File152 惑星フェザーフへの貨物輸送⑤ 噂は案外当てにならないので怪しんだ方がいい
「はいはい、もう悪でも何でもいいからあっちへいってくれ。仕事の邪魔だ」
ついに我慢が出来なくなったトニーは、彼女をしっしっと追い払うゼスチャーをすると、受付嬢の方に身体を向けた。
俺もそれに習って彼女を無視し、仕事の話を始める事にした。
すると当然、
「貴方達は正義を執行する気はないんですか!?」
「苦しんでいる人達を助ける義務を執行しないなんてどういうつもりですか?!」
などと、出来の悪い勧善懲悪のアニメでも言わないようなセリフをバンバン投げつけてきた。
それを完全に無視して、さっきのシェピーナ種の受付嬢に依頼の手続きをお願いする。
すると、依頼の一覧表を提示しながら、ため息混じりに彼女について説明してくれた。
「あの娘、なんかのボランティア団体のメンバーらしくて、本当に迷惑してるんですよ。本当ならロビーに姿を見せただけで警察を呼びたいんですけど、署名活動自体は違法じゃないのと、ちょっとした理由で警察に通報しづらいので、警備の人に追い出してもらうしかないんですよ。あ、警備員はすでに呼びましたから」
どうやら組合のほうでもかなり迷惑しているらしい。
「ちょっといいかなお嬢さん?」
その時誰かが彼女=リコール女に話しかけた。
声からすると男性のようで、警備員かなと思って振り替えってみると、ダークブラウンのスーツを着たビジネスマン風の30代くらいの男が、怒りの表情のリコール女の後ろに立っていた。
「後にしてください!私はこの人でなしな人達に正しいことはどういうことか教えてやるんですから!」
リコール女は俺達が振り返ったのをこれ幸いと、罵倒を再開するのに夢中で振り返って確認することすらしない。
「しかし彼らは君のリコールのための署名活動に迷惑してるじゃないか」
「これは正義の行いなんですから邪魔しないで!」
男の言葉にカチンときたのか、リコール女はそう怒鳴りながら振り返り、スーツ姿の男を見た瞬間に驚愕の表情を浮かべた。
「リロス・コルクロック!?なんでここにいるのよ!?私の正義の行動を妨害した所で、貴方の父親のリコールは揺るぎませんよ!」
そしてそのリロス・コルクロックに対しても、自分の行動の正統性を主張した。
たしかにリコールをしようとしている人物の関係者ではあるが、父親と息子は別人なんだから理不尽な話ではある。
とはいえサムから聞いた話が真実だとすると無関係ではないが。
するとリロス・コルクロックは大きくため息をつき、
「父のリコールは父の自業自得ですからね、文句はありませんし、署名活動の邪魔をする気はありませんよ。しかし貴女が今やっていることは、組合員である貨物輸送業者達や組合職員達に対しての業務妨害罪という立派な犯罪行為だと自覚していないようですね」
リコール女の行動を非難した。
「正当な署名活動がどうして犯罪になるのよ?!」
「普通なら、街頭などの店舗の迷惑にならない場所でするべきです。
ですが貴女は貨物輸送業者組合内部に侵入し、組合員の彼等が組合職員と仕事の話をしようとしている直前に話しかけているでしょう?
それはつまり仕事の邪魔をしていることになり、立派な業務妨害罪になります。
さらには、署名の無理やりな押し付けは強要罪、署名せざるをえないように大声であることないことわめいて誘導しようとするのは脅迫罪が適用されますね」
「そんなことがあるわけないでしょう!」
そこまで説明されても、自分の正義の行動が犯罪になるのか理解できないらしく、声を荒げ、忌々しそうにリロス・コルクロックを睨み付ける。
そこに、リロス・コルクロックがさらに畳み掛けた。
「それに、貴女が所属しているボランティア団体は、私が貨物輸送業者組合に提案した改正案の情報をねじ曲げて拡散させていますよね?父のリコールとは全く関係ないのに」
「私達は事実しか発信してないわ!」
「ではなぜ、物価上昇と景気低迷の影響によるサービスの品質低下を防ぐために、依頼客からの手数料を今の5%から『6%』に引き上げるという話が『6倍』の30%に引き上げるという話になり、『貨物輸送業者に支払われる報酬の3%をギルド全体の福利厚生のための寄付金として任意で納付してもらう』という話が、『貨物輸送業者から報酬の30%の手数料を強制徴収して、ギルド職員だけの福利厚生にあてる』という話になるのでしょうね?
さらには、単なる経営コンサルタントである私が、ここフェザーフが銀河貨物輸送業者組合発祥の地だから、ここをキルドの総本部にするべしという『原点回顧派』とかを自称して、私がその総組合長に収まるつもりだとか、色々と尾ひれをつけて訳のわからない魚にしてくれたようですし」
「私はそうだって聞いたわ!それが真実でしょ!」
「それは貴女方の雇い主に都合のよい真実ですね。先ほども言いましたが、父のリコールは自業自得。ですからそのリコール運動の邪魔をする気はありませんし、むしろ父には前々から引退を勧めていましたし、父もそのつもりだったのですよ。貴女方の雇い主がなにもしなくても、惑星フェザーフの評議員の座は空いたのです」
「ぐっ…」
リロス・コルクロックの冷静な応答に、少し前まで饒舌に自分が正義だとわめき散らかしていたリコール女は言葉に詰まってしまった。
今の話を聞く限り、さっきフードコートで話しかけてきた同業者みたいな男も、リコール女の所属するボランティア団体とやらのメンバーだったのだろう。
そこにようやく警備員が到着してリコール女を拘束すると、リコール女はすぐに怒りの表情に変わり、大声で喚き始めたが、そのまま警備員に引き摺られていった。
「大変ご迷惑をお掛けしました。ああいった輩は即座に警察に通報するべきなんですが、いかんせん彼女の所属するボランティア団体の雇い主が厄介でして。あ、失礼しました。私はリロス・コルクロック。経営コンサルタント経営コンサルティング『ポールトマン・オフィス』の者です。現在は御依頼により、銀河貨物輸送業者組合惑星フェザーフ支部に出向中なのですよ」
リコール女が居なくなると、コルクロック氏は名刺を差し出しながら俺達に話しかけてきた。
「俺はトランスポーターのマードックだ。聞いてた話とはだいぶ違うんだな」
「同じくライアットです。お父上の関係でかなりとばっちりを食らってるみたいですね」
俺とトニーは名刺を受け取り、挨拶をしながらも、サムから聞いた話とかなりの食い違いがある事に驚いていた。
「やっぱり違ってたっすか…、怪しいとは思ってたっすが…おいらもまだまだっすね…」
そのサムは自分がニセの情報を掴まされた事に悔しがっていた。
「彼女の雇い主はおそらく父の対抗勢力です。とことん此方を悪者に仕立て上げ、票の獲得をしたいんでしょうね。まあ、いずれ責任はとってもらいますよ。では私はこれで。そちらの仕事の邪魔になってはいけませんしね」
コルクロック氏はそれだけいうと、丁寧に御辞儀をしてからその場を離れていった。
所用があり投稿が遅くなりました。
申し訳ございません。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




