File149 惑星フェザーフへの貨物輸送② 航行中の新しいサイクルは新鮮で楽しい
惑星フェザーフ。
居住可能惑星としては、オルランゲア同様に特徴のない平凡な惑星だ。
しかし今現在、惑星フェザーフでは現評議員のリコール運動が惑星全体で展開されている。
理由は、現評議員テルフィズ・コルクロック主導による、無意味な公共事業や不要な地方税率の増加の繰り返し、一部の企業団体への優遇処置などが原因だ。
評議員本人の人となりも評判が悪く、市民の約90%がリコールに賛成しているらしい。
その抗議行動は主に惑星上で行われていて、宇宙港では『まだ』行われてはいないらしい。
現評議員には対抗勢力もいるため、抗議行動を弾圧ができずやきもきしていると噂されているそうだ。
そんな物騒な情報を流すニュース番組を見ながら、俺とアディルは惑星スティエージを出発してから4日目の朝を迎えていた。
到着は今日の夕方の16時30分ぐらいになるので、住んでいる人達には悪いが、貨物の受け取りと積み込みを迅速に済ませて、翌朝一番には立ち去りたいものだ。
テーブルに朝食を並べながらそんなことを考えていると、アディルが真面目な表情で話しかけてきた。
「マスター。本日は固いプディングがいいです」
「そうか。じゃあ昼食が済んだらキッチンな」
「はいっ!じゃあいただきます!」
そういってアディルは、マーマレードたっぷりのトーストにかじりついた。
航海の間、アディルは俺にいろいろな料理を教えてくれと頼んできた。
今日のリクエストは固めのプリンだ。
なぜ昼食後からかというと、午前中は色々とすることがあるからだ。
起床時間は大抵は銀河標準時午前6時30分。
まずは着替えて、顔を洗ってから最初にやるのは操縦室の計器類のチェックだ。
自動航行装置の状態・航路にズレが生じていないか・燃料の残量・船体へのダメージ等をチェックし、異常があれば通常空間に出て、修理なり救難信号をだすなりする必要があるが、なにごともなくそれが終われば朝食だ。
今日のメニューはコーヒー・トースト・ベーコンエッグ・レタスとトマトのサラダ・自家製マーマレード・苺の果肉入りゼリーだ。
俺だけならゼリーは要らないんだが、アディルは甘いものが好きだから、夜のうちに何かしら仕込むようになってしまった。
朝食が終れば、洗濯機に洗濯物を放り込んでから洗い物をし、それが終われば船内の掃除。
だったのだが、アディルがいる今では、洗い物と掃除が同時に進行し、洗い物が終了したら掃除に参加するというパターンになり、早く終了できるようになった。
それが終われば日課のトレーニングだ。
ラウンジに設置してあるランニングマシンや、パンチングマシン。自室に置いてあるゴムスプリング式のパンプアップマシンなどを使うのは今までと変わらないが、アディルと軽い組手をするのが加わった。
それが終わってシャワーを浴びた後は、自由な時間にはなるが、料理を教えながら作れるというほどの時間はないので、本を読んだり、たまにはゲームをしたりと、のんびりした時間が流れる。
そうして昼食の時間になると、簡単なメニューで昼食をすませ(卵サラダとハムチーズのホットサンドにアイスコーヒー)、アディルのリクエストした固いプリンこと『クラシックプディング』を教えていく事にする。
用意する材料は牛乳・生クリーム・全卵・卵黄のみ・砂糖・バニラエッセンスだ。
卵黄だけにしたやつの白身は、後でメレンゲクッキーにでもする予定だ。
基本的な作り方はこんな感じだ。
①:鍋に牛乳と生クリームを入れ、沸騰直前まで温める。
②:溶きほぐした全卵に卵黄と砂糖を加えて泡立てないように混ぜる。
③:②に①を2回に分けて加えて混ぜる。
④:③にバニラエッセンスを加え、2回濾して型に流し入れる。
⑤:お湯(分量外)を張った天板にプリンカップを並べ、天面をアルミホイルで覆う。
⑥:160℃に予熱したオーブンで約30分湯煎焼きをする。
⑦:焼きあがったら粗熱をとり、冷蔵庫で1時間以上冷やす。
サイズによっては時間がかかるが、今回は通常サイズ程度なので問題はないだろう。
こうして出来上がったデザートは明日のおやつになったりする。
デザートじゃなくて食事だった場合はそのまま夕食のメニューになる。
そうしてるうちに、腕輪型端末から、目的地に近づいた際に知らせてくれるアラームが鳴った。
プリン作りは終わって冷蔵庫に入れており、メレンゲクッキーも焼き上がり、片付けも終わっていたのですぐに操縦室に向かった。
操縦席に座ると、まずは自動航行を停止する。
そうして操縦桿を握ると、アディルも副操縦席に座り補佐を始める。
「燃料残量・全計測機器・レーダーに機影なし。異状なし。超空間からの退出準備完了です」
「了解。退出実行秒読み開始。5・4・3・2・1!」
「退出実行!通常空間にでます」
アディルの指示に従い、超空間からの退出を実行する。
その瞬間、歪んだような空間から通常の宇宙空間に代わり、視界には惑星フェザーフが現れた。
「超空間からの退出完了。通常航行に移行する」
はっきりいって、超空間からの退出時が一番緊張する。
ものすごく低い確率ではあるが、出た瞬間に他の船や小惑星に激突したりすることがあるからだ。
あと都市伝説レベルの噂ではあるが、超空間から退出したら恒星の中央に飛び込んだとか、異世界に転移したとかなんてのがある。
そして惑星が肉眼で確認できたなら、宇宙港に連絡をする為に通信機のスイッチをいれる。
「管制塔。こちら登録ナンバーSEC201103。貨客船『ホワイトカーゴⅢ』。入港許可を求む」
『こちらはフェザーフ宇宙港管制塔。『ホワイトカーゴⅢ』入港を許可します。停泊地No.564に向かって下さい』
応対に出てきた管制官は、20代位の女の子だった。
「了解管制塔。停泊地No.564に向かう。ところで、宇宙港内はまだ安全かい?」
『今のところはデモ隊は上がってきてませんよ。でも時間の問題ですね。あのカス評議員がいつここから逃げ出そうとするかわかりませんから』
彼女は怖い笑顔を浮かべながら、俺の質問に答えてくれた。
どうやらここの評議員は、ニュースで言っていた以上に嫌われているらしい。
ともかく、指示された停泊地に向かうことにしよう。
宇宙港の停泊地は大抵が個別停泊になっていて、一つの停泊地に1隻というシステムだ。
停泊地には、数字の確認をしてから後退で内部に進入し、停船位置まで移動するとすぐに固定用アームが船体を捕まえてくれる。
そしてジャッキでも固定されると、隔壁が閉じられ、サイズに関係なく約20秒で空気が充填される。
こうして無事、惑星フェザーフに到着した。
1人の時とは色々違ってくるものです
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