はケビン・コールマン。ショウンの中学時代からの友人だ。よろしくねアディルちゃん」
そしてにやにやしながらアディルと握手をかわし、アディルの胸元を眺めていた。相変わらずだなこいつは。
「俺達は夕食の時間まで街の散策に行くつもりだけど、お前は?」
「俺も散策の予定で、いまから会社の同僚や先輩後輩と合流の予定だったんだけど、お前らに付き合うよ」
「いいのか?会社での付き合いとか」
慰安旅行とはいえ、会社内での付き合いなんかもあるだろうに、勝手な行動はヤバいと思うのだが、
「むさいマッチョ先輩やオタクで無神経な同期、キーキーうるさいお局様や我が儘後輩女子なんかよりは、気の知れた友人の方が万倍ましだね」
ケビンの奴はかなりやさぐれた表情で明後日の方向を見つめていた。
サラリーマンって奴は気苦労が多いんだな…。
玄関をでると、繁華街までの送迎用移動板があり、それに乗って繁華街まで移動することができる。
そうして繁華街に到着すると、ケビンの奴が両手を腰に当てて輪っかを作り、アピールをしてきた。
これは中学時代。俺が『月のもの』で女になる度に要求してきた事で、その度になにかしらおごらせたのは言うまでもない。
俺がため息をついてからケビンの腕に手をまわすと、アディルも同じように手をまわした。
「いやー両手に花♪両手に花♪」
ケビンの奴はニコニコしながら繁華街を歩いていく。
心なしか、いや、確実にすれ違う人達に対して自慢気な様子なので、現実を教えてやることにする。
「報酬は純金の10gプレート2枚な」
それを聞いたケビンは手を離し、汎用端末をいじり始めた。
「えーと…今の取引価格が1g=8600クレジットだから…。1枚で8万6千クレジット。合計17万2千クレジット!俺の月の給料の半分近いじゃねーか!」
どうやら金相場を調べたらしく、驚愕の表情を浮かべていた。今の金相場はしらなかったが結構高かったな。
「今回は2人分だから当然だな。ほれ。いくぞ」
俺はケビンの腕を取り、アディルにもう片方の腕を取らせ、ケビンを引きずっていく。
「頼む!給料の半分近く持ってかれたら生活がヤバくなっちまう!」
「まあまあ。その分サービスはしてやるよ♪」
「いらないから!そのサービスはいらないから!」
ケビンは必死に勘弁してくれと懇願してくる。
まあ、実際には土産の菓子を3つ4つで済ましてやるつもりだ。
中学時代にもこんなやり取りをよくしていたものだと思いだし、思わず笑ってしまった。
まだ温泉にははいりません!
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