File155 惑星メレンデレクへの貨物輸送とついでの観光③ 責任者の立場は意外に気苦労が多い
砂嵐による足止めを回避して宇宙港に戻ると、砂嵐の影響で惑星上に降りられない人達でひしめいていた。
ロビーに設置してある大型ビジョンでは、その砂嵐の映像が流されていて、大規模といっていたとおり、かなりの広範囲に広がり、その高さは高度5000mまで到達していると報じられていた。
シャトルの窓から眺めただけでも、えもいわれない恐怖と不安を感じてしまう程だったのに、大型ビジョンでの迫力ある映像だと、より一層の恐怖と不安が襲ってきた。
俺達はロビーをあとにすると、フードコートにあるいつもの店で定番の食事をし、足早に船のある停泊地に向かった。
停泊地に到着すると、船体のあらゆるチェックを済ませてから早々に風呂に入り、早めに就寝した。
昨日の事もあったのか、翌朝はちょっと遅めに起きてしまったが、急ぐ必要はないので、ゆっくり朝食を食べてから惑星メレンデレクの貨物配達受付に向かった。
この惑星から輸出されるのは基本的に1千トン単位での鉱石や希土類。もしくは500トン以上でのサボテン酒が多く、小型船が受けれる依頼はなかなかない。
が、たまたま受けれる依頼を見つけてしまった。
『スイカ(要冷蔵)…載量450トン・配達先:惑星エオエデ・期限は5日間・報酬120万クレジット』という依頼だ。
いままでは無理だったが今は貨物室に冷蔵冷凍の機能があるので受ける事ができる。
というか、初めて使うことになるかもしれない。
ちなみに鮮度が重要なので、今回はスピードを出す必要があるだろう。
このスイカもここの特産品らしく、サボテン酒程ではないがかなりのブランド品らしい。
積み込みはすぐに開始してもらい、順調に積み込みが進んでいるうちに10時になり、『モイズホスピタルコロニー』の人間が謝罪にやってきた。
そのメンバーは、当事者だった医者の爺さんと若い女性職員。さらには中年の男性に秘書っぽい女性もいた。
もちろん、というか連れてこられると迷惑な患者の男はいなかった。
「お初にお目にかかります。『モイズホスピタルコロニー』の理事長を務めておりますサデル・ルランドと申します。ショウン・ライアット様、この度は私どもの管理の不行き届きにより大変なご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございませんでした。今回は患者であり加害者であるエリック・ムーリスは、裁判の後に当施設にて厳重収容という形になります。事実上の禁固刑です」
中年の男性、理事長さんともども全員が深々と頭を下げる。
どうやら心から申し訳ないとおもっているらしいが、アディルの名前がないのは、おれの持ち物だから必要ないと思われたのだろう。
「わかりました。謝罪は受け入れます。そしてそちらのおっしゃるとおり、被害届はそのまま棄却はいたしません。よろしいですね」
だが、アンドロイドをパートナーにした場合はよくあることなので、謝罪を受け入れた。
「はい、ありがとうございます。その方が我々にとっても戒めになりますので…」
理事長の表情を見るに、向こうとしてもなかなか苦渋の決断だったのかもしれない。
「それと、御詫びにもなりませんが、どうかこれをお納めくださいませ。慰謝料の方は、正式に罪状が決まり次第、滞りなく支払わせていただきますので」
そう言って理事長が菓子折りらしきものを差し出してきたので、ありがたく受け取った。
「わかりました。では今後も患者さんたちのためにご尽力ください」
ある意味この人達も被害者なわけなので、これ以上は望む必要はないだろう。
帰り際、主治医の爺さんや付き添い職員の女性は、深々とお辞儀をしていった。
視点変換 ◇患者の男:エリック・ムーリス◇
「…ん…」
柔らかいいつもの寝所の感触に、余は意識を覚醒させ、身体を起こす。
「お目覚めになられましたか?」
すると、待機していた侍女が蒸したタオルで、余の顔を丁寧に拭きはじめる。
「余はどうしたのだ?」
「惑星メレンデレクに降り立ったのは覚えて御座いますね?そこで意識を失われてしまわれましたので、早急に王城にお運びし、御殿医様に診断と治療を施させていただきました」
侍女がそう答えると、下界での記憶がよみがえり、早急に怒りが沸いてくる。
「…そうだ!あの女共は何処だ!余の前に引き摺りだせ!」
あの女共め!余が忍びで下界の市勢を見ていたとはいえ無礼にも程がある!
