File151 惑星フェザーフへの貨物輸送④ 自分が絶対正しいと勘違いしている奴はタチが悪い
見たことのない奴だった。
服装自体は何処にでも居そうな貨物輸送業者の格好だ。
しかしそいつから感じるのは明らかな小者臭だった。
どんな匂いだと尋ねられても答えようがないが、とにかくあまりまっとうな貨物輸送業者で無い感じがした。
そいつはへらへらと笑いながら、
「お前ら惑星フェザーフの貨物輸送業者じゃあねえよな?」
と、尋ねてきた。
貨物輸送業者は移動ばかりしているのだから、その星の組合を本拠地にしていない奴がいるのは当たり前。なのに何を聞いてるんだと思った。
「ああ。そうだが?」
とはいえ、なにもされていないし、何か聞きたいことがあるだけかも知れないので、取り敢えず返事をする。
そこはトニーもサムも同意見のようで、特に口を挟む事はなかったが、アディルだけはこの男を警戒してじっと視線をむけていた。
男はそんなアディルの視線に気づく事なく話を続ける。
「だったらこの惑星フェザーフが銀河貨物輸送業者組合発祥の地だってのは知っているか?」
それくらいは知っている。
たしか惑星上には記念碑があり、その横には組合の連絡管理センターがあるはずだ。
「それくらいは貨物輸送業者なら誰でもしってることだろ?」
トニーの奴が、なんでそんなことを聞くんだ?と、言いたげに返事をする。
すると男は満足そうに笑みを浮かべ、
「なら話は早い。お前ら惑星フェザーフのギルドに移籍しな!近い将来この惑星フェザーフが共和国の物流を支配するんだ!移籍しておいて損はないぜ!」
男は自信満々で言いきるが、現在の銀河貨物輸送業者組合の本部は首都惑星であるヴォルダルにあり、物流の中心もヴォルダルだ。
それに、銀河貨物輸送業者組合発祥の地といっても、創始者のカール・ウィキャックがこの星の出身であり、この星で初めて賛同者を募っただけで、活動の開始はヴォルダルだ。
記念碑も、カール・ウィキャックが最初に賛同者を募った酒場があった場所にすぎない。
そもそも支配ってなんなんだ?意味が解らなすぎる。
「俺は元々物流の中心にはいないから興味はない」
「俺もだな。今の拠点に不満はねえ」
だから、俺もトニーも答えは『断る』の一択だ。
すると男は「ちっ!」と舌打ちをし、
「せっかく親切で声をかけてやったのによ!後で入れてくれって言っても遅いからな!」
と、捨てゼリフを吐き、かなり憤慨した様子でその場を去っていった。
小者なら小者らしく、自分より上の人物の名前を出して脅しかけてきたりするものだが、それをしなかった所をみると、意外にマトモだったのかもしれない。
が、なんであんな勧誘をしてきたのかは謎だ。
しかしその答えはサムが答えてくれた。
「あの人多分、『原点回顧派』ってやつだと思うっす」
「なんだそりゃ?」
「なんでも、ここ惑星フェザーフがギルド発祥の地だから、ここをギルドの総本部にするべきだって主張してる集団らしいっすね。
現評議員テルフィズ・コルクロックの息子のリロス・コルクロックって奴が、部外者にも関わらず、今現在の組合の改善点なんかも含めてを色々お題目あげて立ち上げたんだそうっす。
その内容は、この星が組合の総本部になった暁には、客からの手数料を今の5%の6倍の30%まで引き上げた上に、貨物輸送業者からも報酬の30%の手数料を取って、組合職員の福利厚生にあてるって内容っす。
おまけに自分が総組合長に収まるつもりらしいっすね」
そのサムの説明を聞いて、まず最初に頭に浮かんだのは『は?なにいってんの?』だ。
おそらくトニーも一緒らしく、暫く理解が追い付かずに沈黙してしまった。
「あのう。そんなことをしたらお客さんはもちろん、私達業者も組合から脱退してしまうのではないでしょうか?」
そんな俺達に代わり、アディルがその主張に対する感想を口にしてくれた。
「そもそもなんでそんな主張を支持する奴が出てくるんだ?」
何とか復帰した俺は、一番の疑問をサムに投げ掛けた。
「いままでは、代表で発案者のリロス・コルクロックが父親が評議員なのもあって、利権欲しさに地元の不良貨物輸送業者や不良職員。さらには他の支部に所属している馬鹿が引き込まれていった結果、派閥が増えていったみたいっす。
でも今回の父親のリコール騒動で離れて行く奴も増えてるみたいっすね。
でもこの情報なんか怪しいんすよね~。ニセモノ掴まされた感がハンパないっす。だから鵜呑みにはしないで欲しいっすね」
俺とトニーはサムの説明を聞くと再度暫く黙り込み、
「情報の真偽はともかくとして、関わらないのが一番だ」
「間違いねぇな」
「じゃあ食事が済んだら受付にいって仕事を受けて朝早く出れるようにするか」
「わかりました。マスター」
「俺達もそうするぞ。サム。チョイスはまかせる」
「了解っす」
無視してさっさとこの星を離れるという結論に至った。
唯一理解出来たのは、さっきの奴はその話が実現したら自分に入るであろう利益を夢見て、賛同者を増やすために勧誘をしていたということだけだ。
そうして食事を終えた後、直ぐに貨物配達受付にやってくると、
「ちょっとすみません。お時間よろしいですか?」
受付嬢に話しかける前に、クリップボードを持った若い女性に声をかけられた。
急いで居るのでと断ろうとする前に、彼女は用件を突き付けてきた。
「現在、当惑星フェザーフの現評議員テルフィズ・コルクロックのリコール書名をお願いしています!」
彼女は満面の笑みを浮かべながら、クリップボードを差し出してくる。
しかも板状端末ではなく、わざわざプラ・ペーパーにペンで署名させるあたり、執念というか怨念じみた物を感じる。
これが、地元のオルランゲアでのことだったり、共和国全体の規模の事だったら署名くらいしただろうが、他の惑星でのこういうのは後々面倒なことになる事もあるので、
「悪いが、俺達はこの惑星の人間じゃないし、急いでるんだ」
と、やんわりと断った。
すると彼女は物凄く不機嫌な顔になり、
「ではあんな悪党をのさばらせておいて良いとおもうのですか?!この惑星の未来がかかってるんですよ?!」
と、大声でこちらを叱責してきたせいで、周りの人達の視線が集まってしまった。
女性と子供が居るとはいえ男2人に対して若い女性1人というのは、場合によってはこっちが悪人に見えてしまう。
「いや。この惑星の住人じゃねえ俺達には権利はねえだろってハナシだ」
それを察したトニーが、彼女に理由を説明する。
さっきも言ったが、共和国全体の規模の事ならともかく、その惑星だけの事に、他の惑星の人間が嘆願書に署名するというのは、法律で禁じられていたりはしないが無効と取られてしまう事がある。
さらには、署名の際の名前を何かしらの業者に売り渡される可能性がある。
そういうことを含めて断っているのだが、
「では貴方は、我々にあの男の被害者のままでいろと?!なんて残酷な事を平気でいえるんですか!?」
「そんなことは一言も言ってないだろ?」
彼女は聞く耳を持たず、こちらを非難する言葉しか言わなかった。
多分彼女は、こうやって署名だけでなくいろんな事に対して自分の要求を通してきたんだろう。
それを理解した、アディルを除いた俺達全員が思ったのは、
『『『めんどくせー!』』』
の一言だった。
何とか完成…
ちなみにアディルのCVイメージは土師亜文さんです。
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