File153 惑星メレンデレクへの貨物輸送とついでの観光① 見慣れない風景はやっぱり感激する
リコール女が連行され、コルクロック氏が立ち去った後、俺とトニーは手早く仕事を受け、そそくさと自分の船に戻った。
その時にトニーの奴が、
「本当ならお前のとこで飲ませてもらうつもりだったんだが、今回は止めとくわ」
と言ったぐらいだから、今回の事はかなり疲れたようだ。
無論俺も疲れたので、さっさと船に帰って休むことにした。
翌朝は、貨物を積み込んだ後に通信でトニーの奴と軽く挨拶だけ交わした。
ちなみにトニーの奴は惑星マオガタ。
俺たちは逆方向の惑星メレンデレクに向かう。
幸い昨日のリコール女の仲間みたいなのが突撃して来ることや、飛び込みのチャーター客もおらず、落ち着いて惑星フェザーフを離れる事ができた。
目的地である惑星メレンデレクは、フェザーフから500光年離れた砂と土と岩の惑星で、惑星表面の85%が砂と土と岩で覆われている。
その理由としては、この惑星メレンデレクに雨が少ないのが原因だ。
全く降らないわけではなく、雨季にまとめて降る。
現在は乾季であり、湿気のない乾燥した風が吹き、暑いが過ごしやすい時期でもあるらしい。
そして夜になると、昼とは違いとてつもなく寒くなる。
そのため岩が膨張と収縮を繰り返した為にヒビなどができ、そこに入り込んだ水が氷結と融解を繰り返しで岩を破壊していったために、元々は岩ばかりの惑星だったのが、少しずつ砂になっていったのだろうと言われている。
その砂漠の砂は細かく美しいため、最初にこの惑星を発見した者達は、砂金と勘違いしたというのは有名な話だ。
この惑星上の都市は、数少ないオアシス周辺や、岩場をくり貫いた洞窟内などに築かれており、都市間の移動はおもに浮遊車輌や惑星上用航空機や宇宙船で移動する。
そのなかでも星都であるロックトルは、地上から登頂部までの高さは459m、底面積が約22,315km²で登頂部面積が18,388. km²という共和国・連邦・帝国を含めて惑星上にある一枚岩で2番めの巨大さの岩の上に築かれていて、岩上都市と呼ばれている。
ちなみに星都名のロックトルとは、この一枚岩の名前でもあり、その登頂部は長年の風で平らに削れていて、整地の必要がないくらいだったらしい。
そんな巨大な岩の上に築かれた都市は、風の影響と景観を考えて20m以上の建物は建てられていない上に、風に舞う砂による磨耗を防ぐために、『白泥粘土』と呼ばれるこの星で産出される粘土から作られた白い煉瓦で壁をコーティングされている。
さらには頻発する砂嵐が上空3000~6000メートル程度まで達するために、軌道エレベーターの磨耗が凄まじい事になるため設置されておらず、宇宙港への行き来は地上からのマスドライバーを利用したシャトルの往復で成り立っている。
そのため、このメレンデレクの宇宙港は軌道エレベーターを取り囲むドーナツ形ではなく、三角形配置の円筒形コロニーのタイプになっている。
その資料映像の中の砂漠の映像を見たアディルは、
「すごいです!まるで海みたいです!」
と、興奮していた。
岩上都市にも興味津々らしく、食い入るように眺めていた。
「向こうに着いたら惑星に降りてみるか?」
そう俺が提案すると、
「いいんですか?!」
アディルは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
惑星メレンデレクまでは2日と2時間。
一切のトラブルなく無事にたどり着くことは出来たが、ちょうど『月のもの』が来てしまった。
とはいえ仕事には全く影響がないので問題はない。
そうして貨物を引き渡し、報酬を受けとると、惑星上に降りるためのシャトルの発着場に向かった。
その途中の通路や看板に書いてあった情報によると、今ここでは『サンドレース・フェスティバル』という、広大な砂漠と土と岩場を利用したモータースポーツのイベントが行われているらしい。
開催期間2週間、『デザートタンク』と呼ばれる特殊な戦車を使用し、砂漠に生息する現地生物『砂カジキ』や『大ミミズ』からの襲撃を避けながらゴールの星都を目指す『サバイバルタンクラリー』や。
ホバーバイクによる決められたコースを周回する『デザートカップレース』
改造デザートタンクによる最速を決める『タンキングドラッグレース』
この惑星特有の強い風と、砂漠を疾走できる『サンドアップヨット』を利用した『ウィンドマスターレース』