「ご安心くださいませ。すでに捕らえてございます」
「そうか。余の玉体に攻撃を加え、あまつさえ気絶までさせたのだからな!なぶるだけなぶってから成敗してやる!」
特に銀髪の女は、存分にいたぶってから成敗してやろう。黒髪のデカイほうは生かしておいて、余の椅子にしてもよいかもな。
「ではその前に、お湯とお着替えとお食事を済ませてはいかがで御座いましょうか?」
ふむ。たしかに焦ることはないな。皇王たるもの常に悠然とあらねばな。
「良いだろう。湯女を用意しろ」
「ありがとうございます」
湯殿に向かい、湯女に玉体を洗わせたのち、部屋に戻り膳を並べさせた。
「お口に合いましたでしょうか?」
「今一つ塩気が足らん。料理人は始末しろ」
「畏まりました」
余の好みを把握してこそ意味があるというのに、無能な料理人だ。
そう吐き捨てながら、用意された酒をぐいと飲み干した。
「ぐっ…!うがっ…!」
すると、喉に焼けるような痛みが走り、次の瞬間には喀血し、倒れ込んでしまった。
「おい…っ…!ごほっ!…医者を…!」
余が苦しんでいるにも、かかわらず、侍女は平然と余を見下ろしている。
すると部屋の扉が開き、御婆様とその従者達がやってきた。
そのなかには、余の殿医もいた。
助かった!そう判断して御婆様に声をかけた。
「おば…あ…さま…」
しかし御婆様は侍女同様に余を平然と見下ろし、
「首尾よくいったようですね」
と、まるで品物でもみるかのような視線を余に向けてきた。
「色々とトラブルも御座いましたが無事に」
侍女は御婆様に最敬礼をする。
「これは本当に失敗作でしたね。馬鹿な老害共がおかしな常識ばかり教え込んだせいで使い物にならないどころか障害にすらなってしまった。
その点、新しく見つけた皇王はものすごく優秀で、すでに高い地位についています。私たちの悲願達成も短縮されるでしょう」
御婆様は、従者や侍女たちに笑みを浮かべながらそんなことを言ってきた。
なんだそれは?!新しい皇王だと?!
余は王に成るべくして産まれ、育てられてきたはずだ!
皇王とは余のことだ!この月島皇一に他ならないはずだ!
「皇王は…ぐふっ…余…だ…!」
余は痛みに耐えながらも、死力を振り絞って身体を起こし、御婆様、いや、月島千代子を睨み付けた。
「皇一。貴方はたしかに晋蓬皇国の皇族である月島本家の血筋です。ですが、お前は成長するに従い、傲慢で横暴で残虐で性欲と支配欲の塊という、皇王に相応しいどころか、人間としてあまりにも駄目な方に成長してしまいました。
ですが最近、月島の血を引き、お前とは比べ物にならないほど優秀で、しかもあの老害共の影響を受けていない、より皇王に相応しい者が見付かったの。いままではあの老害共が居たせいでどうにも出来なかった。しかし老害共はすでに排除した。だから処分するのですよ。恨むなら、失敗作になってしまった自分と、そうなるように教育した老害共を恨むのね」
月島千代子は余を冷ややかな表情で見つめていた。
そして次の瞬間、余の玉体に余の光線剣の刃が突き刺さった。
それを持っていたのは、目の前にいた月島千代子だった。
「そして私も恨みなさい。貴方を都合よく使い捨てる私をね」
その御婆様の顔は、何故か悲しそうだった。
それが余が見た最後の光景だった。
視点終了
新しい人種をどんなのにしようか悩んでいます
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