未成年者限定の小型の車輪式カートを使用した『サンドカートレース』など、様々なレースが色々なところで開催されているらしい。
さらには公式の賭け(ブックメーク)も行われていて、かなりの盛り上がりを見せているらしい。
「うわー!凄いですねマスター!」
惑星上に降り立ち、その町並みを見たアディルは、嬉しそうにはしゃいでいた。
その様子はまるで小さな子供のようだった。
が、見た目が高身長の美人なだけにちょっと痛々しく見えてしまうのは仕方ない。
惑星メレンデレクに到着したのは午前10時、貨物の受け渡してから報酬を受け取り、惑星上行きのシャトルを降りた時点で11時半になっていた。
なので昼食を取ることにし、適当な店を選んで入ったところ、香辛料をふんだんに使った料理を出す店だった。
美味しかったのだが、食べた後も口回りがヒリヒリしていて、その辛さを楽しみつつ街中を歩いていると、不意に俺達の前に男が立ちはだかった。
身長は俺よりは高くてアディルよりは低く、年齢は俺と同じくらい、それなりに整った顔はしている。
俺もアディルも、何なんだと思いながら男をよけようとした。
するといきなり男が、
「ふむ。お前達はなかなかに美しい容姿をしているな。実に余の好みだ気に入った!余の側に侍らせてやろう。光栄に思うとよいぞ!」
と、ドヤ顔で言ってきた。
頭になにかわいてるのだろうかと、俺とアディルは呆気にとられた。
すると次の瞬間、
「そろそろ歩くのも飽きたからな。車を用意しろ。余は寛大だからな。車が来るまでは、そうだな…お前で楽しんでやる」
と、宣いながら、俺の胸を鷲掴みにしてきた。
以前ケビンの接待相手のアホボンに触られた時もそうだったが、シュメール人・しかも基本性別が男の俺にとって、女の姿で胸を触られても気持ち悪いだけだ。
が、勝手に触られてムカつくのは間違いないし、普通に痴漢行為なので、
「なにを平然とセクハラしてやがる!」
このアホの股間に思い切り膝蹴りを入れてやった。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
すると男は悲鳴をあげながら股間を押さえて踞ったので、
「すみません。大通りで痴漢に遭遇したので捕まえてください」
直ぐ様警察に通報した。
その男をアディルがすぐに確保しようと近寄ると、股間を片手で押さえながらも立ち上がり、隠し持っていたらしい光線剣を突き付けてきた。
「おのれ…!余に対してこのような無礼を…そこに直れ!手打ちにしてや…」
そして周囲から悲鳴が上がった次の瞬間、何故か男はぐにゃりと膝を折りながら倒れてしまった。
いったいなんなのだろうと呆気にとられていると、
「やれやれまにあったわい…」
「皆様申し訳ありません…」
じいさんと若い女が現れ、倒れた男に近づいた。
よく見ればじいさんの手には麻酔銃が握られていて、若い女の方は、検査機器を手に男の容態をチェックしていた。
「あんたらこいつの知り合いか?」
苛立ちつつも困惑している俺の質問に、じいさんが麻酔銃をしまいながら答えてくれた。
「知り合いというよりは患者と主治医じゃな。この男は過去に悲惨な出来事に遭遇したせいで精神が崩壊してしまってな。それ以来自分を晋蓬皇国の皇太子だと思いこんでしまっとるんじゃ。そのためか随分と傲慢で高圧的で暴力的になってしもうてな。普段は施設の外には出さないんじゃが、警備システムのメンテナンス中に脱け出されてな。大事が起こる前に保護が間に合ってよかったわい」
初めは何を言っているんだと思ったが、そのじいさんと若い女の胸に付いたプレートを見て納得がいった。
この惑星メレンデレクには、宇宙港の反対側の衛星軌道に、精神疾患患者を受け入れる施設『モイズホスピタルコロニー』があり、じいさんと若い女はそこの職員だったからだ。
この岩と土と砂の惑星にそのような医療施設コロニーを設置したのは、利便性の良い惑星や風光明媚な惑星からは施設の質上忌避されたため、当時は人口も少なかったこの惑星の衛星軌道上に設置するしかなかったらしい。
なるほどそれならあの男の言動や行動が理解できた。
事情を知ると可哀想だとは思うが、痴漢をしたことには間違いない。
が、警察は逮捕できるのかはわからない。
所謂責任能力無しの判定が下りそうだからだ。
惑星のネタの為に、リアルな宇宙関係の動画なんかみていますが、なかなか難しいですね。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




